議論しないのに視察に行く議員たち

9/22付の産経新聞に「衆院憲法審、欧州視察で野党と気脈」という記事が載っていた。視察には1000万円超の衆院予算が投じられ、憲法論議が行われない中での視察に冷ややかな見方が広がる、と書かれているのを読んでイラっときた。

立憲の山花郁夫・野党筆頭理事も行くという。憲法改正のための国民投票の発議どころか、自民党案の説明を聞くことすら嫌だ、と言っている立憲の理事が欧州旅行には行くのか。どうなってんだ!

4日後、僕の血圧がさらに上がった。9/26付の朝日には「立憲・山花氏『表現の不自由展』で憲法審開催要求」とある。山花氏は視察先のリトアニアで記者に答えたらしい。自民党の改憲案の説明を聞くのは嫌だが、表現の不自由展の中止が憲法違反かどうかについては話し合おうじゃないか、というのはいささか勝手ではないか。

展覧会の中止が表現の自由を侵害しており、憲法違反だと思う人がいるなら裁判に訴えればいいではないか。職場放棄している(by下村博文)議員が何言ってんだ!

僕がイラつく理由は、このペースで行くと僕が生きてるうちに改憲の国民投票が行われるかどうか甚だ心もとないからだ。

改憲論議はあと110年やらないのか?

立憲の辻元清美議員
立憲の辻元清美議員
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去年、自民が憲法審を野党の同意なしに開催した時に、立憲の辻元清美国対委員長(当時)は「これで憲法論議は100年遅れる」と言った。辻元さんは、先月、自民の萩生田光一幹事長代行(当時)が憲法論議に絡んで衆院議長交代を示唆したと報じられた時にも「憲法論議は10年遅れた」と発言。彼女は合計むこう110年間、憲法を議論しないらしい。

まずは死ぬ年齢を決めることから

先月僕は60歳になり、会社もいったん定年退職したので、今後の人生の計画を立てることにした。ファイナンシャルプランナーに聞くと、まず自分の死ぬ年齢を決めろ、と言う。あと何年生きるか仮定しないと、必要な医療費や介護費、もらう年金の額などがわからないので計画の立てようがないらしい。

ということでとりあえず死ぬのは90歳に決めてみた。理由は父が91歳で亡くなり、母が87歳で今も元気なので、まあ僕も90歳位までは生きるんじゃないかなということだ。自分の死ぬ年齢を決めるというのは大変面白い経験である。人生の先が見えてくるのだ。あとどれくらい働き、老後はどういう生活をするか、最期をどう迎えるか、墓は買っといた方がいいかな?さらに妻や娘への相続など、どんどん決められる。人生は残り1/3、まだ30年も残っている。

生きているうちに国民投票を

 
 

でもこれから110年憲法論議ができないのなら僕は改憲の国民投票に参加できないじゃないか。それは困る。

憲法審のメンバーの国会議員が税金1000万円使って欧州視察に行っても実は構わない。不自由展の議論を憲法審でしてもいい。でも、両院で多数を持っている政党が改憲したいと言ってるなら、それに反対する政党の人たちはせめてその案だけでも聞いてくれないか。議論だけでもしてくれないか。

日本の憲法は世界一曖昧に書かれている。だから同性婚も、参院の合区の解消も、教育の無償化も、わざわざ改憲しなくても解釈を変えればできると思うし、まあ改憲したければすればいい。でも9条だけは現実と憲法が明らかに違っており、変えてもらわないと、なんというか気持ち悪いのだ。

もし国会議員の2/3が賛成なら国民投票すればいいし、国民投票で過半数が賛成なら憲法を変えればいい。過半数がなければ変えない。それだけのことだ。国会議員は国民の選択する権利を奪ってはいけない。

これから30年の間に改憲の国民投票は行われるだろうか。もしかしたら安倍さんが首相をやっているあと2年間が最後のチャンスかもしれない。
 

【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】

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平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。