「オンライン診療を行っているクリニックではリモートで面談を行いますが、たいしたことは聞きません。すべてのクリニックがそうだとは言いませんが、『どれくらい痩せたいの?今飲んでいる薬は?』といった簡単な質問だけで、すぐに処方してしまうところがほとんどなのです。

もし私だったら、日々の食事量や運動量を聞いて現状を把握し、どんな薬を使ってどれくらい減量すべきかをまず提案します。そして薬を処方した後は経過を定期的にモニターして、健康上の問題が生じた場合はその都度、修正方法を考えていきます。どれも医師としては当たり前のことですよね。それから、薬を処方する際にはメリットだけでなくデメリットも伝えておく必要があるのに、それもオンラインクリニックでは徹底されていません」

(イメージ)
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ちなみにマンジャロを使うと、薬を使っているあいだは食欲が落ちて体重も落ちるが、薬をやめると食欲が戻るため、リバウンドしやすいのだとか。そうしたループにはまると、リバウンドを恐れて薬がやめられなくなることもあるようだ。

「マンジャロを使うなと言っているわけではありません。 なかには高度肥満症患者のようにすぐに体重を減らさないと健康被害が深刻化してしまう人もいます。そういう人は最初からマンジャロの助けを借りるべきでしょう。ただし、薬はあくまで補助として使用することが条件です」

ラクして痩せる方法はない

大坂さんは、薬を使う場合も使わない場合も、ダイエットにおいて大切なことは同じだと説明する。

「人間が必要としているエネルギーはお腹が減ろうが減るまいが常に一定です。マンジャロを使うとお腹は減らなくなりますが、それは食べなくていいということとイコールではありません。マンジャロを使う、使わないは別として、ダイエットに取り組む際には、“お腹が減ったから食べる、お腹が減らないから食べない”という接続を一度断ち切ることが大切になります。そのうえで、バランスの取れた食事と運動は必須。薬を飲めばラクして痩せられるなんていう都合のいいことはありません」

さらに、「適切な栄養摂取や適度な運動を怠ってマンジャロだけに頼ったダイエットを続けると、筋肉量が減ってしまい、見た目のバランスが悪くなる、血糖値が上がりやすくなり、糖尿病にかかりやすくなってしまうリスクがある」と指摘する。

後編では、マンジャロなどの薬だけに頼るとなぜ筋肉が落ちてしまうのか、また、ダイエットに必要な筋トレについて聞いていく。

【後編はこちら】「ラクして痩せる方法はない」専門医が“痩せる薬”頼みのダイエットを一喝!食事制限による筋肉減少の弊害とお勧めの筋トレ

大坂 貴史(おおさか・たかふみ)
医師。綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科学講座 客員講師・臨床准教授。糖尿病専門医・指導医、総合内科専門医、日本医師会認定健康スポーツ医。糖尿病と筋肉、糖尿病運動療法が専門。病院の外で「糖尿病で不幸になる人を減らす」活動をしている。Xでは「筋肉博士」として医療情報を発信中。近著に『血糖値は食べながら下げるのが正解』(KADOKAWA)。

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