
オリンピック連覇という金字塔を打ち立て、現在はプロスケーターとして飽くなき表現を追求する羽生結弦さん。彼が故郷・宮城のスケート環境を守るために投じた5400万円あまりという巨額の寄付が、今、大きな感動を呼んでいる。
舞台となったのは、宮城県大和町にある「ベルサンピアみやぎ泉」。長年にわたって環境の改善を迫られていたリンクは、羽生さんの子供たちへの思いによって劇的な変貌を遂げた。
氷を覆う「こぶ」との長年の戦い
昨シーズンまで、ベルサンピアみやぎ泉のスケートリンクには、利用者やスタッフを悩ませる深刻な問題があった。
ベルサンピアみやぎ泉 馬場宏樹施設長:
天井全体から氷の上の方に、水滴が落ちてきまして、リンク全体に“こぶ”ができてしまう状況でした。
ベルサンピアみやぎ泉のスケートリンクはその構造上、湿度が高くなりやすく、天井や鉄骨に発生した結露が水滴となってリンクに落下。氷の表面に無数の“こぶ”ができ、滑走の妨げとなる環境が続いていた。
さらに、鉄骨についたさびが結露の水滴とともに落ちることで、リンクの景観の悪化も引き起こしていた。
これまでは、逐一整氷車でリンクを均して対応していたが、こぶによる整氷車への負担も大きい上に、どれだけ対応してもリンク使用中に水滴が落ちてくる。
ベルサンピアみやぎ泉 馬場宏樹施設長:
施設でもいろいろと対策は考えていたんですけれども、修繕費用の見積もりをとってみると、すごい金額になってしまって。
問題の解決には、5000万円を超える膨大なコストが立ちはだかった。
5420万円、羽生結弦さんの「二つ返事」
そんなリンクの窮状を気にかけていたのが、羽生結弦さんだった。
自身のアイスショーの事前練習などでこのスケートリンクを利用していた羽生さん。施設側が多額の費用がかかることを伝えると、羽生さんは迷うことなく「やりましょう」と、寄付を提案したという。
その額、5420万5800円。
この資金により、大型の除湿機6台と送風機8台が新たに導入され、天井部分には特殊な結露防止塗料が塗られた。
昨シーズンまで、70%を超えることもあったという湿度は、修繕後は50%ほどにまで改善。積年の悩みだった結露は、一掃された。

さらに、リンクを整備する整氷車のバッテリーも新調され、作業負担も大幅に軽減。
ベルサンピアみやぎ泉 馬場宏樹施設長:
ありがたいの一言。以前の結露が全くなくなった状態で営業できているので、スケートやられている方からも『だいぶ変わったね』とありがたい言葉をいただいています。
この支援を伝える案内板が設置されると、瞬く間にSNSで拡散。国内外から多くのファンが足を運ぶ光景が見られている。

施設の受付には羽生さんのサインのほか、アクリルスタンドや人形なども飾られているが、これは施設が用意したものではなく、訪れたファンが寄贈したものだ。
「日本フィギュア発祥の地」を守り抜く決意
羽生さんの故郷への貢献は、今に始まったことではない。
幼少期から通っていた「アイスリンク仙台」への寄付額は、累計で1億円を超えている。
彼を動かしているのは、自身を育てた宮城の地への恩返しと、後に続く才能への強い願いだ。
通年型のスケートリンクを整備してリニューアルオープンしたゼビオアリーナ仙台の改修工事にあたって、羽生さんはビデオメッセージを送っている。

羽生結弦さん:
仙台は日本フィギュア発祥の地と称され、これまでに多くのフィギュアスケーターが育ってきましたが、この練習環境はとても厳しい状況にあります。数多くの新たな才能がこの街に集い、成長していく、そしてフィギュアスケートの新たな魅力をこの町から発信していく、そのような取り組みができればと自分も思います。
かつて羽生さんが発したこの言葉通り、今回の寄付もまた、子供たちの未来を見据えたものだった。修繕にあたって、何度も羽生さんとやり取りを交わした馬場施設長は、支援の根底にあった羽生さんの想いを「どこまでも子供たちの未来、フィギュアスケートという競技の発展のため」だったと語る。
ベルサンピアみやぎ泉 馬場宏樹施設長:
羽生さんも子供たちが安全に滑れるようにと、最初の時からずっとお話していたので。
美しい氷が張られたリンク。そこには、次世代のスケーターたちが安心して夢を追えるようにと願う、羽生さんの温かな情熱が刻まれている。
