ホッキョクグマがアザラシをパクリ…驚きのぬいぐるみ

水族館や動物園では動物たちの生態の一部を見ることができるが、自然界での「自然な姿」がモチーフとなっているぬいぐるみが話題となっているのをご存知だろうか。
 

この記事の画像(9枚)

それが、株式会社AQUAが手がける【Sense of wonder (センスオブワンダー)】​というシリーズのぬいぐるみたち。

シリーズのひとつを見てみると、真っ白な毛並みのホッキョクグマ、アザラシ、魚、そしてオキアミと、順番に小さくなるぬいぐるみがなにやら口から出た細いヒモで繋がっているが…

実は、一番先のオキアミは魚の口に、魚はアザラシの口に、そしてアザラシはホッキョクグマの口にすっぽり収まるようにできており、食物連鎖が再現されているのだ。

ホッキョクグマのおなかに3つのぬいぐるみがすっぽりと収まるこちらのぬいぐるみの名前は「食物連鎖・北極」。同シリーズには「食物連鎖・南極」もあり、こちらはシャチ→ペンギン→魚→オキアミというつながりで構成されている。

「食物連鎖・南極」のぬいぐるみ
「食物連鎖・南極」のぬいぐるみ

ホッキョクグマがアザラシを食べる、あるいはシャチがペンギンを食べる…という場面は、野生動物を追うドキュメンタリー番組などでは見ることがあるかもしれない。しかし、身近な水族館などではまず目にする機会はない、生々しいシーンだ。

SNSでは「フォルムがかわいい!」という声の他、「なんでそんなシーンをぬいぐるみにしたの!?」「インパクトあるなぁ」との声も挙がっている。

かわいらしいふわふわの素材で、シビアな自然の世界が再現されている…というぬいぐるみ。子どもたちが見たら衝撃を受けてしまいそうにも思えるが…一体なぜ、このようなぬいぐるみたちを作っているのだろうか。

そして子どもたちからの評判はどうなのだろうか? 株式会社AQUAにお話を聞いてみた。

「リアルすぎず、遊びやすい形状目指した」

――「センスオブワンダー」シリーズはなぜ作られた?

弊社は動物園や水族館の中にある売店を運営しております。動物園や水族館は動物のこと、人間と生物の関わりを考えて感じていただく場所です。ぬいぐるみメーカーとしてお客様に「かわいい!」や「おもしろい!」と感じていただける製品を作ることから一歩踏み込んで、間近に見た生き物の生態や生育環境にも興味を持っていただきたい、という思いから【Sense of wonder (センスオブワンダー)シリーズ】を開発致しました。

このシリーズには「うまれてくるよ」「食物連鎖」「ごはんちょうだい!」の3つの種類があります。動物園や水族館にいる生物が、本来はどのような場所で何を食べてどのように生きているのか、そして、生きていくことの厳しさ、その環境についても興味を持っていただきたいという思いから「食物連鎖」をテーマの一つに選びました。

おなかから子どもサイズのぬいぐるみが出てくる「うまれてくるよ」シリーズのイルカ
おなかから子どもサイズのぬいぐるみが出てくる「うまれてくるよ」シリーズのイルカ

――捕食の姿にインパクトがある「食物連鎖」をテーマにしたぬいぐるみ…開発時には表現について意見があった?

「生物の生態や生育環境に興味を持っていただきたい」という企画ですので、捕食や生殖などをぬいぐるみで表現するという前提で進行しておりました。そのため、開発段階で「ホッキョクグマがアザラシを食べる」などの部分だけを取り上げて、賛成、反対の意見交換をするということはありませんでした。

ペンギンの親子がエサを受け渡しする様子を再現した「ごはんちょうだい!」
ペンギンの親子がエサを受け渡しする様子を再現した「ごはんちょうだい!」

――こだわりの点はどこ?

ぬいぐるみならではのやわらかさ、かわいらしさを楽しみつつ、生き物についての知識を深めていただけるように工夫しました。生態や生育環境に興味を持つ「入り口」になるよう、「リアルすぎない」「遊びやすい形状」を心がけました。

ぬいぐるみの表現上、サイズが大きいシャチやホッキョクグマが自分より小さな生命を食べるところまでのように見えてしまいますが、食物連鎖とは、その先にシャチやホッキョクグマの死骸を微生物が分解し、それを養分として植物プランクトンが育ち、オキアミがそれを食べるという生命の繋がりを指します。

その部分に関しましては、商品に取り付けております下げ札(購入後に取り外すことも可能な商品説明の紙)で補足できるように通常よりもサイズを大きくし、イラストや専門家の監修を受けた文章で表現しております。購入後に、食物連鎖を意識しながら、一緒にぬいぐるみで遊んでいただき、学びのきっかけのひとつになれたら幸いです。

また、オキアミは生態系全体に大きな影響力を持つ重要な生物なので外せないのですが、ホッキョクグマやシャチとの大きさの比率を重視すると小さくなりすぎて縫製ができないので、実際の比率からするとかなり大きめになりました。また、さらに小さいプランクトンや微生物までの表現は含められませんでした。

商品に付属する、さらに詳しい「食物連鎖」の解説
商品に付属する、さらに詳しい「食物連鎖」の解説

お子様は男の子の関心が高いようです

――どんな人たちが買っていく?

もともと、ターゲット層は小学生以上(対象年齢は6歳以上)のお子様を含むファミリー層を中心に、生物や動物園・水族館がお好きな大人としております。

実際に購入いただいているお客様も同様に、お子様を含むファミリー層と30~50代くらいの大人のお客様が多いと感じています。特にお子様は男の子の関心が高いようです。大人の方のご購入は、お子様やお孫さんへの購入の他に、ご自身用にもお買い求めいただいているようです。


――購入者からはどんな声が寄せられている?

店内では、親御さんがお子様に対して食物連鎖についてぬいぐるみを使って説明されている姿が見られ、「(学べる要素がある)こういうぬいぐるみはいいね」とお子様とお話しをされているご家族がいらっしゃいました。

SNS(主にTwitter)では、「可愛い」「欲しい」とたくさんお声をいただいておりますが、教材として購入するために動物園に足を運んでくださった方や、ネット販売でご購入の方からは「ダンボールまで可愛い」と嬉しいコメントをいただいております。


今回話題となったぬいぐるみに込められているのは、「生き物の生態や生育環境に興味を持つきっかけとなりたい」という思い。

取材前には「子どもたちからは驚きの声や怖がる声もあるのでは…」という心配もあったが、実際には、動物たちを取り巻く環境や生きることの厳しさをテーマにしつつも、リアルすぎないかわいらしいタッチのぬいぐるみは実際は特に男の子から人気があり、ファミリー層が購入する事も多いよう。

【Sense of wonderシリーズ】に込められたメッセージは、水族館や動物園を訪れる客にしっかりと伝わっているようだ。

――大きな反響がありましたが…

想像以上に多くの方から「いいね」や「コメント」をいただき、社員一同感激しております。ひとつひとつ大切に読ませていただいておりますが、開発背景にあります「生態や生育環境の表現」が正しく伝わり、ご興味を持っていただけていて、大変嬉しく思っております。本当にありがとうございます。


今後の商品展開について、AQUAは「必ずしも食物連鎖とは限りませんが、現在水族館や動物園の飼育員さんのご意見を取り入れながら商品の開発を進めております」とのことで、「ぜひ動物園や水族館に遊びに来ていただきたいです」と話している。

なお「食物連鎖・北極」「食物連鎖・南極」の値段は、1体3100円(税込み)。水族館の売店で販売している他、ネットで予約購入できるとのことだ。

初めて見た人は驚いてしまいそうな、斬新なテーマのぬいぐるみ。その正体は子どもたちが楽しく正しい知識をつけるための手助けとなる、かわいくも実用的なアイテムだった。

【関連記事】
「ズワイガニ」のリアルなあみぐるみが話題…食べる時みたいに脚が取れるんです​
大阪・海遊館の人気者“丸すぎるアザラシ”がクッションに…抱き心地もっちりで癒やされる

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。