重い病気や障害がある子どもを一時的に預かる施設「こどもホスピス」。“看取り”の施設ではなく、子どものケアに追われる家族に休息と安らぎの時間を提供し、サポートしてくれる施設として注目されている。

ケア必要な子ども預かり家族を支援

小児がんなど重篤な病気の子どもや医療的なケアが必要な子どもなどを対象とする「SAGAこどもホスピス」が2025年5月、佐賀市で設立された。

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“ホスピス”というと終末期のイメージがあるが、「SAGAこどもホスピス」は“看取り”の施設ではない。

ここでは看護師や保育士が日中や夜間に一時的に子どもを預かるほか、家族から困りごとの相談を受けるなどニーズに応じて包括的に支援している。

ケアする家族に休息と自分の時間を

施設の代表を務めるのはNICUや小児科で看護師をしていた荒牧順子さん(47)。
「病気や障害のあるお子さんやご家族が自分らしく過ごせる機会を提供するというのが、SAGAこどもホスピスだと思っています」と開設した意義を語る。

SAGAこどもホスピス 荒牧順子代表:
ご家族は一生懸命ケアを頑張っている。休んでほしいし、自分の時間も作ってほしい。お仕事したいって思われているけど職場復帰がなかなか難しいという現状をどうにかしたいと思って、じゃあもう自分がやるしかないと

医療機関だけではサポートに限界

苦労して命をつなぎ、ようやく退院できた子どもやその家族が「医療的ケアができる急な預け先が見つからない」「悩みを相談できる場所がない」など、退院してからも厳しい状況に置かれている現実がある。それを知ったことがきっかけで荒牧さんはこの活動を始めたという。

SAGAこどもホスピス 荒牧順子代表:
医療機関だけではサポートの限界があると思ったので、できたら病院の外側からこういうお子さんやご家族を支えるということをしていきたいと思ったのが、いまこうやっていろいろな活動をしている原点になっている

開所日に利用の申し込みがあったのは2組の親子。このうち5歳の前川弘武くんは医療的ケアが必要で、一部を除いた食事や水分を胃ろうから注入する必要がある。

必ず1人は看護師がスタッフとして入るため保護者から引き継ぎを受け医療的なケアが可能。本人の体調や反応をみながら丁寧に対応している。

この日は入浴の依頼もあり、寝たまま入ることのできる専用の浴槽で声を掛けながら頭や体を洗っていた。

母親は「病院の預かりでは、途中で遊んでくださいとか、なかなか保育的なところはお願いしづらい」と現状を口にする。また父親も「病院でのサポートと比べると、子どもの気持ちの面でケアしてもらっている」と話す。
家族は“こどもホスピス”ならではのメリットを感じているようだ。

家族の心と体のケア 悩みの相談も

開所日に申し込みをしたもう一組の利用者は、生まれつき難病を抱えている11カ月の穂乃佳ちゃんとその両親。

通院状況や悩みを聞いたあとは家族のサポート。希望すれば親も理学療法士による全身マッサージや足湯などのリラクゼーションを受けられる。

子どもを預かるだけでなく家族の心と体のケアにも力を入れているのが「SAGAこどもホスピス」の特徴だ。

母親:
この子をいっぱい見てもらえて、親もリラックスしてリラクゼーションなど受けられてよかった
父親:
こういうところがあれば何かあった時に利用したいと思った

「サポートの幅を広げていきたい」

重い病気や障害がある子どものケアに追われている親の支えになっている「SAGAこどもホスピス」。しかし、課題もある。

SAGAこどもホスピス 荒牧順子代表:
何か利益を得ているような団体ではないので、資金面でこれからどうしたらいいかというのは最初から悩みの種

非営利の団体であるため、活動資金をいかに確保し継続的に支援をしていくかは大きな課題。荒牧さんは今後、活動を広く知ってもらい協力してくれる仲間を増やしていくことで、開所の頻度を増やしサポートの幅を広げ、より多くの子どもや家族を受け止められる体制を整えていきたいと話す。

SAGAこどもホスピス 荒牧順子代表:
一緒に参加してくれる地域の人や企業をいっぱい巻き込みながら、佐賀にはこういうこどもホスピスがあるよね、安心だよね、佐賀っていいよねって思ってもらえるような、そういう活動をしていきたいと思っています

佐賀県の他に“こどもホスピス”があるのは九州では福岡県のみで(2025年10月1日時点)、先進的な取り組みとして注目される。

サガテレビ
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