石川県は、県最大の一級河川である手取川を始めとする白山水系の水源に富んだ土地だ。その弱軟水を用いて造られる酒は、ふくよかで華やかな味わいが特徴とされている。それに加えて、石川県オリジナルの「百万石乃白」や「山田錦」など、全国的にも酒造りに好適と言われる米を使っていることから、能登の酒は米の味がはっきり現れる、とも言われている。
今回、中島遼太郎さんのお話は金沢にある「やちや酒造」の事務所をお借りして伺ったのだが、こちらの酒蔵もまた江戸初期から続く伝統ある酒蔵のひとつである。
やちや酒造は、1583(天正11)年に神谷内屋仁右衛門(かみやちやじんうえもん)が殿様用の酒造りをするために、前田利家公のお供をして尾張の国から移住したのが始まりとされている。
「和らぎ水」のルーツも能登だった
取材のあと、やちや酒造の四家(しやけ)杜氏、中島酒造店の中島杜氏らと酒席を共にした。そこで勧められるままに飲んだ「神泉」「宗玄」「加賀鳶」「天狗舞」といった石川県を代表する酒はどれも味わい豊かで、ついつい自分の限度量を超えて飲み過ぎてしまいそうになる。
そんなとき、四家さんからいいことを教わった。酒席で日本酒を長く楽しむためには、日本酒と同時に「水」をもらって飲めばいいというのだ。
酒好きは、どうしても「酒の席で水を飲むのはかっこ悪いのではいないか」と考えてしまいがちだ。しかし、現場で酒を造っている人たちは「決してそんなことはない」と口を揃えて言う。飲酒の合間に水を飲むことで舌をリセットできるし、酔いを抑えることもできて、一石二鳥なのだ。
このように、お酒の合間に水を飲むことは、筆者自身もこれまで気まぐれで実施してきたが、その行為に「和らぎ水(やわらぎみず)」という名前が付いていることは、今回初めて知った。
実は「和らぎ水」という名前は、先の中島さんのお母様がやはりお酒好きで、公募に応募して採用されたのが発祥なのだとか。いかにも良い水に恵まれた能登らしいエピソードである。
珠洲で見つけた小さなブックカフェ
金沢と輪島で地物の魚と酒を堪能した後は、能登半島でもより被害が大きかった珠洲にも足を伸ばしてみた。
