職人の技とAIによる最新技術で、個性的な刺しゅうアクセサリーが誕生した。
ユニフォームの刺しゅうを手掛ける企業が独自の技術を生かし、自社製品を世界に売り込む挑戦が始まった。
わずか1グラムに込めた職人の技
個性的なピアスやイヤリング。刺しゅうの技術を生かした「RACCAN(らっかん)」だ。
童話に出てくるお姫さまのドレープ、野の花、音のリズムまで刺しゅうで表現する、個性的なアクセサリーブランドだ。
大ぶりで華やかな見た目ながら、刺しゅうのため、重さは約1グラム。非常に軽いのが特徴だ。
デザインは全部で63種類。1組4400円~5500円で販売されている。
得意の“刺しゅう”を生かして「待つ」から「作る」へ
作っているのは、長崎県西海市にある「山﨑マーク」だ。
「RACCAN」は、山﨑マークが初の自社ブランドとして立ち上げた。
1978年創業。学校や企業のユニフォームの刺しゅうを強みとし、Tシャツやグッズのデザイン、製作を手がけてきた。
「今までは会社で待って、お客さんから仕事をいただいて加工するのが普通だったが、"RACCAN"は自分たちが作って自分たちが売る」と、山﨑秀平社長は語る。
従来の加工の仕事から新たな価値を生み出そうと、得意の刺しゅうを生かしたものづくりに挑戦したのだ。
職人の技とAI(人工知能)の融合
手がかかる刺しゅうの作業はAIを導入し、自動で刺しゅうを行っている。
職人でなくても安定して細かい柄をきれいに縫うことができる。
まずはパソコンでの作業。デザイナーから届いたデータをもとに、糸をどう動かすか設計図を組み立てる。大切にしているのは「刺しゅうの手縫い感」だという。
縫う向きを変えて重ねていくことで、刺しゅうならではの立体感が生まれる。
何度も試行錯誤して糸の動きを決める。
RACCANのために導入した自動刺しゅう機には、AI=人工知能が搭載されている。
糸が切れないように縫う力の強さを調整してくれる。
仕上げは職人の仕事
自動刺しゅう機を使うことで、高速なうえに、ミスや糸のロスも少なく、生産性が向上した。
手刺しゅうでは1日数個が限界だったところを、1日で140組280個ほど作ることが可能になった。
ベースの不織布をお湯で溶かすことで、刺しゅう部分だけが残り、完成形が見えてきた。
この手法でレースのような透かしモチーフも製作しているが、人の手でしかできない工程もある。布が残っている穴を一つ一つきれいに通し、余分な糸を短く切る仕上げは、職人の目と手先が頼りだ。
仕上げを担当する本山友梨さんは「時間がかかるし、一番重要な作業」と、ていねいに作業を進める。
イヤリングやピアスのパーツを取り付け、完成。マットな質感ながら発色がいい糸を厳選していて、どれも糸の表情が際立つデザインだ。
職人のていねいな手仕事とAIの最新技術を組み合わせて生まれた、唯一無二のアクセサリーができ上がった。
たった1つで魅力的な「スーパーアクセント」に
ブランド名「RACCAN」は、書道などの作品に押す印鑑「落款(らっかん)」に由来している。
人を書に見立てたときに、1個あるだけでその人が引き立つようなアクセサリーになってほしいという思いから名付けられた。
山﨑社長は「つけることで、その人がより魅力的に見える"スーパーアクセント"になってほしいという思いを込めている」と説明する。
2025年、RACCANはデザイン性の高さが評価され、「長崎デザインアワード」の大賞に選ばれた。
オンラインショップを中心に各地の期間限定ショップで販売し、2025年秋に中国・上海や台湾のイベントに出店した際は「このような商品は初めて見た」と反応は上々だった。
「これが私たちの技術を使った製品だと自信を持って出せる初めての商品なので、もっと刺しゅうアクセサリーのよさが伝わる活動を続けていきたい」と、山﨑社長は意欲を見せる。
「頼まれたものを作る」から「自分たちで考えた商品を売る」へ。職人たちの技術と思いが詰まった「RACCAN」は、長崎から世界へ、刺しゅうの魅力を届けていく。
(テレビ長崎)

