23日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、2回にわたり円が急騰する場面があり、1ドル=155円台をつける展開となった。アメリカ当局が「レートチェック」を実施したとの情報が駆け巡った。

金利に続き日米の連携姿勢か

アメリカのメディアは、アメリカ財務省の要請でニューヨーク連銀が介入の準備段階となる「レートチェック」を実施し、金融機関に為替相場水準について問い合わせを行ったと報じた。

アメリカ通貨当局によるレートチェックが明らかになるのは近年はまれだ。円安是正をめぐりアメリカが日本と協力して対応する姿勢が示されたとの見方が広がっている。

市場の動揺に対し、アメリカ側から日米両国間の連携が強調された場面は先週半ばごろにもあった。

ベッセント財務長官
ベッセント財務長官
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スイス・ダボスで開かれた世界経済フォーラム年次総会で、20日、ベッセント財務長官は、日米の金利の急上昇をめぐり、日本の当局と連絡をとっているとしたうえで、「彼らから市場を落ち着かせる発言が出てくるだろう」と沈静化に期待を示した。

日本国債の売り浴びせは、高市首相が19日、衆院を解散する意向とともに、食料品の消費税率を2年間ゼロにする方針を表明し、与野党で消費減税を掲げる動きが相次いだことで加速した。債券市場では、20日、長期金利の代表的な指標となる新発10年物国債の利回りが2.380%と、約27年ぶりの水準をつけ、40年物国債では史上初めて4%を突破した。

こうした動きはアメリカ市場にも波及し、10年債利回りは、20日、一時、4.31%と、前週末に比べ0.09%高い水準をつけたほか、30年債利回りも大きく上昇した。

米金利上昇「日本から波及」

ベッセント氏は、日本の10年債利回りが直近の2日間で大幅な上昇を記録したとして、「アメリカ長期金利に換算して0.5%分に相当する」と説明し、「日本からの波及効果を分離して考えることは非常に難しい」との見方を示した。

アメリカ債券市場の動揺には、日本発の要因だけでなく、グリーンランドをめぐる米欧の緊張感の高まりという火種もあった。トランプ政権がヨーロッパ8か国に追加関税を課す方針を打ち出す一方で、デンマークの年金ファンドの米国債売却の意向も伝えられるなか、アメリカの長期金利は上昇ピッチを強めていた。

ベッセント長官の発言は、市場のボラティリティを日本での債券暴落に帰することで、グリーンランドをめぐるトランプ政権の強硬姿勢によりもたらされたものだとの批判を避ける狙いがあったとの見方も出ている。

片山財務相は23日の閣議後会見で「狼狽ショックは収まった」と発言
片山財務相は23日の閣議後会見で「狼狽ショックは収まった」と発言

ダボス会議に出席していた片山財務相は、帰国後、23日の閣議後会見で、高市政権の消費減税方針を会議で丁寧に説明したことで「狼狽ショックは収まった」と語った。消費減税の対象は食料品のみで2年間に限定していることや、赤字国債に頼らないことなどが海外に正確に伝わっていなかったとして、こうした点を「英語でも日本語でも伝えた」という。

円安・金利上昇の連鎖は

日本の財政悪化懸念は円安傾向を強める材料になっている。円安の進行はインフレ圧力となるほか、日銀の金融政策が後手に回るビハインド・ザ・カーブへの警戒感も広がる。この先、円のさらなる下落が日本の金利の一段の上昇につながり、アメリカ市場に波及する可能性もあるなか、アメリカ側には円安是正への協力で長期金利上昇を抑える思惑があるとの指摘もある。

23日のニューヨーク外国為替市場は、円高・ドル安が進んだ
23日のニューヨーク外国為替市場は、円高・ドル安が進んだ

高市政権発足前と比べ、10円程度円安の水準となる1ドル=158円台前半で推移していた23日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、アメリカ当局による「レートチェック」実施が伝わるなか急伸し、2円以上円高・ドル安が進んだ。

トランプ政権によるヨーロッパへの追加関税方針は撤回され、今週27日~28日のアメリカFOMC=連邦公開市場委員会は、政策金利の据え置きを市場がほぼ見込んでいて、円ドル相場についてのアメリカ側の材料は一巡した格好だ。

「日米が足並みをそろえて円安を止めようとしている」というメッセージが発せられたとの受け止めが広がる一方で、消費税減税というテーマがあるうちは円売り圧力は衰えないとの見方は根強い。介入の可能性をにらみながら円相場は荒い値動きが続くことになりそうだ。
(フジテレビ解説副委員長 智田裕一)

智田裕一
智田裕一

金融、予算、税制…さまざまな経済事象や政策について、できるだけコンパクトに
わかりやすく伝えられればと思っています。
暮らしにかかわる「お金」の動きや制度について、FPの視点を生かした「読み解き」が
できればと考えています。
フジテレビ解説副委員長。1966年千葉県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学新聞研究所教育部修了
フジテレビ入社後、アナウンス室、NY支局勤務、経済部にて兜・日銀キャップ、財務省・内閣府担当、財務金融キャップ、経済部長を経て、現職。
CFP(サーティファイド ファイナンシャル プランナー)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、農水省政策評価第三者委員会委員