「マンジャロは“GLP-1受容体作動薬”の一種で、もともとは2型糖尿病の治療薬として開発されたものです。GLP-1受容体作動薬には血糖値上昇を抑制する作用のほかに、胃の動きをゆっくりにして満腹感を持続させる作用、脳の食欲中枢に働いて食欲を抑制する作用があります。満腹感が続いて食欲が減退すれば当然食べる量は減りますよね。

マンジャロダイエットは、こうした食欲の抑制作用を利用したものなのです。副作用としては胃もたれや吐き気などが報告されていますが、どれも軽度でそれほど問題になるものではありません」

(イメージ)
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体内への投与方法は、ペン型の注入器を腹部に刺して週に1度自分で注射する方法が一般的。自由診療を希望すれば、それほど太った人でなくとも簡単に手に入る状況となっているという。美容系オンラインクリニックのなかには、形ばかりの医師のオンライン問診だけで、郵送でマンジャロを自宅に送付してしまうところもあるようだ。

食べ過ぎ以上に食べなさすぎは体に悪い

体重やスタイルを気にしている人にとっては、打つだけで痩せられるマンジャロはまさに夢の薬といっていいはずだが、医療関係者の中には否定的な意見をもつ人も少なくない。具体的には何が問題なのだろう?

「実際には痩せる必要のない人が、この薬を使ってさらに痩せようとするのが問題なのです。副作用が少ない薬とはいえ、体力のない人が使うと、まったく食事を食べられなくなって栄養失調や代謝障害になるケースがかなりあります。さらに急激に痩せた場合は膵炎(すいえん)になるリスクも否定できません」

こうしたマンジャロによる健康被害は、安易なオンライン面談による処方や、医師の知識不足がその元凶にあると大坂さんは言う。