新年を迎え全国の神社が初詣の参拝客で賑わう中、各地の神社では、今、深刻な人手不足に直面している。特に、地方では、知恵を絞り、あの手この手で他の地域から“即戦力”となる人材確保を目指している。取材した。
“奇跡”の鳥居再建も悩みは人手不足
福岡市西区にある『姪浜住吉神社』。毎年、初詣には地域の人達を中心に3万人ほどが訪れる。創建は、約1300年前の奈良時代。

2005年には、福岡県西方沖地震でシンボルの大鳥居が倒壊する被害を受けたが、“神様のご加護”で復興したことでも知られている。

神様のご加護とは、なんと、宮司の菊池友久さんが、被災後に出演したテレビ番組『クイズ$ミリオネア』で全問正解を果たし、賞金1000万円を獲得。

その賞金で、被災した鳥居を見事、再建したのだ。

「20年前の2005年に、『クイズ$ミリオネア』に出演させていただき、パーフェクトを取った時の小切手です」と話す菊池さん。当時を思い返しながら記念の“小切手”を記者に示してくれた。

これまで様々な苦難を乗り越え、地元の人達に親しまれてきた姪浜住吉神社だが、最近、宮司の菊池さんを悩ませているのが、深刻な人手不足だ。

地域に根差した神社として、普段の祈願に加え、毎月のように祭りを開催しているが、神社に常駐しているのは、菊池宮司夫妻と非常勤職員の僅か3人。菊池さんが還暦を迎えることもあり、後継ぎを見つけなければ、今後の運営が難しくなると危機感を強めている。
「神主募集」資格持つ“即戦力”歓迎
人手不足に悩む菊池宮司が踏み切ったのが、『神主の公募』だ。『神主募集』の貼り紙には、「神主として活躍下さる方を募集しています」と書かれている。

募集要項をよく見ると、即戦力となるように「『神職資格』を持つ30代までの男性。初任給は20万円から」とある。

更に、『待遇・福利厚生』の詳細は、以下の通り。
・昇給(2年に1回、人事評価による)
・賞与(年2回支給、神社業績による)
・保険(健康保険、雇用保険、労災保険)
・年金(厚生年金)
・交通費支給(実績精算、上限1万5000円)
『仕事内容』も以下の通り具体的に記されている。
・祈願、祭典、年中行事の対応(正月、夏越、七五三などの準備)
・授与所対応(授与品や御朱印の頒布)
・海洋散骨対応(ご相談・申込対応、顧客管理など)
・境内美化(境内の清掃)
・その他事務など
最近、特に人材確保に重要な『休日休暇』についても以下の通り。
・年間休日110日
・原則月8日休み(シフト制)
・有給休暇(取得時期は要相談)
・慶弔休暇
*年末年始、年間行事期間は勤務必須
『求める人物象』は、「前向きで人と接することが好きな方」「神社の可能性を広げたいとお考えの方」と明確だ。

貼り紙を見た地元の人も「神主って、求人しているんだ。びっくり」と驚きを隠せない様子。そして、「この神社があって欲しいから、誰かいい人がいたら…」と地域の氏神様を守ってくれる新たな人材と「ご縁がありますように」とまさに神頼み。

神職の人手不足は、姪浜住吉神社だけではない。全国的にみても深刻で、神社本庁に登録されている全国約7万8000社の神社の神職は、約2万1000人。福岡でも約3300社に対し、神職は、その5分の1の約600人ほどしかいないのが現状なのだ。

そもそも神職の資格を取るには、國學院大学(東京・渋谷区)や皇學館大学(三重・伊勢市)の専門学部、もしくは全国に6カ所ある養成所に2年間通う必要がある。残念ながら九州には、神職を育成する教育機関がないため、先祖代々、子孫が神社を受け継ぐケース以外、他所から九州の神社に“就職”する人材は、少ないのが現状だ。そのため菊池宮司も人材探しには、ホトホト頭を抱えている。
遂に 応募者現る 更に“男性”を
少子化の影響もあり、神職のなり手が減少する中、「どうにか後継者が現れてほしい」と菊池宮司は、藁にも縋る思いで応募者を待っている。「できれば2人くらい、春頃までに来ていただければ最高かな」と期待を抱く菊池宮司。「いい人来そうですか?」と記者が尋ねると、「それは『神のみぞ知る』ことだと思うので、来てくれるように私も一生懸命祈願したいと思います」と真剣な面持ちだ。

果たして、姪浜住吉神社に新しい“神主さん”は、現れたのだろうか?その後の状況を尋ねると、約1年前から『男女問わず』で募集をかけたところ、2025年夏に、神職資格を持つ女性から応募があったという。その女性は、多忙な時に手伝ってもらう『助勤』として採用され、正月などの行事の際に来て、祈願などを担当してもらっているとのこと。菊池宮司は、「できれば力仕事なども多いので、男性の神職をあと、2人ほど採用できれば」と期待を寄せている。

古くから日本の生活に根差し、地域の人々の心を育んできた神社の存在を今後も絶やすことなく、いかに受け継いでいくか。企業と同様、働きやすい“職場づくり”や積極的な人材育成が大きなカギとなりそうだ。
(テレビ西日本)
