竹害とも言われる適切な管理がされずに放置されたままになっている竹林。こうした放置竹林は土砂崩れや斜面崩壊の要因にもなり得ると指摘される中、「おいしく食べて竹林整備」をコンセプトにいまメンマを作る取り組みが進められています。

良質な地下水と豊かな自然が自慢の静岡県裾野市。

この地でNPO法人みらい建設部の宮坂里司さんが手がけているのがラーメンでおなじみのメンマです。

NPO法人みらい建設部・宮坂里司さん:
食べた人が「おいしい」と言ってくれるのを想像しながら作っている

ただ、これが本業というわけではありません。

普段は裾野市の職員としてJR裾野駅やJR岩波駅周辺の街づくりに関わる仕事をしています。

NPO法人みらい建設部・宮坂里司さん:
ここの仕事はなかなか行政だけでは成り立たない。事業者や地域の人の力を借りながら進めていくところなのでいろいろな人と会うことは日常的にある

なぜ市の職員がメンマを作っているのか?

これまで街づくりや自治会の在り方などについて地域の人たちと勉強会を重ねて来た宮坂さん。

その中で多く寄せられたのが放置されてしまった竹林をめぐる問題です。

NPO法人みらい建設部・宮坂里司さん:
(所有者も)人に迷惑をかけたくないという気持ちはすごくあるが、「どうしようもない」と言う。放っておいても竹は減らず、どんどん広がっていくので誰かが何とかしなければいけない

NPO法人みらい建設部・宮坂里司さん:
ここは我々の加工場からすぐ近くの竹やぶだが、元々はひとり暮らしの人が持っていてなかなか自分で整備できないということですごく荒れていた。隣に竹が伸びていくといって「じゃあやりましょうか」と我々で切って管理している

宮坂さんによれば土砂崩れを引き起こす要因となるほか、他の植物の成長を妨げることにつながる放置竹林。

このため、竹を伐採すると共にこうした現状を知ってもらおうと作り始めたのが裾野産のメンマです。

NPO法人みらい建設部・宮坂里司さん:
メンマ(に使う竹)は約1週間で2mくらいまで伸びるのでそこを鎌で切る。上から1m50cmくらいのところを持って行き塩漬けにする

伐採した孟宗竹は渋みを抑えると同時に、長期間保存できるよう塩漬けに。

その後、短冊状にカットした上で今度は2日間塩抜きします。

NPO法人みらい建設部・宮坂里司さん:
みんなで集まり、いろいろな調味料を持ち寄って混ぜてみた。最初はカレー味を試したが、カレーの味しかしないよねと。いろいろみんなで試行錯誤した

砂糖や醤油など、独自にブレンドした調味液で40分ほど煮込めば完成です。

NPO法人みらい建設部・宮坂里司さん:
しっかり色も入って、このまま食べれば出来立てのおいしいメンマになっている

NPO法人みらい建設部・宮坂里司さん:
ここは定年がないから良い。社会は定年で切られてしまう

一緒にメンマづくりに取り組むのはいずれも別の本業を持ちつつ宮坂さんの情熱に惹かれて集まったメンバーです。

NPO法人みらい建設部・柳原和広さん:
止まっていられない人。毎日走り続けているような、ずっと何かしている

NPO法人みらい建設部・前田稔さん:
おもしろいことをアイデアとして持っている。おもしろいという共感があるから一緒にやっている

2019年にメンマの商品化に成功してから6年。

国内で流通しているメンマのほとんどが中国産と言われる中、現在は年間約200kgを製造・販売していて、売上金は竹林を整備するために使う農機具の購入費に充てるなど好循環を実現しています。

NPO法人みらい建設部・宮坂里司さん:
実は不思議と大変さは感じていない。時間はもちろん使うが大変だと思っているのではなく、むしろ楽しみの方が大きい。みなさんと会って話をし、新しいことがアイデアとして出てくる。これを実現していく。その繰り返しがすごく楽しい

宮坂さんたちの活動は放置された竹林整備のモデルケースとなり、今では約200団体が名を連ねる純国産メンマプロジェクトの立ち上げへとつながりました。

NPO法人みらい建設部・宮坂里司さん:
(竹林の整備は)終わりがない。竹は放っておくと横にも上にも伸びるので。彼らは地下でつながっている。この繋がりに負けない人のネットワークをもって竹と一緒に仲良くケンカしないように地域の中で活動していきたい

“おいしく食べて竹林整備”をモットーに…宮坂さんは地域の課題解決に向けてこれからも走り続けます。

テレビ静岡
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