浜松のご当地ソース・トリイソースを作る老舗メーカーが直営食堂をオープンした。店で働くのは普段ソースを作っている社員たち。創業101年目の新たな挑戦に込められた思いとは?

浜松でソースと言えば…

静岡県浜松市に本社を置く鳥居食品。

1924年に創業した老舗の看板商品と言えばソースだ。

鳥居食品のウスターソース
鳥居食品のウスターソース
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浜松では知らない人はいないと言っても過言ではないトリイソースは、全国にもファンが多いと言われている。

客を店舗内に招き入れる鳥居社長(11月21日)
客を店舗内に招き入れる鳥居社長(11月21日)

その鳥居食品が11月21日にオープンしたのが直営食堂だ。

社員全員で運営する直営食堂を

オープンを10日後に控えた11月11日。

鳥居大資 社長は厨房で仕込み作業の先頭に立ち、「社員全員でやるというやり方でいきたい。工場や事務の仕事をしている人たちからすれば普段の仕事はいいが、畑違いの新しい仕事やりたくないかもしれないので、それを説得する意味で」と口にした。

直営食堂はホールも含めてすべてのポジションを鳥居食品の社員が担う予定で、飲食店を経営した経験を持つ社員の指揮のもと、すべてが手探りで準備を進めている。

なぜ、そこまでして社員だけで運営することにこだわるのだろうか?

鳥居社長は「僕らの本当の狙いは料理を提供することだけではなく、料理を通じてソースの可能性を知ってもらうこと。その意味ではソースを作っている人間がここにいた方がいいので、無理を言って社員にこっちも一緒にやってもらっている」と、その目的を明かす。

食堂で提供される料理
食堂で提供される料理

ハンバーグや魚の煮付けなどメイン料理はもちろんのこと、小鉢やプリンのカラメルに至るまで、ほぼすべての味付けにトリイソースが使われている。

このため、ホールを担当するスタッフは注文をとるだけでなく、ソースの特徴や魅力を十分に伝えるため料理についての説明をすることも大切な仕事の1つとなり、ある社員は「工場だと人に対してではなくてずっとソースに向かって黙々とやる仕事が多く、全部初めての経験ですごく緊張する」と話した。

鳥居食品の社員
鳥居食品の社員

個性的なソースの開発など、これまで既存の枠にとらわれない様々な取り組みを手がけてきた鳥居社長だが、今回の挑戦ばかりはいつもと勝手が違うようで、「手探りでやっているので、人から『これやったの?』『これ準備できてるの?』と言われて『できてなかった。用意しないと』という状態。何とか無事にオープンを迎えられればと思っている」と期待と不安が入り混じった表情をのぞかせる。

来店客の評判は上々

こうした中、11月21日に迎えたオープン当日。

社員たちはたどたどしい部分はあったものの練習の成果を発揮し、来店客のひとりは「家でソースはフライにかけるとかキャベツにかけるとか、通り一遍なことしかしないが、こんなにいろいろな使い方があるんだ」と述べ、別の客は「びっくりしたのがひじき。ウスターソースで味付けをしたというので、こんなに風味が変わって美味しいんだと思って。ひじきは好きではなかったが美味しかった」と笑った。

ソースの可能性の発信拠点に

また、直営食堂では提供している料理のレシピを無料で配布。

自社製品の新たな使い方を提案することで、将来的にはトリイソースの味と魅力を世界に発信する拠点へと成長させたい考えを持っていて、鳥居社長は「(ソースが)素材を引き出す可能性をひとつでも多く見つけてもらえれば、僕らとすればひとつの役割を果たすことになる。いまは食堂という形だが、ゆくゆくはワークショップとか、いろんな形態の中で海外の人も含めソースの可能性を知ってもらえる場所にしていければと思う」と先を見据える。

創業101年目に挑んだ新たな試み。

ソースと向き合い続けてきた企業だからこそ知ってもらいたい、おいしさを伝える取り組みに終わりはない。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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