【黒瀬特別支援学校のみのお分校 南昊雅さん】
「野球を好きになってほしい気持ちもあるし、僕が本当に野球が好きでやりたかった」
白球を追いかける1人の球児。彼は高校野球界に新たな風を吹き込みました。
【南さんが送った手紙】
「障がいがあっても、みんなと同じように戦えるんだぞっというのを知ってもらいたいです」
実直に想いをつづったた1通の手紙。
【黒瀬特別支援学校のみのお分校 佐伯昌史校長】
『高校野球やりたい、硬式野球やりたい」という気持ちは、「高校生も特別支援学校の高等部の生徒も同じだよな」ということを気づかせてもらった』
熱い思いに背中を押された大人たち。この冬、広島で新たに誕生した特別支援学校の野球部。夢への始まりに迫ります。
「一生懸命プレーする姿を家族に見せたい!」
年の瀬が近づいていた2025年12月中旬…
【野球部員】
「気をつけ礼!よろしくお願いします」
彼らは広島県東広島市にある、「広島県立黒瀬特別支援学校のみのお分校」の野球部員です。学校は2025年4月に誕生しました。
【黒瀬特別支援学校のみのお分校 野球部 栗原庸輔監督】
「とっさの判断の難しさや。どうすればいいのかと悩むこともあると思う。注意深く見守っていきたい」
野球部の発起人 2年生の南昊雅さん。
【南昊雅さん】
「野球を好きになってほしい気持ちもあるし、僕が本当に野球が好きでやりたかった」
【栗原庸輔監督】
「南さんはすごく積極的に何事も全力で取り組む生徒」
昊雅さんには野球をプレーする姿を見せたい人がいます。
【南昊雅さん】
「一生懸命している姿を見てもらいたいし、家族のためというか、期待に応えていきたい」
「何か自分が好きなことをして、いきいき生きてほしい」
昊雅さんの母・沙織さん。女手一つで2人の子どもを育てきました。
大のカープ好きの昊雅さん。生活の中心はもちろん野球です。
【南沙織さん】
Q普段から家でも野球?
「そうですね。頭の中は一日中野球かなと思います」
沙織さんは1番近くで、昊雅さんを見守ってきました。
【南沙織さん】
「この子が本気だった本気を感じたっていうのと、何か自分が好きなことをして、いきいき生きて欲しい」
物事を覚えるのが苦手だった幼少期 医師から告げられた「軽度知的障がい」
昊雅さんは小さい頃から、物事を覚えることが苦手だったといいます。
【南沙織さん】
「年少の頃は1人だけ着替えが出来ませんって言われたり、運動が苦手だったり、宿題でひらがなで書く、それさえも上手くできなかった」
小学校低学年の時、医師から「軽度知的障がい」との診断を受けました。
【南沙織さん】
『本人も「みんなが出来ることが僕だけ何でできんの?」「出来ない」みたいなことを言って、ちょっと体もダウンした」
人生を変えた友人の一言「野球に障がいは関係ない」
そんな時、昊雅さんを前向きにさせてくれたものが…
【南昊雅さん】
『友達から「野球を一緒にしないか」と言われた。最初は(野球を)やりたいという気持ちはあったけど断った。すると友達が「野球には障がいは関係ない」と言ってくれた』
昊雅さん気づけば野球の虜になっていました。
【南沙織さん】
「”水を得た魚のよう”にいきいきとなった。野球楽しい、大好きみたいな感じ」
ただ、思春期になると少しブレーキがかかることもありました。
【南沙織さん】
「人目も気になる、給食でさえ食べられない時期とかもあった。人間関係が上手くいかなかったりとかして、だからこそ普通高校も厳しいと思っていた」
「どうしても野球がやりたい」昊雅さんがとった行動とは?
進学先は昊雅さんのペースに合わせ、野球部のなかった今の学校に。
でも…「野球がどうしてもやりたい」昊雅さんは野球部を作るためにある行動にでます。
【南さんが校長先生に送った手紙】
「障がいがあっても、みんなと同じように戦えるんだぞっというのを知ってもらいたいです」
びっしりと書かれた校長あての手紙。かつて高校球児だった佐伯昌史校長はー
【黒瀬特別支援学校のみのお分校 佐伯昌史校長】
『高校野球をやりたい、硬式野球をやりたいという気持ちは、「高校生も特別支援学校の生徒も同じだよな」ということを気づかせてもらった。あの熱い夏を経験させてあげたい」
しかし、野球は1人ではできません。部員集めにも昊雅さんは力を入れます。
【南昊雅さん】
「パソコンを打つのが本当に苦手だが、野球部に入ってもらうには自分も頑張らないといけないと思い、野球部のチラシをお母さんと一緒に作った。谷くんという1年生が野球部に入りたいと自ら言ってきてくれて、本当に飛び上がるくらい嬉しかった」
昊雅さんの熱意が”野球を愛する仲間”の心を動かす
1年生の谷駿汰さん。昊雅さんの作ったチラシを見て野球部への入部を決めました。
【谷駿汰さん】
Q野球部に入ったのはどうして?
「楽しそうだったから」
谷さんには「場面緘黙症」の症状があります。話したい気持ちはあっても緊張や不安が強くなる場面では、声を出すことができません。
【谷駿汰さん】
Qこれまでに野球のチームに入ったことは?
※谷さん首を横にふる
【ディレクター】
「一大決心、やってみようと思ったんだ」
※谷さんうなずく
【栗原庸輔監督】
Q谷さんはどんな子?
「谷くんも真面目にコツコツとしっかり部活も学業の方も頑張ってくれる」
【南昊雅さん】
Q谷さんはどんな後輩?
「優しいです。素直に答えてくれるので、一緒にやって楽しいです」
大会出場を目指して…
「のみのお野球部」は特別支援学校として中四国で初となる、高校野球連盟の加盟へと歩みだします。
中四国初の高野連加盟を目指して!緊張の合同練習
中四国初の高野連加盟を目指す「広島県立黒瀬特別支援学校のみのお分校」野球部。この日は黒瀬高校野球部との合同練習です。
【合同練習】
「よろしくお願いします!」
高野連の関係者も視察にやってきました。高野連への加盟が認められなければ、大会出場は叶いません。昊雅さんも練習に力が入ります。
【広島県高校野球連盟 中林直規さん】
「少人数ながら野球に取り組む姿勢は非常に真摯なものがあった。今回、特別支援学校ののみのお分校が参入することになると、今まで野球を高校であきらめていた、中学校までやっていた子が一つの選択肢として、勇気を与えるような形になると思う」
【南昊雅さん
「サードが難しかった」
【栗原庸介監督】
「これから練習して、どこをやるかは分からないけど、色々なことを練習して自分にあったところを探そう。足は大丈夫…?」
【南昊雅さん】
「足…大丈夫です」
ついに野球部の念願が!? あれ?南さん…?
数日後、野球部から連絡があり取材班が訪れると…
【南昊雅さん】
「失礼します」
Q南くんどうしたの?
「右ひざにひびが入って、医者に軽く骨折と言われた」
昊雅さん、高野連の視察の日に練習を張り切りすぎたようです。
【栗原庸輔監督】
Q南くんのケガが心配ですね
「頑張りすぎるところがあるので、そこは指導者側の方がセーブしながら配慮していきたい」
一方、野球部の願いは実を結びました。
「見事、加盟が承認されました(拍手)」
【南昊雅さん】
Q高野連加盟が決まってどう?
「めっちゃうれしいです!早く大会に出てみたい」
見守り続けた大人たちも喜びはひとしおです。
【南沙織さん】
Qどのような形で加盟になったことを知った?
「テレビの報道で。仕事帰りで車を運転しながら聞いて、車の中で号泣しながら
帰ってきた」
Qなぜその涙が出た?
「一番は色々な人への感謝がわーって溢れてきた感じ」
【黒瀬特別支援学校のみのお分校 佐伯昌史校長】
「本当に夢が1つ開くというか、これから本当の意味で夢が始まったなという気持ち」
高校野球の歴史に新風を!「のみのお野球部」の夢
初陣は春の大会!複数の学校と合同チームを組み、出場する予定です。
【栗原庸輔監督】
「障がいがあってもなくても、大好きな野球を取り組める環境ができることは、少し壁はあったかもしれないが、すごく歴史的。楽しい時間に巡り合えた」
【南昊雅さん】
「みんなと同じくらい練習をやって、一生懸命、障がいとか関係なく、一生懸命レギュラーを取りにいきたい」
Qその前に…足のけがの方はどうしますか?
「頑張って治します」
夢を追い続けた子どもと夢を信じ続けた大人がつかんだ夢舞台。
「のみのお野球部」高校野球の歴史に新たな風を吹き込みます。