転倒して尻もちをついたり、どこかに軽く頭をぶつけた…何ともないと思っていても、頭にじわじわと出血がたまり認知症のような症状や麻痺を引き起こすことがある。その慢性硬膜下血腫の症状や早期発見のポイント、 手術による改善の実例を専門医に聞いた。
軽く頭を打った…数カ月後に発症も
慢性硬膜下血腫について話を聞いたのは、福井県済生会病院・脳神経外科主任部長の高畠靖志医師。
「転んで頭を打ったり、夜トイレに行く際に柱に頭をぶつけたりしたときの軽い頭部外傷をきっかけに、早ければ2~3週間、あるいは2~3カ月の間に頭の中に血がたまり症状が出る」といい、時間差で症状が現れるため、見逃されやすいのが特徴だという。
若い人は、痛み止めを飲んでも治まらない程の強い頭痛がするが、高齢者は「なんとなく歩きづらい」「物忘れが増えた」といった曖昧なものということもあり、さらに見逃されるリスクが高い。
進行した場合、手足のまひや意識障害を引き起こすケースもある。
尻もちでも発症の可能性
治療法は「頭に小さな穴を開けて血腫を取り、洗浄する手術」で「1週間から10日程度の入院期間で退院できる場合が多い」とする。
これからの季節、雪や氷で足元が滑りやすくなるため、春先にかけて患者が増えてくるという。
「脳は頭蓋骨の中で脳脊髄液という水の中で浮いているような組織なので、頭を打たなくても尻もちをついたりして脳が揺れると、この病気が起こる可能性がある」(高畠医師)
家族や周囲が早く異変に気づき、受診につなげることが重症化を防ぐためのポイントとなる。
高畠医師は「特に認知機能が低下している人の中には、手術によって治る認知症もある」と話す。
脳卒中を疑い検査をしてみたら、画像で血種が溜まっていたことが分かることもあるといい「その時点で、本人や家族が『1カ月前に頭を打った』『2カ月前に滑って転んだ』という話が出てくる場合がある」とし、異変を感じたら来院するよう勧めている。
表情や歩き方に異変を感じたら受診を
この慢性硬膜下血腫には、“急性”もある。交通事故などで強く頭を打ち、すぐに意識を失うようなケースで、大きな開頭手術が必要になることもある。
一方、“慢性”の方は、軽い頭のけがでも時間差で症状が出るため、見逃されやすいのが特徴。ただ、治療法としては局所麻酔で済む場合も多く、入院期間も10日前後。早く見つければ大事に至らずに済むという。
家族や周囲の気づきが、重症化を防ぐ一番のポイントとなる。歩き方や表情がいつもと違うと思ったら、迷わず医療機関を訪ねるようにしよう。
