天皇陛下の誕生日には、1年を振り返り、記者会見をされることが慣例となっている。
20年前、上皇さまが72歳の誕生日を迎えられた平成17(2005)年は、ご夫妻が初めて海外で「慰霊の旅」をされたほか、愛知万博が開催されるなど、今年の戦後80年の「慰霊の旅」や大阪・関西万博などと重なる出来事があった年だった。
今回はそのご活動をまとめた2005年12月25日放送「皇室ご一家」(第1354回 天皇陛下72歳の誕生日)を振り返る。
なお、本記事は当時のナレーションをそのまま記載。上皇ご夫妻を「天皇皇后両陛下」などと記載する。
公私で“ご多忙”の一年
天皇陛下は12月23日に72歳の誕生日を迎えられました。
この一年は、ヨーロッパ2カ国ご訪問や紀宮さまのご結婚など公私にわたって大変お忙しい年となりました。
6400人あまりが犠牲となった阪神・淡路大震災から10年。
人々の心の中には、いまだぬぐいえぬ悲しみが残っています。
《天皇陛下 おことば》
私どもは震災の悲惨さを忘れず、我が国の、そして世界の人々に災害の実情を伝え、1人でも多くの命が不慮の災害から守られる安全性の高い社会を築いていかなければなりません。
両陛下は、亡くなった人々の冥福を祈り、白菊の花を供えられました。
平成15(2003)年の前立腺がんの手術後、翌年からホルモン療法を続けられている陛下。その効果もあり、ご体調はよろしいようです。
3月19日、紀宮さまと東京都職員・黒田慶樹さんの一般の結納にあたる「納采の儀」が皇居で行われました。
さらに10月5日の「告期の儀」で結婚式は11月15日と決まりました。
愛知万博、ヨーロッパご訪問
3月24日、愛知万博の開会式ご出席。
《天皇陛下 おことば》
2005年日本国際博覧会の開会を祝し、その成功を祈ります。
「自然の叡智(えいち)」をテーマに、21世紀初めての国際博覧会となった愛知万博。当初の予想をはるかに超える、2400万人が訪れました。
開会式の後、大会名誉総裁の皇太子さまと一緒にパビリオンを回られた両陛下。7月にも、会場を訪問されました。
5月の上旬には、ヨーロッパのアイルランドとノルウェー両国を訪問されました。
20年ぶり3度目のご訪問となったノルウェーでは、両陛下の気さくなお人柄が好感をよび、訪問先での様子が、現地の新聞やテレビで大きく取りあげられました。
古都トロンハイムの魚市場での両陛下。
《魚市場でのやりとり》
陛下:
「Both are Salmon?(どちらもサーモンですか?)」
店員:
「Salmon Trout.(ニジマスです)」
陛下:
「これはアカザエビかね。A kind of Lobster?(ロブスターの仲間ですか?)」
帰国後もお忙しい日々が続きました。
両陛下は、5月5日の「子供の日」前後に、毎年都内の児童施設を訪問されています。
皇后さまのご実家の跡地に造られた公園・「ねむの木の庭」をお二人でご覧になったのは、5月24日の事でした。
戦後間もなく、荒廃した大地に緑を植えようと始められた全国植樹祭。
56回目の今年は、茨城県の水郷の街・潮来市で行われました。
戦後60年“激戦の地”サイパンへ
今年は戦後60年の節目の年にあたります。
両陛下は、6月27・28の両日、太平洋戦争の犠牲者を慰霊する為に、西太平洋のサイパンを訪問されました。
サイパンは、昭和19(1944)年の6月から7月にかけて、アメリカ軍との激しい攻防戦の末、民間人1万2000人を含む5万5000人が犠牲となった所です。
両陛下は、集団自決の舞台となったスーサイドクリフやバンザイクリフ、さらにアメリカ軍や島の住民の犠牲者を追悼するアメリカ慰霊公園で、亡くなった人々に黙とうを捧げられました。
日本の天皇が慰霊の為に外国を訪問されたのは初めての事でした。
《天皇陛下 おことば》
戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。
紀宮さまご結婚
両陛下は、今年、結婚を控えられた紀宮さまと過ごす時間を多く持たれました。
36年間、常にご一緒に暮らしてこられた紀宮さまとの残り少ない日々を大切にされました。
那須でのご静養の際は、秋篠宮ご一家もご一緒でした。長女の眞子さまは、14歳、中学2年生です。
9月22日、両陛下は都内の特別養護老人ホームへ。このご訪問は、「敬老の日」にちなんでのものです。
12月9日の「障害者の日」の前後には身障者施設もお訪ねになっています。
10月、岡山で行われた国体秋季大会での両陛下。
国体も60回目を迎えました。
両陛下が催された秋の園遊会。
紀宮さまにとって、皇族として最後のご出席となりました。
《陛下と宇宙飛行士・野口聡一さんのやりとり》
陛下:
よい成果を収められて、今後の宇宙の問題についていろいろな問題が…理解が進んできたのではないでしょうかね。
野口さん:
そうですね。あとは子供たちに宇宙の夢をどんどん伝えていきたいと思っております。
11月、紀宮さまのご結婚の準備はすべて整いました。
《朝見の儀でのやりとり》
紀宮さま:
今日までの長い間、深いご慈愛の中でお育て頂きましたことを心より有り難く存じます。
陛下:
二人で力を合わせて楽しい家庭を築き、社会人としての務めを果たしていくよう願っています。二人の幸せを祈ります。
そして11月15日の結婚式。
歴代の天皇・皇后としては初めて女性皇族の披露宴に出席されました。
この一年、多くの人々との交流をもたれた天皇陛下そして皇后さま。来年もお忙しい年となりそうです。
(「皇室ご一家」第1354回 平成17年12月25日放送)
