上皇さまは12月23日、92歳の誕生日を迎えられた。

上皇さまは2025年5月には心筋虚血が疑われる所見がみられたために東京大学医学部附属病院に5日間入院し、7月には再度5日間入院され、新たな内服薬による治療が始まった。

宮内庁提供
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宮内庁によると、症状は比較的安定した状態で維持されているという。

以下、宮内庁が公表した「上皇陛下のご近況について」の全文。

上皇陛下のご近況について(お誕生日に際し)

上皇陛下は、今年、92歳のお誕生日をお迎えになります。

陛下は、令和4年7月、東京大学医学部附属病院において、三尖(さんせん)弁(べん)閉鎖不全による右心不全と診断され、薬の服用と水分の摂取制限等の内科的治療をお受けになっていましたが、本年5月、心筋虚血(冠動脈から心臓の筋肉への血流が不十分になる状態)が疑われる所見がみられたため、東京大学医学部附属病院に5日間入院され、検査をお受けになりました。

東大病院に入院した上皇さまを連日お見舞いされた美智子さま 2025年5月
東大病院に入院した上皇さまを連日お見舞いされた美智子さま 2025年5月

その結果、ご症状はないものの、一定程度以上の運動負荷がかかることによって心筋への血流が不十分となる無症候性心筋虚血と診断され、それまでの治療に加えて新たに心筋への血流を改善する薬物治療が始まりました。

その後、日常生活においては過度な運動負荷を避けつつ、慎重な経過観察が続けられましたが、検査所見が改善しないことから、心臓への負荷を和らげるための新たな内服薬を追加することが適切と判断され、7月に東京大学医学部附属病院に再度5日間ご入院になり、新たな内服薬による治療も始まりました。

12月8日にお住まいの仙洞御所で 宮内庁提供
12月8日にお住まいの仙洞御所で 宮内庁提供

その折、治療開始前検査において、脈拍が早くなる上室性不整脈も確認されたことから、現在、その改善も含めた薬物治療をお受けになっています。

ご症状は比較的安定した状態で維持されています。

今年は戦後80年の節目を迎えました。

「ひめゆりの塔」に献花された上皇ご夫妻(沖縄・糸満市)1975年7月
「ひめゆりの塔」に献花された上皇ご夫妻(沖縄・糸満市)1975年7月

陛下は、例年と同様に、上皇后さまとご一緒に沖縄県慰霊の日、広島原爆の日、長崎原爆の日、終戦記念日に黙祷され、終日静かにお過ごしになったほか、硫黄島、沖縄、広島、長崎等を巡られる天皇皇后両陛下の慰霊の旅を見守られ、薄れゆく「戦争の記憶」を伝えるテレビ番組をご覧になり、平和祈念展示資料館のレター「知られざるモンゴル抑留者の悲劇」に目を通され、ご静養先の軽井沢大日向で満蒙開拓の歴史を振り返られ、ご疎開時代の思い出や平成28年のフィリピンご訪問時にお会いになった残留2世の人々を思い起こされるなど、度々、先の大戦と向き合われました。

軽井沢では満蒙開拓の大日向地区へ 2025年8月
軽井沢では満蒙開拓の大日向地区へ 2025年8月

また、両陛下のご成婚に際して国民から寄せられたお祝い金を基に建設され、今年、開園60周年を迎えた「こどもの国」が、関係者の努力により今も多くの人々に親しまれている様子を同協会理事長等からお聴きになったほか、JICA海外協力隊が、幾多の困難を乗り越えて今年同じく発足60周年を迎えた歩みを、上皇后さまとその記念誌をご覧になりながら感慨深く振り返られていました。

ご一家で「こどもの国」に 2009年12月
ご一家で「こどもの国」に 2009年12月

両陛下は、昭和40年の第1次派遣以降の隊員を、また、昭和43年からは帰国隊員を御所にお招きになり、ご即位後の平成8年からは新たに日系社会青年ボランティア、日系社会シニアボランティア及びシニア海外ボランティアの代表にもお会いになって、その活動を称え、労われてきました。

その他、都内にあった訓練研修センターご訪問、物故隊員の慰霊碑ご供花、タンザニアでの交通事故により帰国入院した隊員のお見舞い、外国ご訪問時の現地派遣隊員とのご懇談、発足20周年から50周年までの記念式典へのご臨席など、長きにわたり青年海外協力隊の活動を見守られてきました。

12月8日にお住まいの仙洞御所で 宮内庁提供
12月8日にお住まいの仙洞御所で 宮内庁提供

先月、「第25回夏季デフリンピック競技大会 東京2025」が開催されましたが、日本選手団が初めて夏季デフリンピック競技大会に参加した昭和40年の第10回アメリカ大会以降、また、冬季デフリンピック競技大会については、平成11年の第14回スイス大会以降、それぞれの大会の参加選手等を度々東宮御所又は宮殿にお招きになった両陛下は、デフリンピック競技大会の今日の発展を陰ながらお喜びのご様子でした。

今年は大阪・関西万博が開催され、外国から多くの賓客が来日しましたが、長年にわたりご交流のあるスウェーデン国国王カール16世グスタフ陛下、ルクセンブルク大公国アンリ大公殿下、ベルギー国王女アストリッド殿下ご夫妻は両陛下との再会を望まれ、両陛下は仙洞御所で親しくご歓談になりました。

タイのシリキット王太后が亡くなった 2025年10月
タイのシリキット王太后が亡くなった 2025年10月

また、10月にタイ国シリキット王太后陛下が崩御されましたが、両陛下は、平成28年に崩御された前国王プミポン陛下と共にお会いした日々を懐かしまれながら、ワチラロンコン国王陛下に弔意をお伝えになりました。

ハゼの研究者として有名な上皇さま 提供 宮内庁
ハゼの研究者として有名な上皇さま 提供 宮内庁

ハゼ科魚類の分類に関するご研究は、これまでと同様に毎週月曜日と金曜日は皇居生物学研究所で、水曜日は仙洞御所で、引き続き、チチブ類の分類や行動、生態の再検証及び日本産クモハゼ類11種の分類学的再検討に取り組まれています。国立科学博物館が主催する「魚類分類研究会」にもオンラインで参加されています。

2021年には新種のハゼを発見し論文を出された
2021年には新種のハゼを発見し論文を出された

チチブ類の分類や行動、生態の再検証については、河川構造や潮汐運動による塩分濃度の違いがチチブ類の住み分けに与える影響や河川の生息環境の違いによる変化等に着目したチチブとヌマチチブの分類形質の解明を続けられています。

生物学研究所で研究者とミーティングされる上皇さま 提供宮内庁
生物学研究所で研究者とミーティングされる上皇さま 提供宮内庁

また、1980年に共著者と発表された日本産クモハゼ属6種とその後に確認された5種を加えた日本産クモハゼ属11種について、成魚と幼魚の分類学的形質に関する比較研究を進める一方、成魚と幼魚の両成長期を通した日本産クモハゼ属11種を識別するための検索表の有効性について引き続き検証されています。

今年のお誕生日行事は、別紙の通り、概ね昨年同様に簡素な形で祝賀をお受けいただく予定です。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。