OHK岡山放送で平日午後6時9分から放送中の「OHKLiveNews」。12月26日(金)放送の年末SPの中で、サッカーJ1・ファジアーノ岡山の「J1元年」を振り返りました。
毎試合、大勢のサポーターで赤く染まり、熱気に包まれたスタジアム。新たな歴史のはじまりとなりました。
ホーム戦19試合、延べ27万7154人が熱狂した「J1元年」。
2月の開幕戦、記念すべきJ1初ゴールを決めたのは田上大地。
「J1初挑戦の初戦ということで、ちょっと堅くなるかなと思ったんですけど、でも、あのゴールでちょっとみんなを落ち着かせられたかなと思います」
生え抜きフォワードの木村太哉にもゴールが生まれ、J1初陣を2対0で勝利したファジアーノ。シーズン序盤から、快進撃を繰り広げます。
4月のFC東京戦では田部井涼がこのゴール。
(実況:岸下恵介アナウンサー)
「田部井のシュート!」
(解説:武田修宏さん)
「素晴らしいシュート。しっかりとミートしてボールが落ちていきました」
このゴールはチーム初のJ1月間ベストゴールに選ばれました。
次の試合は、新たな歴史のはじまりです。サンフレッチェ広島との「中国ダービー」。J1で3回の優勝を誇る隣県チームを相手に新加入の佐藤龍之介が値千金のゴール。ファジアーノが歴史的な勝利を収め、J1初の連勝です。
(ファジアーノ岡山 39 MF 佐藤龍之介選手)
「たまらない。サッカー選手の醍醐味じゃないが、この瞬間のために、みんなやっていると思うので、何回も味わいたい」
2025シーズンチームトップの6ゴールを挙げた佐藤。6月にはファジアーノの選手として初めて代表デビューを果たし、Jリーグのベストヤングプレーヤー賞も受賞するなど躍進を遂げました。
攻撃の中心選手は他にも。マエストロの異名を持つ江坂任。多彩なパスからチームトップの5アシストを記録したほか、自身も佐藤に並ぶ6ゴールを挙げ攻撃陣をけん引。初ゴールの時にはサポーター待望のゴールパフォーマンスも披露しました。
(江坂任選手)
「皆が期待してくれていた分、お待たせしすぎたが、歓声もすごかったので素直にうれしかったですね」
最前線の重戦車はJ1を席巻しました。ブラジル人フォワードの99番・ルカオ。2025シーズンは全38試合に出場し5ゴール。ド迫力のプレーでスタジアムを沸かせました。
8月には3連勝を飾り順位は1桁の9位に。そこから10試合、白星から遠ざかりますが、守護神・スベンド ブローダーセンを中心に守りを固め、少しずつ勝ち点を積み上げていきます。
そして、リーグ戦2試合を残してJ1残留が確定。12月7日のリーグ最終戦では江坂のゴールも生まれ、11試合ぶりの白星。J1元年を13位で締めくくりました。
(岡山サポーター)
「夢みたいな状況。昔はガラガラだった」
「初めて今季から試合を見た。すごくはまってしまって、けっこう楽しかった」
(ファジアーノ岡山 木山隆之監督)
「来季もJ1だ!」
担当はシーズンを通してチームを取材した篠原聖記者です。
(長尾龍希キャスター)
「J1初挑戦で13位、そして残留」というのは素晴らしい戦いぶりだったのではないでしょうか。
(篠原聖記者)
「ファジアーノは2024シーズン、J2・5位からプレーオフを勝ち上がってJ1に昇格したので、言わばJ1では「1番下」のチームです。良い意味で予想外の結果でしたね。
そして、それ以上に驚きの数字を叩き出したのが入場者の数です。ホームゲームの1試合平均は1万4587人とJ2の2024シーズンから約1.6倍に増えています。
「JFE晴れの国スタジアム」の収容可能な人数は約1万5500人。そのうち、ファジアーノを応援できるホームエリアの人数は1万3000人ほどで、2025シーズンはクラブ史上初めて全ての試合でこのチケットが完売しました」
(長尾龍希キャスター)
「私も観戦しようとしたのですが、チケットがとれませんでした」
(篠原聖記者)
「即日完売となった試合も多かったということです。このようにかつてない盛り上がりを見せる一方で、「見たくても見られない人が多い」という課題が浮き彫りとなりました。それを象徴する出来事が2025年7月のホームゲームでありました。
7月5日の「中国ダービー」2戦目。スタジアムには収容上限いっぱいの1万5451人が来場し、場外で初めて行われた無料のパブリックビューイングにも、大勢のサポーターが押し寄せました。
(篠原聖記者)
「2000人の定員に対し6000人の応募がありました。岡山だけでなく広島からも・・・」
鳴り物を使った応援は禁止で、スタジアムの中とは違う雰囲気での観戦です。参加したサポーターからは不満の声が聞かれました。
(参加した人は…)
「やっぱりスタジアムがいい。全然違う。応援の声は出せないし、タオル巻きの応援ができない」
「とても楽しかったが、スタジアムでみんなで応援できる方が一番良いので新しいスタジアムができるのを願っている」
(長尾龍希キャスター)
「やはり新しいスタジアムを求める声が聞かれましたね」
(篠原聖記者)
「日に日に高まっていきました。6月にはサポーター団体などでつくる「新スタジアムの整備を推進する会」が立ち上がり、3カ月間の署名活動で、50万9138人分を集め、現在のスタジアムを運営する岡山県に提出しました。
(長尾龍希キャスター)
「こちらもすごい数字ですよね。どれくらい多いものなのでしょうか」
(篠原聖記者)
「京都のスタジアムを整備する際に行われた署名活動の約48万人分を超え、同様の署名では全国最多です。また「約7割が県内在住」ということで、署名を受け取った伊原木隆太知事は「民意が可視化された」と評価しています」
12月に入って整備に向けた議論が一気に加速しました。
12月24日、岡山県庁を訪れたのは岡山大学の那須保友学長が代表を務める「推進する会」のメンバーです。伊原木知事と意見を交わし、県が主体となって協議を進めるよう求めました。これに対し、伊原木知事は2026年の早いうちにも整備に関する協議体を設置し、テンポよく協議を進めていく考えを示しました。
(新スタジアムの整備を推進する会 那須保友代表)
「とにかく早く「造る」か「造らない」か決めてほしい。具体的に場所や規模を検討すると知事が言っていたが、多くの県民が決定を待っていると思う」
(岡山県 伊原木隆太知事)
「(協議体で)多くの可能性を絞り込んで、これなら県民や承認権限のある県議会に提出できる具体案が出てくることを今の時点で期待している」
(長尾龍希キャスター)
「新年は議論がさらに加速しそうですね」
(篠原聖記者)
「もちろん整備には多額の税金が投入されることから、しっかりと協議を重ねる必要があります。ですが、ファジアーノのクラブ理念は創設当初から変わらない「子どもたちに夢を」。2025年は「未来の子供たちにつなぐ議論のはじまり」だったと言えるのではないでしょうか。