労働人口の減少が課題となる中、人とAIが協力して交通誘導を行う新たな取り組みが始まっている。12月18日、AIが信号を制御し、人が安全を確認する「ハイブリッド警備」の視察会が広島・東広島市で開かれた。

無線連絡より速い信号切り替え

道路脇に設置されたのは、一見すると工事現場によくある仮設の信号機。しかし、車を誘導しているのは人ではなく人物映像だ。AIが交通状況を判断し、信号と連動して「GO」や「STOP」を表示する。

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片側交互通行そのものを担うのはAIだが、すべてを任せきりにするわけではない。
警備を手がけるシナジーコミュニケーションズの警備事業部・吉本義正部長は「AIが片側交互通行を行い、人が安全の担保を補っている」と説明する。

AI交通制御システムとはどのような仕組みなのか。
信号機にカメラと機器が取り付けられ、端末同士が通信して信号を調整。交通量に応じて車が多い側の青信号を長くしたり、両側に車がいない場合はいったん双方を赤にして、先に車が来た側を青に切り替えたりする。
視察会の会場では、実際に車の流れに合わせて信号が切り替わり、ドライバーがスムーズに進行する様子が確認できた。人が無線で連絡を取る場合、応答に5~10秒ほどかかることもあるが、AIは1秒間に複数回通信できるため、信号の切り替えの速さも大きな強みだという。

警備員1~2人で回せる現場へ

とはいえ、想定外の事態が起きた場合はどうなるのか。

視察中、無線機から「逆走している車がいます」との声が響いた。AIが異常を検知すると、音声で無線機に知らせ、現場の警備員が即座に対応できる仕組みになっている。

このシステム導入の背景には、交通誘導の現場が抱える深刻な課題がある。
これまで車を止めていた「ストッパー」と呼ばれる警備員が、事故や熱中症などで命を落とすケースが後を絶たない。
吉本部長は「年間20~30人の警備員が事故で殉職している。特に夏場は熱中症のリスクが高まっていて、システムを導入することで危険を減らしたいという思いがあった」と話す。

警備員が立って車を誘導する従来の片側交互通行
警備員が立って車を誘導する従来の片側交互通行

さらに、将来的な労働人口の減少も見据える。シナジーコミュニケーションズでは、これまで3~4人必要だった片側交互通行の警備が1人か2人で対応できるようになり、より多くの現場を回すことが可能になった。

省人化・省力化を進めながら、安全性をどう確保するか。人とAIが協力する交通誘導は、その答えの一つになろうとしている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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