今回の震災でもとくに被害が大きく、道路は崩れ、いまもまだ通行止めの区間があり、電柱は傾いたままで震災の傷跡を残している。それでも営業を再開した店はいくつもあり、着実に復興への歩みは進んでいる。

珠洲の中心部に立つ「いろは書店」。元々は同じ通りの別の場所にあったが被災したため、タクシー会社の事務所だった建物を改装して移転したという
珠洲の中心部に立つ「いろは書店」。元々は同じ通りの別の場所にあったが被災したため、タクシー会社の事務所だった建物を改装して移転したという

以前はタクシー会社だったという建物を利用して営業しているお店で朝食をとった。元々は珠洲市にあった「いろは書店」という、いわゆる町の本屋さんだ。地震によって店舗は倒壊してしまったが、運良く斜向いにタクシー会社の事務所が空いていた。

いろは書店には能登関連本コーナーもある。店の一角がカフェスペース
いろは書店には能登関連本コーナーもある。店の一角がカフェスペース

震災後、朝食をとれるようなお店がほとんどなかったので、その「いろは書店」と「カフェのらもじ」が共同で店を始め、ブックカフェとして営業を始めているのだ。そこではサンドイッチのセットをいただきながら、本を買うこともできる。

サンドイッチは500円でこのボリューム
サンドイッチは500円でこのボリューム

サンドイッチを食べていたら、店主から唐突に「○○さん(某有名女優)は好きですか?」と聞かれ、戸惑ってしまった。何事かと思ったら、つい先日もその女優がこの店に来たのだという。なるほど、店内にも何枚かポスターが貼られていて、サインも書かれている。

その女優さんは、かつて輪島を舞台とするドラマに主演したことがあり、珠洲にも何度かロケ撮影で訪れていた。その縁から炊き出しのボランティアなど、たびたび珠洲にも足を運んでくれているという。

筆者はあいにくその女優さんには詳しくないが、有名無名を問わず、この土地を愛する人は多い。日本列島は震災から逃れることはできないが、土地土地の味は時代を超えて引き継がれてゆくのだろう。

取材・文=風来堂(とみさわ昭仁)

風来堂
風来堂

旅、歴史、アウトドア、サブカルチャーが得意ジャンルの編集プロダクション。『クマから逃げのびた人々』、『日本クマ事件簿』(以上、三才ブックス)など、クマに関する書籍の編集制作や、雑誌・webメディアへの寄稿・企画協力も多数。
ほか、編集制作を担当した近刊に『世界のお弁当とソトごはん』(岡根谷実里/三才ブックス)、『ニッポン秘境路線バスの旅』(交通新聞社)、『戦う山城50』、『カラーでよみがえる軍艦島』(以上、イースト・プレス)など。
『戦う山城50』(イースト・プレス)『おもしろ探訪 日本の城』(扶桑社文庫)など、代表の今田壮は「古城探訪家・今泉慎一」名義での歴史系著作も手がける。