日本国憲法は3日で施行から79年を迎えた。筆者はこの日本国憲法を時々読むことにしているのだが、国の「基本方針」がシンプルに書かれているので実は短い。

40分もあれば読める。もし読んだことがない方がいらしたら是非一度読んで頂きたい。

「法律で定める」の意味

「基本方針」なので細かいことは書かれていない。たとえば第10条に「国民たる要件」という項目があるのだが、「日本国民たる要件は法律で定める」としか書かれていない。

この「法律で定める」という表現は他にもしょっちゅう出てくる。これは時代と共に社会が変化しても憲法ではなく法律を変えれば済むようにしているかららしい。

5月3日は憲法記念日
5月3日は憲法記念日
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たださすがに79年も経つと憲法そのものを変えないとどうしても時代に合わないものが出てくる。それが自民党がまとめた「教育の充実」「緊急事態条項の創設」「自衛隊の明記」「参議院の合区の解消」という「4つのたたき台」ということだと思う。

個人的には「同性婚」についても、もし合法にしたら今のままでは憲法24条の「両性の合意のみ」という部分に引っかかって憲法違反になるので、たとえば「当事者の合意のみ」といった表現に変える必要があると思う。これを同性婚に賛成する政党が言わないのは国民投票で否決されるのが怖いからなのか。

高市総理が「合区解消」憲法改正について発言

さて高市早苗総理は3日付の産経新聞の単独インタビューで、憲法改正実現に向けて野党や国民の理解がえられやすいテーマとして「緊急事態条項の創設」と「参議院の合区の解消」の2つを挙げ、特に「合区解消」については「現実問題としてとても急ぐ。再来年が参院選の年だ」と期限を切って言及した。

産経新聞のインタビューで憲法改正に向けた発言
産経新聞のインタビューで憲法改正に向けた発言

高市氏は「4つのテーマの重要性に優劣はない」としながらも「合区解消」と「緊急事態」の2つについては「急がれる」と述べ、「すべてのテーマ(の議論)を同じ速さで進めなければならないという安易な考えは持っていない」とも述べた。

高市氏のインタビューをそのまま読めば、再来年の参院選に間に合わせるためには来年の通常国会で「合区解消」と「緊急事態」にしぼって、「自衛隊の明記」と「教育の充実」は外して発議をし、国民投票まで行うということではないか。

これは果たして可能なのだろうか。

参院は公明と国民が賛成なら3分の2に

発議に必要な国会議員の3分の2について衆院では自民党単独で確保した。だが参院では46議席足りず、公明党と国民民主党が賛成してぴったり3分の2となる。

玉木氏「9条改正には安易に手をつけない方がいい」
玉木氏「9条改正には安易に手をつけない方がいい」

国民民主の玉木雄一郎代表は「来春までに発議のメドを立てるならば、9条改正(自衛隊の明記)には安易に手をつけない方がいい」とした上で、「合区解消」と「緊急事態」にしぼって議論を進めるべきだと主張している。

高市氏のインタビューはこの玉木発言を意識したものではないか。

FNN世論調査 2026年4月
FNN世論調査 2026年4月

先月行ったFNNの世論調査で自民党の改憲4項目に賛成するか聞いたところ以下の回答だった。

「教育の充実」83.3%「緊急事態条項の創設」66.2%「自衛隊の明記」59.3%「参議院の合区の解消」54.1%

大都市で関心が低い「合区解消」

この中では「合区解消」への賛成が一番少なく、特に東京や大阪など大都市での関心が低いという。

ただ自民党の元議員に聞くと、地方に行くと合区は切実な問題なので関心が高いということで「東京や大阪の人たちは自分たちに関係ないから関心が低くて人口も多いから調査の数字は合区が低く出る」と指摘された。

現在は島根と鳥取、高知と徳島の2ヶ所で合区になっているのだが、最新の人口調査で試算すると和歌山と山梨が合区になる可能性があるという話を専門家から聞いたことがある。

こういう「飛び地」での合区は「民意の実現」がしにくいので、高市氏の言う通り、再来年の参院選前に決着をつけた方がいい。

「緊急事態の創設」反対は“参院のエゴ”

「緊急事態の創設」については賛成が66.2%と「教育の充実」に次いで高い。有権者にとっては積極的に反対する理由が見つからないのではないか。

参院からは反対の声も
参院からは反対の声も

ただ「緊急時に衆院議員の任期延長を認める」ことについて、参院には衆院解散時に機能を代替する「参院の緊急集会」の規定が憲法にあるため「参院の軽視になる」という声が野党だけでなく自民党内にもあるというがこれは参院の「エゴ」ではないか。

大地震などの国家的な緊急時に立法機関が参院だけの「片肺」で機能するのか。参院議員はエゴや自分たちのメンツではなく国家国民の利益を考えるべきだ。

高市政権への期待感

憲法記念日に向けてメディア各社が行った世論調査は聞き方によって見出しもそれぞれ違っていたが、共通していたのは憲法改正についての高市政権への期待感が以前の政権に比べて高かったことだ。

読売新聞が3〜4月に郵送で行った世論調査によると「国会で憲法改正の議論が進むこと」について「期待する」と答えたのは54%に上り、石破茂政権の26%、岸田文夫政権の29%を大きく上回った。

安倍政権は「自衛隊明記」否決の不安で改憲思いとどまったか
安倍政権は「自衛隊明記」否決の不安で改憲思いとどまったか

安倍晋三政権の時に、ある側近が「憲法改正の国民投票で自衛隊明記がもし否決されたら日本では未来永劫憲法改正はできなくなる」と心配していたのだが、この「不安」が安倍氏に改憲を思いとどまらせた理由ではないか。

そうであれば、もし高市氏が9条を封印した上で「合区解消」と「緊急事態」で先行改憲するなら安倍氏も納得するのでないかと思う。

【執筆:フジテレビ客員解説委員 平井文夫】

平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ客員解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て報道局上席解説委員に。2024年8月に退社。