クマ被害が深刻化する日本に対し、アメリカ・カリフォルニア州のヨセミテ国立公園が成功例として注目されている。ヨセミテ国立公園は「餌を与えない」「食べ物は必ずベアボックスに保管」など厳しいルールを導入。園内では1000個以上の保管庫を設置し、GPSでクマの行動を監視した結果、被害はピーク時から98%減ったという。

対策の背景にクマを餌付けしてきた過去への反省

日本でクマの被害が相次ぐ中、どう被害を抑え、共存していけばよいのか。その答えの一つがアメリカにあった。

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アメリカ・カリフォルニア州のヨセミテ国立公園は、約500頭のクマ(アメリカクロクマ)が生息し、年間400万人以上の人が訪れる。ここでは、クマの行動をGPSで監視し、人間の食べ物を徹底管理するなど厳格な対策が取られている。

こうした対策の背景には、過去への反省がある。

1920年代頃から、ヨセミテではクマを観光の目玉としてきた。人間とクマの距離は近く、当たり前のように人が直接クマにエサを与えていた。

人間の食べ物の味を覚えてしまったクマは、観光客が残したゴミに群がったり、空き瓶を執拗に舐める姿もあった。

クマは簡単に手に入る人間の食べ物に依存してしまい、その危険性はエスカレートしていった。

車の窓からクマが侵入したり、食べ物が入った容器ようなものを口にくわえたまま、車から出てきて、外で食べ始めたケースもあった。

さらに、別の車に侵入したクマは大きな体が車からはみ出すほどで、窓から顔を出すと、周りを警戒する様子も見せていた。

年間100頭もの殺処分…厳格な対策に取り組む

ヨセミテ国立公園では、観光客を楽しませるための餌付けなどが原因で、人間の食べ物にクマが依存していた。

車内を荒らしたり、人が引っかかれたりするなどの被害が多発する事態を引き起こした。

多い年には年間100頭もの殺処分に繋がったことで、公園は厳格な対策に取り組む方針へと舵を切った。

公園内には、ベアボックスと呼ばれるクマに食料を持ち去られないようにするための保管庫を1000個以上設置した。公園の規則で保管庫の利用が義務づけられ、違反すると最大5000ドル、日本円で約78万円の罰金が科せられるなど厳しいルールが設けられた。また、クマの行動をGPSで監視するなどの対策も取られた。

こうした対策の効果もあり、クマの被害は1998年のピーク時と比べ98%も減少したという。

日本では過去最悪レベルのクマ被害が拡大している。被害を防ぐためには食べ物の管理を徹底するなど、厳格な対策の必要性も問われそうだ。
(「イット!」11月26日放送より)

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