火葬場の建て替えが問題となっている。
札幌市は清田区の里塚斎場を老朽化のため建て替える方針だが、場所などを巡り地域住民からは反対の声が上がっている。
火葬場の老朽化が進み“再整備”へ
「安定的に火葬需要に応えるために、里塚斎場の再整備が必要」(札幌市ウェルネス推進部 吉井彰規施設担当部長)
12月2日に札幌市清田区で開かれた、里塚斎場の再整備計画についての説明会。
地域住民約40人が参加した。
「環境面、においが気になる」
「ダイオキシンが降りかかるような心配がある」(いずれも説明会に参加した住民)

里塚斎場は1984年に建設された。
30基の火葬炉が稼働し、年間1万8000件の火葬に対応できる。
しかし、築40年を超え老朽化が進み、火葬炉の耐用年数もあと10年ほどに迫っている。

札幌市は2035年度の稼働に向けて建て替える方針だ。
市が有力視する建設候補地は、里塚霊園内にある芝生広場。
現在の斎場から比較的離れていることから、工事中でも影響が少ないことなどが理由だ。
「こちらの広場はエゾリスや野鳥なども生息し、市民の憩いの場になっているそうです」(蒲生美緒記者)

里塚斎場が建てられた1980年代、周辺には住宅がまばらだった。
その後、宅地開発が進んだが、現在の斎場から住宅街までの距離は約700メートル。
広場の位置に建設した場合、その距離は約150メートルにまで近づくことになる。

地域住民からは「反発」の声
付近に住む住民は――
「里塚霊園があると承知で引っ越してきたが、住宅地から150メートルの場所に新しい候補地が。近隣住民のことを一つも考えていない」(説明会に参加した住民)
住民が反発する理由は他にもある。
現在の斎場の建設当時、地元の町内会は合意の条件として市に対し、市営地下鉄東豊線の延伸や公立大学の誘致など14項目に及ぶ要望書を提出した。
しかし、実現していないものも――
「地下鉄の誘致が一番大きい。住民のことを考えないような姿勢だったら絶対だめ」(説明会に参加した住民)

「多死社会」迎え“火葬待ち”も
このような地元の声に対して、秋元札幌市長は――
「地下鉄延伸など住民の期待に応えたい。しかし、財政状況などを考えると現時点では慎重に進めざるを得ない」(秋元克広札幌市長)
札幌市は11月から12月にかけて、5回の住民説明会を終えた。
今後ここで出た意見や要望を集約し、建設場所を決めるとしている。
「亡くなる人が増える多死社会が到来する。火葬の能力が足りなくなれば、火葬待ちが生じたりする。火葬場の課題解決に向け取り組みを進めている」(札幌市ウェルネス推進部 藤田賢一施設管理課長)
