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年に一度のチョコレートの祭典、バレンタインデー。
かつては「大切な誰か」に贈るのが主流だったこのイベントは今、大きく姿を変え、市場の主役は「自分自身」へと移行した。

世界的なカカオ不足による価格高騰、いわゆる「カカオショック」の最中にありながら、チョコレート市場は、依然高い熱量を帯びている。

なぜ私たちは、高くても「自分へのごほうび」としてチョコレートを求めるのか。そしてなぜチョコレートは「ごほうび」たりえるのか。その裏側にある消費心理と、科学的根拠を解き明かす。

カカオショックを凌駕する「自分チョコ」熱

仙台三越で開催される「サロン・デュ・ショコラ」 多くのチョコレートファンが詰めかける
仙台三越で開催される「サロン・デュ・ショコラ」 多くのチョコレートファンが詰めかける

仙台三越の「サロン・デュ・ショコラ」や藤崎の「ショコラマルシェ」など、仙台市内の百貨店で開催されているチョコレートのイベントは、今年も多くの人々で賑わっている。

関西大学の宮本勝浩名誉教授によると、バレンタインチョコによる経済効果はコロナ禍前の2018年に約1230億円とピークを迎え、ここ数年は約1000億円前後で推移しているという。

しかし、その背景にはカカオショックと物価高がある。

カカオ原産地の異常気象などから生じたカカオショックは、ニューヨーク市場におけるカカオの市場価格が1トンあたり1万ドルを超えるなど、チョコレート市場に深刻な影響を与えた。
収穫量が回復し、市場価格は落ち着きつつあるが、それでもカカオショック前の2倍以上と高止まりが続いている。

チョコレートジャーナリスト 市川歩美さん
チョコレートジャーナリスト 市川歩美さん

チョコレートジャーナリストの市川歩美さんは、「2026年は高止まりのバレンタイン。賢くチョコを選ぶバレンタインになるのではないか」と予測する。

チョコレートジャーナリスト 市川歩美さん:
パッケージ代や配送代、人件費、そういったものも軒並み上がっていますから、チョコレートに限ったことではないんですけれども、価格が従来のように下がるというのはちょっと考えにくい。

だが、値上げが消費を冷え込ませる気配はない。
仙台三越の赤川寛バイヤーによると、むしろ売り上げは上がっているという。

仙台三越 赤川寛バイヤー:
推し活と似ているようなところが感覚としてあって、好きなものに対してはお金をかけて投資していく、そういう心理が働いているのかなと思います。

会場を訪れた人たちも「高くても買います。もう欲望のままに購入する。」「価格はあがってもしょうがないご時世。自分の好きなものなので、高くてもお金は出します。」と、正直な胸の内を語る。

脳と心が求める「ごほうび」の科学的理由

東北大学 坂井信之教授
東北大学 坂井信之教授

なぜ、チョコレートはこれほどまでに「ごほうび」として機能するのか。
その謎を解き明かしたのが、応用心理学を研究する東北大学の坂井信之教授だ。

坂井教授は、チョコレートが「ごほうび」となる理由として、4つのポイントを挙げる。

1. 「選ぶ」という満足感
人は多種多様な選択肢の中から自ら選べる状態に満足感を覚える。「サロン・デュ・ショコラ」のような祭典で、膨大な種類からお気に入りを見つけるプロセス自体が、脳にとってのごほうびなのだ。

2. 本能が求める高い栄養価
糖質や脂質を効率よく摂取できるチョコレートは、生存のためにヒトが本能的に求める食べ物であるという側面がある。

3. ストレスを和らげる脳内物質
チョコレートに含まれる「トリプトファン」という必須アミノ酸は、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」や、睡眠を促す「メラトニン」の原料となる。実験では、作業中にチョコレートを食べたグループは、そうでないグループに比べてストレス値が大きく低減するという実験結果も出ている。

4. 人を優しい気持ちにさせる
甘い香りは、人の行動さえも変える。海外の実験では、スイーツショップの前だと、通りがかりの人が落とし物を拾ってくれる確率が、何もない場所の3倍以上に跳ね上がったという。チョコレートの甘い香りがご褒美として重要ということだ。

バレンタインは「心への投資」へ

市川歩美さんは、自分チョコには「日々頑張っている自分に時には高級なチョコをプレゼントして、自分がこれから頑張ろうという投資的な意味合いがある」と分析する。

私たちの心身に幸せをもたらすチョコレート。
それは自分へのご褒美であり、投資であり、推し活のようなものでもある。
カカオショックという逆風があっても、その熱狂が冷めることはなさそうだ。

仙台放送
仙台放送

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