全国各地で出没が相次ぎ、脅威となっているクマ。こうしたクマなどの駆除について、最前線に立っているのが猟友会のメンバーだ。

クマの錯誤捕獲が急増

“災害級”とも称されるほど、いま全国で相次いでいるクマによる被害。

環境省によると、2025年4月から9月に全国で確認されたツキノワグマの出没件数は2万件を超え、統計の残る2009年度以降で過去最多を更新する勢いで、死者も13人に上っている。

錯誤捕獲されたクマ(2025年9月富士宮市)
錯誤捕獲されたクマ(2025年9月富士宮市)
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近年、シカやイノシシに向けたわなにクマがかかる、いわゆる”錯誤捕獲”が急増するなどクマの脅威が増している静岡県富士宮市。

10月27日には住宅の近くに設置された箱わなに体重150kgものツキノワグマがかかり、猟友会によって駆除された。

須藤秀忠 市長も「もし(クマが)出てきたら駆除するしかないと思っている。人命が一番大事。人命優先」と述べ、猟友会に所属する猟師は「クマが逃げなくなった感じ。元々はクマが先に気づけば先に逃げるが里に下りてきているのは事実」と話す。

もはや静岡県内でも他人事とは言えず、クマの脅威が身近に迫っている。

有害鳥獣の駆除はボランティア状態

11月1日からイノシシやニホンジカを対象にわな・網・猟銃を使用した狩猟が解禁された静岡県内。

巻き狩りの様子(2025年11月16日)
巻き狩りの様子(2025年11月16日)

この日、富士宮市では猟犬を使って獲物を追い込み銃で撃つ“巻き狩り”が行われた。

猟友会の活動目的の1つが農地などの食害を防ぐことで、行政からの依頼を受けてイノシシやシカなどの有害鳥獣を駆除し森林の保全に貢献している。

ただ、有害鳥獣の駆除に対しては報奨金が支払われるものの富士宮市の場合、動物の種類によって1頭につき1000円から1万円程度だ。

猟友会の猟銃
猟友会の猟銃

わなを1つ仕掛けるためにもお金がかかり、他にも見回りに必要な交通費といった経費もあるため、実質的にはボランティアに近い状態といっても過言ではない。

イノシシやシカとは違うクマ

こうした中、拡大するクマによる被害を受けて新たに要請されたのが市街地での緊急銃猟への協力だ。

これまで警察官が命じた場合を除いて市街地では原則禁じられていた猟銃の使用。

緊急銃猟の4条件
緊急銃猟の4条件

しかし、9月からは危険な鳥獣が生活圏に侵入したり侵入する恐れが大きかったりする場合や猟銃の使用以外に捕獲が難しい場合など、4つの条件をすべて満たした時に限って市町村の判断で猟銃の使用が可能になった。

ただ、西富士山麓猟友会の藤浪庸一 会長は「民家に立てこもっているところを撃つとなった時に、やっぱり人もいるし近隣に家があれば弾が当たらなかった場合、跳弾で飛んでいく危険性もある。山で撃つようなつもりで撃つわけにはいかない」と、より慎重な対応が必要と明かす。

銃の取り扱いに慣れ、50m先の標的にも命中させることができる正確な射撃能力を持っている猟師たちは、これまでも幾度となく有害鳥獣を駆除してきたが、一方でクマはイノシシやシカとは勝手が違うと考えている。

富士宮猟友会の渡邊勝正さんは「一発で仕留められれば良いが、万が一はずれた場合、相手(クマ)は動いてくる。人間を襲ってくるから危険度が高まり緊張感はすごくある」と話し、前出の藤浪会長も「クマが反撃してきたら、ある意味で大げさな話だが命懸け。危険を承知でやることになる」と危機感をあらわににする。

静岡でもいつか来るであろう緊急銃猟

全国では11月17日までに30件の緊急銃猟が実施されているものの、県内ではこれまで実施に至ったケースはない。

とはいえ、富士宮でもいつかその日が来るだろうというのが猟友会の中での共通認識だ。

富士宮猟友会の渡邊さんは「みんなのために一生懸命やらなくてはならないので、要請されたら向き合って真剣に取り組んでいかないといけない」と自らに言い聞かせ、西富士山麓猟友会の藤浪会長も「どういう状況であっても対応できるように依頼があった時には、それに応えられるように最善を尽くすつもり」と覚悟を決めている。

錯誤捕獲されたクマ(富士宮市内)
錯誤捕獲されたクマ(富士宮市内)

山間部において同じくクマの脅威にさらされている浜松市では猟友会が捕獲した場合の報奨金を1人あたり1万円へと引き上げる考えを示していて、富士宮市では現在、クマを捕獲した際の報奨金に関する規定がないことから金額の設定も含めた検討を進めている。

(テレビ静岡)

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