福井県知事選挙で、元外務省職員の石田嵩人氏(35)が初当選を果たした。杉本前知事のセクハラ問題による辞任を受けて行われた今回の選挙。石田氏を含む新人3人が立候補し、若さを前面に打ち出した石田氏が、激戦の末、元副知事で前越前市長の山田賢一氏(67)を4330票差で破った。
セクハラ問題で失われた信頼の回復をはじめ、北陸新幹線の延伸、原子力政策、アリーナ整備計画など、県政には課題が山積している。政治経験がない石田新知事は、この難局にどう立ち向かうのか、報道番組「タイムリーふくい」で聞いた。
保守分裂の知事選を制し4300票差で勝利
今回の知事選挙は保守分裂の様相となった。元外交官の石田氏を擁立したのは、福井市議会の保守系会派の有志。
対抗馬の山田氏を擁立したのが福井県議会の自民党会派で、党の「支持」を取り付けた。
この“しこり”を心配する声に対し、石田知事は「選挙は選挙、県政は県政」と述べ「県政を前に進める気持ちは県議会とも一致しているはずだ」と協調して取り組む姿勢を示した。
また、選挙期間中に「日本は単一民族国家である」と発言したことについて問われると、 「多様な考え方や解釈があると私自身、承知しているので、その部分は訂正する」とした。
外国人労働者の受け入れについては、受け入れ自体を否定しているのではなく、国の法令やルールが適切に適用されることが重要だと説明。「日本人も外国人も互いにリスペクトし合える、秩序ある共生社会を目指すことが重要」との考えを示した。
外務省での経験を生かし「福井の魅力を世界に発信」
石田知事は福井市出身の35歳。北陸高校を卒業後、アメリカのパシフィック大学へ進学。2015年に外務省に入省し、アフリカのザンビア大使館やオーストラリアのメルボルン総領事館などで勤務した経歴を持つ。
外務省を目指したきっかけは、アメリカの大学在学中に発生した東日本大震災だったという。当時、クラスで唯一の日本人だった石田氏は、教授や学生から日本の状況を問われ、拙い英語でプレゼンテーションを続けた。その経験から「日本人として海外に発信することの大切さを実感し、日本の国益のために働きたい」との思いを強くしたという。
海外で多くの人々と仕事をする中で、「自分のふるさとのために命をかけるという強い覚悟や意思をもって働く人々の姿に感銘を受けた」といい、自らも「ふるさとのために命をかけたい」と知事を目指す原動力になったと語る。
自身の強みを問われると、迷わず「発信力」と答えた。「福井の素晴らしさ、魅力を県外、日本、世界に発信していきたい」と意気込む。
県民が最も期待する「景気・雇用対策」
知事選挙の投開票日に福井テレビが行った出口調査では、新しい知事に期待する政策として最も多かったのが「景気、雇用対策」で、全体の56%を占めた。
長引く物価高に苦しむ声を、選挙期間中にも多く聞いたという石田知事は、消費喚起などの緊急対策が必要だとしつつ、「一過性ではなく、継続した賃上げの促進やデジタル化などを通した将来への投資も着実に進めたい」と述べた。
さらに最重点政策に掲げるのが「子育て支援」。結婚から妊娠、出産、子育てまでの切れ目のないきめ細やかな支援を目指し、県の施策の認知度を高めるため内外にアピールしていく必要性を強調した。
混迷する北陸新幹線 「小浜・京都ルートが一番の近道」
県政の最重要課題の一つが、北陸新幹線の大阪延伸だ。日本維新の会が与党入りしたことで、敦賀以西のルート案が再検証されることになり、事態は混迷を極めている。
石田知事はこれまでの県政方針と同様、選挙期間中から一貫して「小浜・京都ルート」での早期認可着工を訴えている。再検証が求められた8つのルート案のほとんどは過去に議論されたものだとし「これまでの経緯を踏まえた議論がなされれば、おのずと小浜・京都ルートの優位性が再確認される」との認識を改めて示した。
京都の地元負担や、地下水への影響を懸念する声に対しては、国に負担軽減を求めるとともに、国が前面に立って科学的根拠に基づく丁寧な説明を繰り返すよう要請していくとした。
また、大阪延伸による年間2700億円とされる経済効果や年間1910万人と試算される交流人口の増加といったメリットの約8割以上が関西にもたらされると指摘。この事実を国がもっと関西にPRすべきだとし、県としてもSNSなどを活用して情報発信に努める考えを示した。
今後の与党の意見聴取では、「小浜市付近を通らないルートは同意できない」「小浜・京都ルートが全線開業の一番の近道である」というスタンスで臨むと力強く語った。
ハラスメント撲滅へ 全国初の条例制定目指す
さらに注目すべきは、今回の知事選の引き金となった杉本前知事のセクハラ問題。被害が長期間見過ごされてきた原因について石田知事は、調査報告書の指摘通り「管理職の問題意識の希薄さ」「内部通報体制の機能不全」「被害を通報しにくい組織風土」といった県庁組織の問題があったと認識している。
再発防止策として、特別職も対象に含めた「ハラスメント防止条例」を2月県議会に早急に提案すると明言した。実現すれば都道府県レベルでは全国初となる。
条例では、「起こさせない、見逃さない、そして、繰り返さない」という考えのもと、特別職らの責務や相談体制などを明文化し、健全で風通しの良い職場環境を目指すという。
「いかなるハラスメントも許されるべきではない」と強調する石田知事。ハラスメント撲滅を喫緊の課題と位置づけ、議会と議論を尽くし、速やかに取り組みを進める決意を示した。
石田知事は改めて県民に対し「福井の未来を作る、その責任から決して逃げない。県民の信頼を回復できるよう、県政を前に進めていく」と決意を述べた。
