旧統一教会の問題を20年以上にわたって取材し、山上被告の裁判も傍聴・取材しているジャーナリストの鈴木エイトさんは、20日の被告人質問について、「初公判の時とは違い、非常にゆっくりと分かりやすく話していた」とその印象を語りました。

その上で今後も実施される被告人質問の中で、「安倍元総理が旧統一教会の関連団体に送ったメッセージ動画が、教団の被害に苦しんでいた二世信者たちに大きな衝撃を与えたかということを、どのように山上被告が語るのか注目したい」と話しました。

■山上被告は「非常にゆっくり、何を答えているか、わかりやすく話していた」

【ジャーナリスト 鈴木エイト氏】「まず彼がどういう口調で答えるか、どういう態度で話すかというところを注目していたのですが、弁護側の質問に対して、必ず2~3秒、間を置いて、何を答えるかじっくり考えた上で話しているなと思いました。

初公判のときに、人定質問と罪状認否のときには、ほとんど聞き取れないような声でボソッとしゃべっていたんですが、今日に関しては非常に聞き取りやすかったです。

非常に明瞭な声ではないんですが、非常にゆっくり、何を答えているか、わかりやすく話していたという印象があります」

山上被告は被告人質問の冒頭で、「45歳まで生きていると思っていたか?」と聞かれ、「生きているべきではなかった」と話しました。

鈴木エイトさんは、この発言の時、傍聴席にいた人たちが驚くような様子があったtと語ります。

【鈴木エイト氏】「被告人質問の最初に、例えばご遺族に謝罪を述べるかどうかがポイントだったと思うんですけれども、それにちょっと近いような形で『生きるべきではなかった』っていうようなことを言って。

その際に弁護人は『ご遺族に対する思いなどはまた改めて』って言ったので、そこ(謝罪)は、ちょっとなかったんですけれども。最初に謝罪に近い言葉を述べるのかという、ちょっと驚きは傍聴席にありました」

■“将来の夢は石ころ”「人生に絶望感を抱いていたのでは」

また高校時代、卒業アルバムに『将来の夢は石ころ』と書いたこと、その理由を『ろくなことがないだろう』と山上被告が説明したことについては、「人生に絶望感を抱いていたのでは」と指摘しました。

【鈴木エイト氏】「その時点で、かなり人生に絶望感を抱いていたんじゃないかと思うんですね。

やはり祖父から『出て行け』と言われたり、母親だけを家に入れるなという時期もあったようなんですけども、そういう形で将来の不安とか、展望が全く抱けない、そういう心境にあったんだなってことはわかります」

■兄が自死した経緯を山上被告はどう語るのか

そして山上被告が「非常に冷静に受け答えをした」と印象について語りました。

【鈴木エイト氏】「まず母親が尋問で答えた内容と、そのあと妹が答えている内容を聞くと、内容的に同じことを語っていても、深刻さの度合いがかなりずれがあったと思うんですね。

そこに関して、山上被告がどのように語るのかと見ていたんですけれども、妹さんの発言は、非常に感情が入っていて、泣きながら話しているところがありました。

被告に関しては、冷静に客観的に語っていたとは思います。

そして一番のポイントになるであろうお兄さんが自死をしたときの経緯、今日はそこまで尋問が行かなかったんですけれども、来週火曜日の尋問が残りまだ1時間以上あるので。

そこでどのように語られていくか、彼が統一教会に本当に恨みを抱いた時期がいつだったのかが、ポイントになるかなと思いました」

山上被告は裁判が始まる前、「旧統一教会は母の問題で、兄が亡くなるまでは、自分の人生を生きていこうと決意していた。教団に恨みを募らせたのは、兄の死に対する母の理解が原因だ」と 弁護側の関係者に対して話していたことがわかっています。

【鈴木エイト氏】「お兄さんと祖父はかなり母親を責め立てていたところで、彼は距離を置いて見ていた、ある種母親をちょっと守っているようなところも少し感じられたんですね。

そのような態度に立っていた彼がお兄さんが亡くなったことによって、心境が少し変わったところは、今後また語られるんじゃないかと思いましたね」

■安倍元総理のメッセージ動画の“衝撃” 動機をどう語るか

来週以降の被告人質問で注目している点について、鈴木エイト氏は、「動機と“絶望”」という言葉を挙げました。

【鈴木エイト氏】「きょうの被告人質問では、動機面に関して、要は『なぜ安倍元総理を狙ったのか、ターゲットにしたのか』ということに関して語られませんでした。

今後、被告人質問はまだ4回ぐらいあるので、そこで語られると思いますが、妹さんの発言にもあった『絶望と苦悩の中にあった』と。

そしてこの旧統一教会の問題に取り組まれてきた弁護士の方も、きのう証人尋問で証言したように、(教団の関連団体に送られた)安倍元総理のメッセージを見たときに、多くの二世(信者)たち、教団の被害対策に取り組んできた弁護士も含めて非常に絶望感を抱いたって言ってるんですね。

当事者であったり、二世であったり、僕もそうなんですけども、この安倍元総理のビデオメッセージを見たときの、衝撃と絶望というものが、まだ裁判員に対してなかなか伝わっていないっていう印象を受けるんですね。

そこが被告人質問の中で、山上被告本人から、どのように語られるか、そしてその内容が伝わるのかというところが、一番の注目ポイントです。

なぜ安倍さんが狙われれたのかっていうところも、そこにかかってくるので、この“絶望”がいかに動機に関わっているか、そこが一番注目をしてるところです」

(関西テレビ「newsランナー」2025年11月20日放送)

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