約20年間国会議員を務めてきた前参院議員の蓮舫氏は都知事選開始から一貫して「私はチャレンジャー」と述べ、2期8年都政を担ってきた小池知事に挑む姿勢を見せてきた。
この記事の画像(21枚)政策では、現役世代の手取りを増やすことが本物の少子化対策だとして、「徹底した若者支援」を打ち出したほか、自身の“専門分野”とする「行財政改革」では、都財政の透明化を掲げた。また、選挙戦中盤には、神宮外苑の再開発について「都民投票を行う」と追加公約を発表し、小池知事との政策の違いを強調していた。
蓮舫氏の選挙戦を追った。
(取材・執筆:フジテレビ社会部・都知事選担当 中澤しーしー)
「会いに行ける蓮舫」各地で演説、練り歩き
選挙期間中の情勢調査で小池氏のリードが続く中、蓮舫氏は「会いに行ける蓮舫」と打ち出し、「私は1人でも多くの皆さんに政策をお伝えしたい」として、各地で街頭演説や練り歩きを行ってきた。
17日間の選挙戦で、蓮舫氏の活動の特徴だと感じたのは、「応援弁士」、つまり立憲民主党や共産党など蓮舫氏を支援する政党の幹部らが、毎回街頭演説に駆けつけ、蓮舫氏のとなりに並び「チーム」をアピールしていたことだった。蓮舫氏のイニシャル、「R」が書かれた服を着た仲間が傍らにいたことは、蓮舫氏にとって心強かったのではないか。
一方、選挙戦序盤には「これだけ多くの聴衆が集まった選挙は政権交代の時以来だ」と手応えを感じる陣営関係者もいたが、終盤には「支持が広がって行かない」といった焦りの声も聞かれた。
無党派層に支持が広がらず…共産党との「共闘」の影響も?
過去に現職が負けたことがない都知事選は、ハードルが高い選挙であることは間違いないが、蓮舫陣営にあった誤算は何だったのか。
一つ目に、今回の選挙戦のポイントとされた「無党派層」に、支持が広がりにくかったのではないかという点があげられる。
陣営は、立憲民主党や共産党などの幹部らを街頭演説に投入し、自民党の裏金問題などを批判する「共闘」の姿勢をとり、「与野党対決」の構図を描いてきたが、ある陣営関係者は「東京は共産党の支持が多いが、その分逃げる票も多い」と話すなど、共産党色が全面に出てしまうことで無党派層から嫌われるのではとの危機感を示していた。
これについて、共産党幹部は「共産がいるからダメという実感はない。立憲だけの選挙、共産だけの選挙ではなく、みんなでやる選挙としたことで、幅広い人達が立ち上がる受け皿となった」と話した。
批判的イメージ払拭できず
そして、もうひとつの誤算は、「批判ばかりする」という蓮舫氏本来のイメージを払拭できなかった点だ。もともと知名度がある蓮舫氏について陣営内のある国会議員は「国会質疑の反論のイメージが強い」と話す。「反自民・非小池の姿勢で臨みたい」としていた蓮舫氏は、一方で、インスタライブや練り歩きなど有権者とふれあうことで“素の蓮舫”を知ってもらおうと努めたが、陣営内部からは「批判ばかりとか政策の話してないとか、食わず嫌いになっている人たちに振り向いてもらうことが難しい」といった声も聞かれた。
蓮舫氏は小池知事との公開討論会で直接対決することを望んでいたが、野田佳彦元総理が応援演説で「現職の知事が討論会に出てこなかったら政策論争が深まらない」と話したとおり、現職と討論する機会も限られた。蓮舫氏は最後の訴えの後、記者団のインタビューに対し、小池都政への批判について聞かれると、「決して批判だけではない。“私の提案”を、批判と同じ分量で訴えてきた」と話した。
出馬は「人生最大の決断」 思いに動かされ新しいムーブメントも
都知事選への出馬を、蓮舫氏は「人生で最大の決断だった」と述べた。約20年間続けた国会議員を辞め、国政でやってきたことを都民のために生かしたいとした蓮舫氏。その思いに動かされた人たちもいた。「ひとり街宣」だ。
蓮舫氏の支持者が「R」のプラカードを掲げ、1人で演説を行うものだ。支持者による「ひとり街宣」は3000人を超えたという。
この新しい動きについて最終日の演説では「新しい民主主義が生まれた」とまで話した蓮舫氏。今後、どのような政治を見せてくれるのだろうか。