今から32年前、ご結婚から8カ月が過ぎた2月9日に、両陛下は結婚後初めてお二人で記者会見に臨まれた。
独身時代からの心境の変化や内側から見た皇室の印象、新婚生活についてなどの質問にひとつひとつ真摯に答えられた両陛下。
平成6(1994)年2月12日放送「皇室ご一家」(第757回 皇太子ご夫妻 ご結婚後初の記者会見)を振り返る。

なお、本記事は当時のナレーションをそのまま記載。現在の天皇皇后両陛下をそれぞれ「皇太子さま」「雅子さま」などと記載する。

皇太子ご夫妻 ご結婚後初の記者会見

皇太子ご夫妻は2月9日、東京・元赤坂の東宮仮御所で、ご結婚後初めての記者会見に臨まれました。

平成6(1994)年2月9日 ご結婚後初の記者会見に臨まれた皇太子ご夫妻
平成6(1994)年2月9日 ご結婚後初の記者会見に臨まれた皇太子ご夫妻
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《報道陣とのやりとり》
記者:
「妃殿下は、風邪がまだ完全に治っていないということをお聞きしておりますけれども、お体の具合はいかがでございますか?」
皇太子さま:
「おかげさまで雅子も、風邪の方もだいぶ良くなりました。皆さまにはご心配をお掛けしました」
雅子さま:
「皆さまに随分ご心配をお掛けしましたけれども、ずいぶんと良くなりましたので、色々とありがとうございました」

 
 

記者から「殿下にとって独身時代と比べ、一番変わったことは?」と聞かれた皇太子さま。

皇太子さま:
「以前と一番違うことと申しますと、やはり一人のところが二人になったということだと思います。つまり今までは公務をするにしても何をするにしても一人でやっていたわけですけれども、結婚してからは何をするのにしてもすぐそばに雅子が居てくれまして、そしてまた別の目でもって色々なことを見て、そして今まで私が気がつかなかったこと等を色々と教えてくれます。それと同時に今まで私が経験しないでいたことで、雅子が今まで経験をしていた色々な話を聞くこともできて非常に楽しいです」

 
 

また雅子さまは「皇室に入り、当初、皇室について思い抱いていたイメージが、実際とは違ったということがあったか?」という質問に対し…。

雅子さま:
「私の場合、結婚が決まる以前に皇室に対して特定のイメージというものは特に持っていなかったような気がいたします。結婚をお受けするに当たりまして私がこれから皇室の一員としてどのように国民と関わり、そして世の中のためにどのような役割を果たしていくのかということについて考えていかなければならないと思いましたが、その気持ちは今でも変わっておりませんし、今後も一生の課題であるというふうに考えております」

 
 

さらに「これまで経験した公務の中で特に印象深かったことや感激されたエピソードは?」との質問に「公務との関係で特に印象に残ったことということでございましたが、結婚後公務のために色々と新しい経験をする機会に恵まれましたが、様々な行事に出席したり、また、施設を訪れたりいたしまして、その時その時に出会った方々がそれぞれ一生懸命にその行事に臨んだり、また、奉仕をしたり、また、生活をしていらっしゃる姿に爽(さわ)やかな感動を覚えたということだと思います」と述べられました。

 
 

続いて記者から「皇室の在り方について様々な議論があるが、今後築いていきたい皇室の将来像は?」と質問されたご夫妻。

皇太子さま:
「皇室に関して色々な議論があることは聞いてはおりますけれども、私たちとしましては皇族である以上、両陛下をお助けしつつ国民と共にある皇室を実現していきたいというふうに思っております。それとともに国内はもとより外国の様々な地域を回りまして、そして多くの人々と出会い、そして多くの物を見、友好親善関係の増進に少しでも役立つことができたらと思っておりますし、また、このようなことは私にとりましても、非常に大きな糧になるのではないかと思います」

 
 

雅子さま:
「この1年ほどの間、初めて両陛下のお姿をおそばで拝見してきまして私が大変心を動かされましたことは、両陛下がどのようなことであっても、苦しんでいる人々、悲しんでいる人々、又は恵まれない境遇に置かれている人々のために、いかにお心をお痛めになり、お心をお砕きになっていらっしゃるかということでございました。そのような両陛下のお姿に触れ、私もそのように心掛けていきたいというふうに感じております。今後、具体的にどのようなことをしていくかということにつきましては、皇太子殿下とご相談しながら考えていきたいというふうに考えております」

平成5(1993)年7月 北海道・奥尻島の被災地を訪問される天皇皇后両陛下
平成5(1993)年7月 北海道・奥尻島の被災地を訪問される天皇皇后両陛下

平成5年2月のご婚約会見の際、「お子さまは何人ぐらい?」という記者の質問に、皇太子さまは「まぁこれは、コウノトリのご機嫌に任せてというふうに申し上げておきましょう」とお話になり、雅子さまは「殿下は大変に音楽がお好きでいらっしゃるんですけれども、その家族でオーケストラが作れるようなほどの子供の数というのはおっしゃらないでくださいねと申しました」とお答えになっています。

平成5(1993)年2月9日 ご婚約会見
平成5(1993)年2月9日 ご婚約会見

今回の会見でも、記者が「妃殿下の風邪が長引いたこともあり、おめでたを取りざたする向きもありましたが…」と前置きした上で、婚約会見のときの発言を踏まえ「現在のお気持ちはいかがでしょうか?」と質問。これに対しご夫妻は…。

 
 

皇太子さま:
「コウノトリのご機嫌に任せて」とあの時申しました気持ちは今も変わっておりません。ただ、あまり周りで波風が立ちますと、コウノトリのご機嫌を損ねるのではないかというふうに思います。今回、風邪をひいたことが思わぬ方向に発展しまして大きな騒ぎになっておりますので、私としては正直言ってびっくりしております」

 
 

雅子さま:
「私も殿下のお考えと同じでございます。一言付け加えるといたしましたら、依然としてオーケストラは考えておりませんということでございましょうか」

 
 

とそれぞれユーモアを交えて答えられていました。

ご結婚から8カ月、「常に大勢の人に見られる状況は、経験したことがございませんでしたので驚きを感じました」と素直にそのお心を述べられた雅子さま。

皇太子さまは「雅子は、何でも話し合える良き妻であり、パートナーであり、人間として尊敬しています」と。

これに対し、雅子さまは「殿下は、常に深い思いやりを持って、大きく私を支えてくださいました」と話され、幸せそうなご様子でした。

学習院OB管弦楽団の定期演奏会

皇太子さまが独身時代から続けていらっしゃるのがヴィオラの演奏。

平成5(1993)年12月 学習院OB管弦楽団「第28回定期演奏会」を鑑賞された皇太子ご夫妻
平成5(1993)年12月 学習院OB管弦楽団「第28回定期演奏会」を鑑賞された皇太子ご夫妻

去年の暮れには、東京・目白の学習院創立100周年記念会館で行われた「学習院OB管弦楽団」の第28回定期演奏会にご出席になりました。

ルネサンス美術の展覧会

またご夫妻は、去年の秋、東京・上野の西洋美術館で行われた「ヴァチカンのルネサンス展」にお出掛けになりました。

平成5(1993)年11月 「ヴァチカンのルネサンス展」
平成5(1993)年11月 「ヴァチカンのルネサンス展」

この美術展は、西暦1400年前後に、イタリアのフィレンツェで始まったルネサンス美術の彫刻・絵画・タペストリーなど160点が展示され、ダヴィンチの未完の傑作「荒野のエロニムス」が特別出展されました。

「ヴァチカンのルネサンス展」を鑑賞される皇太子ご夫妻
「ヴァチカンのルネサンス展」を鑑賞される皇太子ご夫妻

ご夫妻は、世界の芸術の頂点に立つ作品の一点一点を熱心にご覧になりました。

各国外交団を招き鴨場接待

さらにご夫妻は、去年の暮れ、埼玉県越谷市にある宮内庁鴨場に各国の外交団を招かれました。

平成5(1993)年12月 埼玉鴨場で行われた外交団接遇行事(埼玉・越谷市)
平成5(1993)年12月 埼玉鴨場で行われた外交団接遇行事(埼玉・越谷市)

これは、皇室に伝わる伝統的な鴨猟を通じて各国の大使と親善を深めるためのもので、雅子さまのご出席は初めてです。

 
 

中庭で鴨を放たれた皇太子ご夫妻。各国の人々と和やかに歓談され、積極的に国際親善に努めていらっしゃいました。
(「皇室ご一家」第757回 平成6年2月12日放送)