2025年のさまざまな出来事を振り返る「ニュースの軌跡2025」。1回目は異常な出没を繰り返したクマについて。
北海道民を恐怖に陥れた被害の数々を振り返る。
クマの出没や被害が社会現象に
毎年恒例の「今年の漢字」。1年の世相を表す1文字に選ばれたのは「熊」だった。
全国的にクマの出没や被害が社会現象となった2025年。
北海道で初めて人がクマに襲われケガをしたのは、4月3日のことである。
ハンターが美唄市の山で襲われ、重傷を負った。
7月には北海道南部の福島町で新聞配達をしていた男性がクマに襲われ死亡。
「『うわ、うわ』と言って腕をかまれて、そのまま茂みにいった」(目撃した人)

被害は世界遺産・知床でも。
「男性は山中で発見され病院に搬送され、死亡が確認されたということです」(川瀬雄也記者)
8月、北海道東部の斜里町で羅臼岳から下山中の20代の男性がクマに襲われ死亡した。

札幌市内にもクマ出没
クマの異常なまでの出没は札幌市内でも。
9月に西区の平和丘陵公園で、犬の散歩をしていた男性が襲われた。
北海道警によると、2025年1月から11月までの北海道内のクマの通報件数は5222件と、過去最多を記録。
これまで最も多かった2023年より1000件以上増加している。
クマに襲われ4人がケガ、2人が亡くなった。

札幌市のヒグマ防除隊の隊長を務める玉木康雄さんも驚きを隠せない。
「私も経験したことがないぐらい、クマが身近に感じられる特殊な1年だった。本当にクマの餌となるドングリがなかった。山の中に入った肌感覚で言えばドングリはゼロに近い」(札幌市ヒグマ防除隊隊長 玉木康雄さん)

「緊急銃猟」初めての実施
餌を求めて人里に出没するクマを巡って、初めて導入された制度も実行された。
「緊急銃猟」である。
自治体の判断で市街地での発砲を可能とするもので、2025年9月から導入された。

10月24日、北海道内で初めて札幌市西区西野で実施され、住宅街近くに居座っていた子グマ2頭が駆除された。
札幌市の担当者は当時を振り返って。

「市街地への出没が非常に多かった印象が大きい。市街地でクマを駆除しなければならない事例も多かった。緊急銃猟の制度があってよかったと思う。速やかに対処できたのは、緊急銃猟の仕組みがあったからこそ」(札幌市環境共生担当課 坂田 一人 課長)
体重400kg近い巨大グマも話題となった。

箱わなを倒す巨大グマ
北海道北部の苫前町で箱わなを倒す巨大なクマ。
箱わなは動かないよう固定されていたにもかかわらず、いとも簡単にひっくり返されてしまう。
「こちらの箱わな、僕が押しても全く動きません」(中村真也記者)
獣害対策用の電気柵や、わななどを製造する会社である。

こちらの箱わなの重さは410kg。通常よりも小さいタイプだというが、大人2人で押してもびくともしない。
クマの力や身体能力は、どれほどのものなのだろうか。
「軽自動車をひっくり返すことができ窓ガラスも割れる。5本の爪を振り下ろしたり払うような使い方をする。人間の体が裂けてしまうくらいの破壊力がある。時速40~50kmというのは大げさではなく、本当にそのスピードを出す」(玉木さん)

苫前町の巨大グマはその後、箱わなにかかり駆除された。
どのようにして捕獲されたのだろうか。

「ここにわなが仕掛けられて引っ張ると完全に閉まり、人の手が少し通るくらいで出ることはできません」(中村記者)
相次いだクマの目撃情報も、冬になり落ち着いてきた。
しかし、油断は禁物だ。

「眠りが浅いかも?」冬もクマに注意
クマが餌不足の状態で冬眠に入ったこの冬は特に注意が必要だという。
「クマが冬眠に入っている時期ではあるが、眠りがもしかしたら浅いかもしれない。今季は『冬だからクマは大丈夫』と思わず、準備や警戒をして冬遊びを楽しむことが必要」(玉木さん)
クマを取り巻く環境はどうなるのだろうか。
