Mr.サンデーが入手したのは、焼き尽くされた高層マンションの室内で撮影された写真。椅子や、棚のような物の残骸が横たわり…窓枠は大きくねじ曲がっている。
別の部屋は、キッチンだったのだろうか…生活の痕跡が無残な姿で残されていた。

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146人死亡、40人と連絡つかず

延焼が続く建物の中で、救助にあたった男性が見たのはどんな光景だったのか。

救助にあたった男性:
とにかく熱くて、煙がすさまじくて…。階段やエレベーターのロビーに多くの遺体がありました。気づいた時にはもう手遅れだったのです。

今日までに146人の死亡が確認され、およそ40人の住人と連絡がついていない。

煙が自宅襲う映像

いまだ、被害の全容すら見えない、高層マンション7棟を炎に包んだ、香港史上最悪の建物火災。まさに、その中に取り残されていた住人がいた。

リーさん:
煙が凄くてドアも開けられない…

視界を失うほどの煙に襲われた自宅。窓の外にも、異様なまでの煙が広がっていた。

この映像を撮影した住人が、ウィリアム・リーさん40歳。

リーさん:
私と、家族の大切なものが一瞬でなくなってしまいました。本当につらかった…。

妻と2人の子供たちと暮らしていたのが、火元とみられ、激しく燃えたF棟の2階の部屋だった。

「早く逃げて!」妻から電話

リーさんはすさまじい内部での経験の一部始終を、Mr.サンデーのカメラに語った。

現地時間の26日午後2時51分、火災発生の通報から11分後。仕事が休みで、1人自宅でくつろいでいたリーさんの元に、仕事中の妻から「火事よ!早く逃げて」と電話がかかってきたという。

リーさん:
私はまだ事の重大さに気づいていませんでした。慌てることもなく着替えて、避難を始めたのが8分ほど後だったと思います。そうしてドアを開けると、すごい煙が一瞬で押し寄せてきたんです。咳が出て、とっさにドアを閉めました。

すでに激しい黒煙が逃げ場を奪っていたのだ。

現地メディアが、火元として報じている映像。かすかに炎が見える程度だったが、わずか数分で、炎はみるみる上昇。急速に建物を飲み込んでいった。

それにも関わらず、リーさんは「火災報知器の音も全く聞こえなかったし、すごく静かな感じがしました」と話す。多くの人が逃げ遅れていた。

廊下から聞こえた叫び声

「廊下の煙がすごい。逃げられない」
リーさんは妻に電話すると、「早く濡れたタオルを用意して!」と言われた。黒煙は一酸化炭素の濃度が高く、吸い込めば命に関わるという。

口と鼻をおさえるため、急いでタオルを濡らした。

その時だった。廊下から年配男性の叫び声が聞こえた。

リーさん:
鼻をおさえて外に飛び出しました。煙で何も見えなくて、私はずっと「こっちに来て!」と言い続けました。

闇が広がる恐怖の中、壁伝いに進むと、そこにいたのは年配の夫婦。

このまま避難は困難だと、自宅へ連れて戻ると、2人は廊下で煙を吸いぐったりしていたという。

リーさん:
「非常口から避難しても生き残れる確率は低いので、最終的に窓から飛び降りるしかないかも」と伝えました。うちは2階なので骨折することはあっても、焼け死ぬことはないだろうと。

階段は、中央に1カ所のみ。すでに黒煙が充満し、危険なため、最後は飛び降りるしかない。

リーさんは、少しでもクッションとなるよう、家にある洋服や靴、帽子を夫婦に身につけさせたという。だが、家族4人、幸せに暮らしていた部屋の外には、真っ赤な炎が迫っていた。