子育て世帯の「今すぐ助けて」という切実な声に応える新しいサービスが注目を集めている。電話一本で最短1時間から駆けつけるベビーシッター派遣サービスだ。24時間365日対応で、追い詰められた保護者の心のケアを第一に考える姿勢がSNSで話題になっている。

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日本の2024年の出生数は68万6061人と過去最少を更新していて、日本総合研究所の試算によると2025年はさらに減っておよそ66万5000人になる見通しだ。こうした中、誰もが子育てに対して希望や安心を持てるようにと、孤独な子育てをなくすための取り組みを取材した。

母親の涙ながらのSOSと寄り添う相談員

母親:
抱っこしたら泣き止むと分かっているけれど、今は何もできなくて…。

背景で赤ちゃんの泣き声が響く中、号泣しながら電話をかける母親。

相談員:
勇気を出してお電話してくださってありがとうございます。今まで本当にたくさん頑張ってきたと思うので、今は本当にママさんの心第一で。

相談員が優しく声をかけ、その1時間後にはベビーシッターが母親の元に駆けつけたという。

困ったときに頼れる“もうひとりの大人”を届けるサービス

24時間365日、電話またはLINEからの連絡で最短1時間から駆けつけるベビーシッター派遣サービス「育児119」。生後0カ月から小学6年生の子どもがいる家庭を対象にしていて、利用料金は1時間当たり1800円からだ。登録作業もシンプルで、入会費や年会費も不要だ。現在は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、福岡県でサービスを展開している。

このサービスを運営する会社の代表は、7歳と3歳の2人の子どもの父親である石黒和希さん。夜泣き対応など一人で子どもをみていた時に、「ちょっと誰かに来てほしい」「分かってくれる大人がそばにいるだけで心の持ちようが違う」と感じた経験が、サービス立ち上げのきっかけになったという。

「誰か来てほしい」に寄り添う大人たち

24時間365日の駆けつけは難しく思えるが、石黒代表によると、マッチング率は90%以上と高い水準を保っているという。それを可能としているのが、“頼ってさん”と呼ばれる育児119のベビーシッターだ。この日、川崎市のカフェに集まったのは、現役の“頼ってさん”とその活動に関心を持つ女性たち。現役の“頼ってさん”は、自身も子育て真っ最中のお母さんや保育園で働くなど普段は別の仕事をしている人も多いことが印象的だ。

現役の“頼ってさん”:
6歳と4歳の年子の子育て中で、まだまだやっぱり手が離せなくて大変ですね。ただ、他のお母さん方の『今来てほしい』『今助けてほしい』というのは私自身も思うので、同じ境遇だからこそ支え合えるんじゃないかなという風に思っています。

また、活動に興味を持って話を聞きに来た人たちの背景はさまざまで、保育士として35年の経験を持つ女性や、子どもと関わる仕事ではない職に就いたものの保育士になる夢を諦めきれず参加した女性などがいた。保育士経験者の女性は、SNSで若い母親達の声を見て、育児119に興味を持ったという。「こんなに大変な思いをしているお母さんがたくさんいるんだと知り、何かできることがないかなと思った。子どもも大きくなり、今度は自分が恩返しする番」と話す。

2024年7月に17人だった“頼ってさん”は、SNSなどを通じて登録者が増え、2025年11月には550人になった。相談件数も2025年1月の月8件から、11月には216件へと急増しているという。

神奈川支部のリーダー(3人の子どもの子育て中):
自分が行ったことで『気持ちが救われた』という言葉を聞くと、本当に行って良かったなって思います。駆けつけた時に泣いているお母さんとかもやっぱりいるんですけど、私が帰る頃にはちょっとすっきりして、『また育児頑張れそうです』って言ってくださることも多いので、苦しい気持ちを救えたなとやりがいに感じていますね。

“ちょっと来て”に応える頼ってさんの現場

“頼ってさん”のなおこさんは現役の看護師だ。子どもが高校2年生と小学6年生になって少し手が離れたことから、「誰か必要としている人がいるなら、その時間を使いたい」と参加したという。

なおこさん:
私は割と子供が小さい時から保育園にお世話になっていたので、社会との繋がりがあり、困ったら相談できるところがあってすごく助けてもらっていたんですけど、その助けがなかったら絶対にできなかったと思います。なので、実家が遠方の方とか、なかなかパパが休み取れないとか、色んな環境があると思うんですけど、家族じゃなくてもいいところを私たちがサポートできるといいなと思っています。

この日訪れた家庭の1歳4カ月の男の子の母親は、引っ越しの片付けが進まず、このサービスを利用した。

母親:
今日引っ越し2日目なんですけど全然進まないです。一緒にいると棚から物を引っ張っちゃうんで、また片付けての繰り返しで。

なおこさん:
ダンボールに登ったり、どこかに隠れたり一番楽しくなっちゃう時期だと思うので。そんな時に怪我の心配しながらだと、なかなか片付けも進まないですよね。

自分の子ども達が同じくらいの頃を思い出したなおこさん。「当時は終わりが見えなかったんですけど、今思えばあっという間でしたね。終わるときは一瞬だなって感じです」と話した。

その後、片付けを終えて迎えに来た男の子の母親は「引っ越しの片付けがだいぶ進みました。夫も遅くまで帰ってこない時もあって、一人でやるとなると大変なので、子どもを見ていてくれてとても助かりました」と笑顔を見せた。

なおこさん:
育児をしていると、誰でもいいから大人が一人いてくれたらと思う時があると思うので、そんな時に『ちょっと来て』って気軽に呼んでもらえると嬉しい。それで少しでもパパやママに余裕ができるといいなと思っています。

子育てを一人で抱え込まない社会へ

石黒代表:
共働きの増加や核家族化が進んでいる中で、孤立や困っていたりする保護者の方が多いなというのは、このサービスを始めてからより一層感じています。今子育てしている方も、これから子育てする方も、子育てに対して希望や安心を届けられる存在になりたいと思います。

現在、25都道府県で支部を立ち上げているという育児119。また、東京都では、ベビーシッター認定事業者にも申請をしていて、許可が下りれば東京都のベビーシッター補助の対象として保護者の金銭的な負担も軽減できるようになるという。石黒代表によると、将来的には全国47都道府県、誰もが使える“子育てのインフラ機能“として母子手帳に載るサービスを目指しているということだ。

石黒代表:
皆様、本当に一生懸命、最善を尽くして、目の前の子供を愛して守られていると思うんです。子育ては幸せな反面、「辛いなぁ」とか「しんどいな」とか「ちょっと子供から離れたいな」という感情は、一生懸命やっているから故に生まれる感情であって、それを罪悪感として抱えることなく、頼り、頼られるような社会を実現したいと思っています。育児119が何かあった時に頼れる先があるという風に、“心のお守り”として思っていただけたら。

取材を通して感じたのは、このサービスが「便利さ」を提供するだけでなく、支える人たちの共感と支え合う心によって成り立っているということだ。子育てを一人で抱え込まず、必要なときに誰もが安心して頼れる社会へ。そんな支援の輪が、これからもっと広がっていくことを期待したい。
(フジテレビ社会部文部科学省・こども家庭庁担当 松川沙紀)

松川沙紀
松川沙紀

フジテレビ社会部 文部科学省・こども家庭庁担当