永平寺町の道路では7年前から、国が車両の自動運転の普及を目指して実証実験を行っています。これに合わせて永平寺町は、自動運転をより多くの人に利用してもらおうと取り組みを進めているものの、課題もあるようです。自動運転車を使った移動サービスの現状を取材しました。
 
大本山永平寺につながる遊歩道。2018年から、この道で自動運転の普及を目指した国の実証実験が行われていて、2020年からはその一環として永平寺町は「住民の足になれば」と、地域資源を活用した事業を行うまちづくり会社と共同で、自動運転車での移動サービスを始めました。
 
永平寺町総合政策課の山村徹さんは「自動運転をきっかけに町外からも色んな人が来たり、全国のメディアに取り上げられたり、移動以外の部分も含めて地域に色んな効果を生んでいる」と話します。
 
しかし課題も。
 
今年は11月30日に最後の運行が行われ冬の運休に入りましたが、2020年のサービス開始以降、利用者の数が伸びていないのです。
 
山村さんは「停留所から病院や買い物に行く移動手段がなく、現状では住民が生活の足に使うには物足りないという声が上がっている」とします。
   
実は、移動サービスを行っているのは、遊歩道約6キロのうち、わずか2キロ。特定の条件下ですべての運転操作を自動で行う「レベル4」の自動運転区間だけです。
  
残る4キロの区間は、他の道路と交差する地点の安全性など技術的な課題があり、運転の一部しか自動にならない「レベル2」に留まっているからです。
 
「レベル4で全線の6キロを走れるような車両の開発を、運行を担うまちづくり会社が国と相談している」と山村さん。
  
そうした中、今年は利用者を増やそうと7月に新たなサービスを始めました。映像で、乗客に永平寺町の名所を紹介するサービスです。
  
山村さんは今後について「自動運転が移動手段としてだけでなく、自動運転に乗ることで得られるサービスそのものが目的になるような取り組みをしたい。自動運転の車内でサービスを受け、移動もできていたという状況に持っていけたら」と話します。
  
実際に、利用客からは「移動時間が気にならない」「観光情報が分かりやすい」といった声が聞かれたといいます。
  
同時に、安全性の向上に向けても改良が進められていて、2023年には、自動運転車が道に停められた自転車に接触する事故もありましたが、車に搭載されているAIカメラの学習量を増やして再発防止に努めたということです。
  
国は「レベル4」自動運転の移動サービスを普及させ、ドライバー不足などの社会課題の解決を目指しています。
 
そのためにも町は、より多くの人に選ばれる移動サービスを展開したいと考えています。
  
「永平寺町で作ったモデルが全国の他の地域に波及し、他の地域に役立つものになるよう、国と一緒にこれからも取り組んでいきたい」(山村さん)
 
この移動サービスは、2026年3月に再開する予定で、国や町は技術開発とサービスの双方に目を向け、来年も自動運転がもつ可能性を探ります。
   
現在、国から「レベル4」自動運転の許認可が下りているのは、全国で永平寺町を含めた9つの地域のみ。自動運転の移動サービスを全国に広げるには、現在行われている実証実験を通して先行事例を作っていくことが大切です。

福井テレビ
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