日本有数の漁獲量を誇る水産県・長崎で課題となっているのが、海藻が急激に減って、魚介類が生息できなくなる磯焼けだ。
対馬市の水産会社が磯焼けを防ごうと、ユニークな取り組みをしている。

進む“海の砂漠化”

海底を見てみると、岩場が露出していて、海藻がほとんど生えていない。

“海の砂漠化”と呼ばれる磯焼け
“海の砂漠化”と呼ばれる磯焼け
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海藻が急激に減少し、魚介類が生息できなくなるこの現象が、長崎県の沿岸でも深刻化している。

今、海中をのぞくと「ガンガゼ」しか見えない

リアス海岸が広がる対馬市美津島町は、アワビやサザエなどの好漁場として知られてきた。

対馬市美津島の浅茅湾
対馬市美津島の浅茅湾

しかし、最近は状況が変わってきている。

丸徳水産の犬束祐徳さんは、「今、海中をのぞくとガンガゼしか見えない」と語る。

犬束祐徳さん
犬束祐徳さん

海藻も小さい魚もいない、サザエ、アワビももちろんいない、エサがないから、というのが現状だ。

“海の砂漠化”といわれる磯焼けだ。

海藻が消えて岩場が露出
海藻が消えて岩場が露出

磯焼けは、長崎県内では1980年ごろから五島や対馬東部の沿岸で見られるようになった。

海藻の減少はデータにも表れている。

10年で激減
10年で激減

対馬管内漁協の水揚量モニタリング結果によると、ヒジキの水揚げ量は、2014年は約205トンだったが、2024年にはわずか0.07トンへと激減。
アワビも、2014年は約48トンあったが、2024年には0.18トンにまで落ち込んだ。

1匹でも駆除することが藻場が増える要因になる

磯焼けの原因の1つは魚による食害だ。

イスズミ
イスズミ

近海で取れる「イスズミ」は、ヒジキやワカメなど、やわらかい海藻を食べるため「食害魚」と呼ばれている。

イスズミをさばくと…
イスズミをさばくと…

さばいてみると、胃の中から約130グラムもの海藻が出てきた。

胃の中から海藻が
胃の中から海藻が

丸徳水産の犬束徳弘社長は、「1カ月でいうと1匹で3キロ食べる計算で、これが100匹、200匹になるとかなりの量の海藻が消失する」と、その深刻さを指摘する。

犬束徳弘社長
犬束徳弘社長

1匹でも駆除することが、将来的に藻場が増えることにつながる。

駆除したイスズミをどう活用するか考えた末、犬束祐徳さんの母・ゆかりさんはグルメを生み出すことにした。

駆除したイスズミの活用法は
駆除したイスズミの活用法は

イスズミは臭いが強く食用には向かないと漁師から敬遠されてきたが、ゆかりさんは内臓をていねいに取り出し、特別な調味料を加えることで課題をクリア。

イスズミで作った特製メンチカツ
イスズミで作った特製メンチカツ

イスズミを特製のメンチカツに仕上げた。これぞ「食べる磯焼け対策」だ。

犬束ゆかりさん
犬束ゆかりさん

ゆかりさんは、「イスズミが駆除されて捨てられていると聞いたとき、非常にもったいないと感じ、魚がとれないならとれているものを使えばいいと考えた」と語る。

このメンチカツは、2019年に行われた全国の魚の祭典「Fish-1グランプリ」で見事グランプリを獲得。

グランプリ受賞
グランプリ受賞

今では地元の学校給食に採用されるほどの人気メニューとなり、「食べる磯焼け対策」が広がっている。

作ればいいじゃんという考えから「藻場ランド」を作ってしまった

対馬市では、海藻が密集して生える「藻場」の再生にも力を入れている。

国の支援を受けながら海藻の種や苗を放流する活動などを2013年から続けていて、犬束さんもその成果を感じ始めているという。

アマモ
アマモ

「アマモという水草がたくさん増えた、この1年前ぐらいから急に」と、犬束さんは目を輝かせる。

イカの卵(撮影:犬束徳広社長)
イカの卵(撮影:犬束徳広社長)

アオリイカの産卵が増えれば漁業もよくなり、そういう循環を作れるといいと期待を語る。

さらに丸徳水産では、観光客向けのツアーも展開している。
その中で犬束さんが取り組むのが海の公園「藻場ランド」作りだ。

藻場ランドを作りたい
藻場ランドを作りたい

浜に打ち上げられた海藻を回収し、網で仕切った入り江に植え付けることで、食害魚の侵入を防ぎながら藻場を人工的に復活させようという新たな挑戦である。

藻場の再生へ
藻場の再生へ

「磯焼けの状態を案内することはできるが、海藻が生えているところは案内できないんですよ、じゃあどうしようってなったときに、あ、作ればいいじゃんという考えから「藻場ランド」を作ってしまった」と、犬束さんは笑いながら語る。

海藻を守り漁業を未来につなぐ挑戦

5月7日には、鈴木憲和農林水産大臣が対馬市を訪問し、こうした取り組みに強い関心を示した。

鈴木農水大臣も関心を寄せる
鈴木農水大臣も関心を寄せる

鈴木大臣は、結果として藻場が復活できているという話なのですばらしいと思うし、これからも応援したいと述べた。

犬束さんが目指すのは、藻場ランドをさらに大きくして、イスズミやアイゴも共存でき、海藻も共存できる、小魚も人間も共存できる場所だ。

挑戦は続く
挑戦は続く

海藻を守り、地域の漁業を未来につなぐ。対馬はユニークな磯焼け対策を通して、海と人との新たな共生の形を模索し続けている。

(テレビ長崎)

テレビ長崎
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