急増する「非定型うつ」は6~7割が女性患者

世界保健機関(WHO)が、世界のうつ病患者数が2015年に、全人口の約4%に当たる推計3億2200万人にのぼったと発表しました。日本では、うつ病の有病率6.5%、15人に1人が生涯に1度はうつ病にかかる可能性があるとされています。
患者数は2008年に初めて100万人を突破し、なお増え続けています。

 
 
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そして「典型的なうつ病とは異なる」という意味から「非定型うつ病」と呼ばれる病型が急増しており、すでに全うつ病の30~40%を占めているという報告があります。
一般的にうつ病は女性に多いですが、「非定型うつ病」はさらに多く、女性が6~7割に上ります。中でも、20代から30代の若い女性に多く見られるうつ病です。

「甘え」「わがまま」と誤解受けやすい

「非定型うつ」の最大の特徴は、出来事に反応して気分が変わることです。
定型うつ病は、“2週間以上、一日中続く抑うつ気分”という状態が診断条件の1つになります。どんなに楽しいことがあっても気分は晴れません。
一方「非定型うつ病」は気分の変動が激しく、良い出来事には一転して元気が出て、快活になります。しかし長続きはせず、また抑うつ状態に戻る。こうした気分の浮き沈みが繰り返されます。これを「気分反応性」と表現します。

 
 

気分反応性は「甘え」や「わがまま」等と、よく誤解される原因となります。しかしこれは「自分自身でも激しい気分の波を制御できない」という「非定型うつ病」の症状なのです。

他者の言葉を極端に悪く受け止める

他人からの侮辱・軽視・批判に対して極度に敏感になる「拒絶過敏性」も「非定型うつ」の症状の1つです。相手は全くそんなつもりはないのに「自分が批判された」「見下された」「軽蔑された」等と否定的に受け止めてしまう傾向が強いのです。

 
 

例えば、職場の上司にささいなことで注意されただけでも「自分の全能力を否定された」と過剰反応して、翌日から会社を休んでしまったりします。出社しても上司の顔を見ただけで、抑うつ状態になります。「今日は頑張っているね」という良い意味での声かけに対しても「いつもは頑張っていないと思われているのか」ととらえてしまったりするのです。拒絶や批判を恐れるため、親密な対人関係を持てなくなったり、職場や学校を休みがちになったりと、社会生活に支障がでてきます。

「眠り過ぎ」に苦しむ

「非定型うつ病」の特徴に、過眠(10時間以上眠る日が週に3日以上)があります。とはいえ「よく眠れる」というよりも、「眠り過ぎ」障害に苦しめられます。
「非定型うつ病」の場合、他者から非難されたと思い込むと気分が落ち込み、併せて眠気が強まります。また「神経性疲労」で、体が鉛のように重く感じてしまうので、起きていられず寝るのです。

 
 

よく眠れば気分も落ち着くかというと、そうではありません。
熟睡は出来ないので、昼間も眠くて仕方なく、目覚めてもやる気が起きません。そして昼間も寝てしまう傾向があります。睡眠のリズムが崩れ、学校や職場を休みがちになり、日常生活にも支障をきたします。

甘いものを食べ過ぎて、体重が増加

「非定型うつ病」になると、ほとんどの人が甘いものへの欲求が強くなります。糖分には、抑うつ感を和らげる作用があるといわれており、甘いものを次から次へと食べます。
しかし、甘いものの効果は一時的なもので、食べ過ぎによって体重の増加を招きます。女性患者が多いので、太ったことで自己嫌悪に陥り、気分がまた落ち込む悪循環に陥ることもあります。

優しい言葉で、やんわりと励ましを

「非定型うつ病」は抗うつ薬が効きにくいという特徴がありますので、治療では医師や臨床心理士によるカウンセリング等の精神療法をうまく組み合わせます。

定型うつ病では「頑張れ」等の励ましはタブーとされています。
一方「非定型うつ病」の場合は、適度な負荷があった方が回復の一助となることが経験的に知られています。時には優しい言葉で、やんわりと励ましを。ただし、厳しい言葉は禁物。不安や焦燥感が強いときは、しっかり見守ることも大切です。


(執筆:Watanabe Chiharu)

プライムオンライン編集部
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