シリーズでお伝えしている年末回顧。議会で予算案が可決され、本格的に動き出す、岡山市の新アリーナ構想についてです。

約280億円に上る建設費用は誰が負担するのか。資金集めの行方や今後の課題など、事業化に向けて揺れた1年を振り返ります。

◆11月定例岡山市議会で新アリーナ関連予算案が可決 事業化へ

「賛成の方ご起立願います。起立多数であります。よって委員長報告の通り決定いたしました」

12月17日に閉会した11月定例市議会で、建設予定地の地質調査や周辺道路の整備費用などを盛り込んだ新アリーナ関連予算案が可決されました。

◆当初5000席が最大収容人数1万人に…280億円に膨れ上がった建設費用に「経済界に応分の負担を」

(岡山市 大森雅夫市長)
「アリーナ整備事業については、われわれとしては事業化を決断した」

岡山市の大森雅夫市長が新アリーナ構想にゴーサインを出したのは11月末。

経済界やスポーツ界の要望を受け、岡山市が北区野田の市の土地に建設を計画している新アリーナ。適正な規模を探ってきた岡山市は、当初、客席数を5000席以上としていましたが、その後、7000席から8000席、最大収容人数は1万人に拡大しました。

それに伴い、建設費用も約145億円から280億円に膨れ上がりました。

(岡山市 大森雅夫市長)
「経済界に応分の負担をお願いしたい」

岡山市は280億円のうち、国の補助金と借金にあたる起債でそれぞれ90億円。残りの100億円のうち、50億円を市の一般財源、50億円を企業からの寄付金で賄う想定です。

借金の返済についても、市の財政上、問題ないとしています。

(岡山商工会議所 松田久会頭)
「形の見えないものに対して協力してくれというのは結構難しく、お願いをしているが苦戦している」

2025年度、岡山市は、アリーナの必要性を訴える動画やパンフレットを作成し、市長自ら企業を回って、寄付金の協力を呼びかけました。

◆市長選で新アリーナ反対訴える新人を破り4選果たした大森市長 事業化に向けて「知事との協議の場を」

2025年10月の市長選挙で4選を果たした大森市長は、新アリーナの事業化に向けて動きを加速させます。

(岡山市 大森雅夫市長)
「私と知事の協議の場をもってもらうよう要請する文書を担当者が県庁の担当者に持参した。ぜひ応じてほしい」

岡山県との協力を求める声が多かったことや、県に参画を断られた2024年5月以降、伊原木隆太知事と話ができていないことから、改めて、県の意向を確認する必要があると考えたのです。

◆伊原木知事との「対面協議」かなわず…市単独での事業化を決断した理由は「企業からの寄付のめど」

〇10月28日
(竹下美保記者)
「午前9時半前に県の担当者が岡山市のスポーツ文化局を訪れました」

回答期限が迫る中、訪れた県の担当者が伝えたのは。

(岡山市スポーツ振興課 吉田武生課長)
「現時点でも去年と状況は変わっておらず、県としては現時点では新アリーナの整備に参画する判断には至らなかったいう回答」

結局、対面協議はかなわず、岡山市は市単独の事業として進めることを決断しました。

(岡山商工会議所 松田久会頭)
「約6割くらいのめどが立った、50億円のうちの30億円近くは見えてきた」

(岡山市 大森雅夫市長)
「事業化されれば寄付するという企業もあった。早めに事業化決めれば寄付も早くもらえるのではないかと思い現在に至った」

◆「アリーナ需要予測が極めて甘い」専門家は建設費の増大とリスクの“負担”に対する市の戦略を疑問視

今後の課題を、専門家はこう指摘します。

(岡山大学 中村良平名誉教授)
「建設途上で建設費が上がる、この負担をどうするか大きな問題。上がっただけの価値を持たせるためのソフト戦略が必要。はっきり言ってそれが今、岡山市に一番欠けていること」

2025年にオープンした香川県の「あなぶきアリーナ香川」など、全国各地でアリーナ建設が進んでいます。その中から、岡山市が選ばれる魅力を生み出すことが重要だといいます。

(岡山大学 中村良平名誉教授)
「岡山市のアリーナの需要予測が極めて甘い。リスクをほとんど考えていない。(運営)業者は厳しい目で見るので、どれだけ自分たちがリスクを負わなければならないのか考えて、本当に入って来るかどうかが次のハードル」

◆岡山市でなぜ「新アリーナ」が欠かせないのか 市の担当者が懸念する“大きな損失”とは

岡山市の担当者は、岡山の活性化のためにも、地元のプロスポーツチームが活躍するためにも新しいアリーナは欠かせないと訴えます。

(岡山市スポーツ振興課 吉田武生課長)
「なかなかわれわれが目指しているものが理解してもらえない、アリーナとは何か、独立採算での運営を目指していること。何より必要性。(プロスポーツチームが)継続して活躍したいとなれば県外に行かざるを得なくなる、これは大きな損失」

市は2025年度中に、予定地周辺の住民説明会を開くことにしています。順調にいけば2027年度中には、アリーナの運営事業者が決まる見込みで、7年後の2032年度の完成を目指します。

(竹下美保記者)
「この場所に建つ新しいアリーナが、岡山市にできて良かったと思えるように、どう税金が使われるのか、施設をどう生かしていくのか、しっかりと関心を持って見届けなければなりません」

岡山放送
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