秋田・横手市のフレンチレストランが、クマ被害による外食控えの逆風に挑んでいる。地元食材を生かす料理で愛されてきた店は、宅配や真空パックによる料理の発送に加え、秋田産のクマ肉を使ったジビエ料理にも挑戦。危機をチャンスに変える新たな試みが、地域の食文化に新たな風を吹き込んでいる。
売り上げは例年の半分に
横手市十文字町にある「ル・カフェ・プランタニエ」は、創業から40年近く続くフレンチレストラン。
地元食材を生かした料理で県内外の客から高い評価を受けてきた。
しかし県内でクマによる人身被害が相次ぎ、外出を控える動きが広がった。予約は激減し、売り上げは例年の半分にまで落ち込んだ。
オーナーシェフの近藤範一さんは「コロナ禍のように経営に重くのしかかっている」と語る。
宅配と発送で需要開拓
打開策として始めたのが料理の宅配サービスだ。フレンチのほか、丼ものやラーメンも注文に応じて配達。真空パックでの発送も行い、県外からの注文も増えている。
クマに出くわす心配がなく、自宅で本格的な料理が食べられるとあって評判は上々だ。
近藤さんは「家庭でもホームパーティのような雰囲気を味わってほしい」と話す。
クマ肉の赤ワイン煮込み
新たな挑戦はこれだけではない。さらに県産のクマ肉を使ったジビエ料理の提供を始めた。
代表的なメニューは「クマ肉の赤ワイン煮込み」で、硬くて臭いというイメージがあるクマ肉も、丁寧に煮込むことで柔らかく、クセのない味わいに仕上がる。
近藤さんいわく「クマ肉の味わいは牛肉に近い」という。
串焼きなど多彩な調理法も可能で、調理代行サービスも展開している。出張調理は1人5000円から、調理代行は1200円から受け付けていて、地域に新たな食の魅力を広げている。
「命をいただく」食文化に
近藤さんは「命は命。粗末にせず、おいしくいただくことで供養になる」と語り、秋田の食文化の“売り”としてジビエを広めたい考えだ。
地域に根ざした「ル・カフェ・プランタニエ」の挑戦は、逆境を乗り越える新たな食の魅力を生み出している。
(秋田テレビ)
