――調査では外したくても外せない人もいた。どんな心理的影響が考えられる?

人と違うことをしたくない、同じことをするほうが心理的コストが低いため。それと、マスクをしていないことで不利益があるためだと思います。例えば、マスクをせずに百貨店に入ると連れ出される、注意される。他人から変な目で見られるかもしれません。外すことで得られることよりもそちらの影響が大きいと思うので、外せないのだと思います。
 

自分も我慢しているのだから他人も我慢すべき

――着用者が未着用者に否定的な意見を持ってもいたが、どんな心理的影響が考えられる?

自分も我慢しているのだから他人も我慢すべき。こうしたところがあると思います。自分は我慢という負担を払っているので、払っていない人をよくないとみなす。少し前にみられた“自粛警察”もこの心理ですね。コロナ禍以外でも、脱税事件で税金を払わない人に怒りを感じたりするのも、同じ心理です。

我慢による負担の影響も考えられる(画像はイメージ)
我慢による負担の影響も考えられる(画像はイメージ)

――着用者と未着用者が対立しないような、心理面でのアドバイスはある?

難しいと思います。一定のルールに沿って考えることができるのが理想です。例えば、「着用してください」とあればそれに従う、野外で着用しなくていいのであれば、外している人が気になっても指摘するのは避ける。こうしたところを伝えていくことでしょうか。

周囲に指摘されないための感染対策になっていないか

――感染対策に関連した、メディアや行政の対応に思うことはある?

ルールが変わらなければ、人は自分から責任をとって変わることは難しいものです。企業の感染対策においても、本当に合理的な効果があるかはどうでもよくなっていて、自分たちが(対策をしていないと言われる)攻撃対象になることを回避したい。それが今の全体の空気感ではないでしょうか。難しいのでしょうが、感染対策のどこが合理的かそうでないかをはっきりさせてほしいですね。


――人々のマスク着用について思うことはある?

気になるのは、屋外ではマスクをきっちりしているのに、飲食店に入ったら外して普通に談笑する姿が日常的にみられることです。飲食店での談笑の方が感染リスクが高いはずなのに、誰も違和感を覚えていません。恐らくは、屋外は人の目があるので「していないとまずい」、飲食店に入れば「自分は大丈夫」というバイアスが働いていて、こうなっているのでしょう。一種の同調だと思います。

飲食店で談笑する姿もみられる(画像はイメージ)
飲食店で談笑する姿もみられる(画像はイメージ)

――マスクを外すか迷っている。あるいは外せない人に伝えたいことは?

自分がいる状況の感染リスクを判断し、低ければ外すことを考えてもいいでしょうが、判断も難しいと思います。外したいのなら、公式の方針や見解を見て、何かあったときに説明できるようにする。一方で、周りがしているから着用することでも構わないと思います。判断に迷うところでは着用していいと思いますが、周囲に誰もいないなど感染リスクが限りなく低いのなら、外すことも考える。こうした意識を実践することはしていいのかもしれません。


マスクの着用は感染リスクが高い場所などでは引き続き必要だ。ただ、夏場の炎天下などでは長時間の着用が熱中症をまねく恐れもある。周囲の状況に応じて、着ける・外せるという選択肢があることは意識していいのかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。