“まちびらき”から20周年を迎えた福岡市東区のアイランドシティ。人気の住宅地となった街の今と昔を辿る。
博多湾埋め立て 建設は紆余曲折
博多湾に浮かぶアイランドシティ。2025年10月26日、まちびらき20周年を記念するイベントが開かれ、大勢の住民で賑わった。

挨拶にたった福岡市の高島宗一郎市長は「住みやすい地域として大きく名を馳せる存在感のあるエリアになりました」と誇らし気だ。今や『人気の住宅地』として確かな存在感を放っている。

1994年7月。アイランドシティは、博多湾の国際物流機能の向上や新たな住宅地の造成などを目的に着工。大型船が通る航路を確保するため海底を掘削して出た土などで埋め立てられた。

しかし当時は、近くに広がる和白干潟の生態系への影響を心配した市民団体が、12 万人の署名を集めて人工島(アイランドシティ)建設に『NO』を突きつける反対運動も展開した。

また2003年には、一部の開発関係者による汚職『ケヤキ・庭石事件』も発覚。不当に高額なケヤキや庭石を市に購入させ私腹を肥やす不正が明るみに出た。

決して順調なスタートではなかったが、市は環境に配慮して島の形状を変更するなど整備を進め、まちづくりを行った。
広大な人工の島にできた緑のオアシス
そして迎えた2005年9月。アイランドシティは、まちびらきを迎え、住民の入居が始まる。誕生した新しいまちが、人工島のイメージ回復に繋がればと福岡市は、大きな期待を寄せた。

まちびらきの翌年からアイランドシティに住む仮屋祐子さん。居住歴は19年になる。
「最初は本当に何にも無かったんですよ。買う時も迷ったんですよね。けれども、見に来て、もうその日に『ここにしよう』って決めたんです。海もあって緑もあって、とってもきれいな空があって、そういうところが魅力的だと思います」。

2007年には照葉小学校が開校。その後、子ども病院の移転(2014年)や商業施設の開業(2020年)、さらに都市高速の開通(2021年)などインフラ整備が進み、生活基盤が整っていった。

仮屋さんは「子育てをここでしたんです。公園がたくさんあるし、道も広くって自転車が走るスペースもちゃんととられてますし、住み心地はとってもよいです」と笑顔だ。
バスケットボールチームの新アリーナも
まちびらき当初、僅か354人だった住民は今や16000人を超えた。その成長を支える新たな取り組みも始まっている。

アイランドシティの一角に『Bリーグ・プレミア』への参入を目指すライジングゼファー福岡の新アリーナ建設が決まったのだ。

新アリーナは2029年開業予定で、地域の活性化が期待される。

トップパートナーの『やずや』グループ社長の矢頭徹さんも大きな夢を語る。

「いつかこのアリーナで、また多くのプレイヤーを生み出して、そしてその子たちが日本代表に行くような、そんなアリーナにしたい」。
バスが中心の交通手段が大きな課題
一方、人口増加に伴い“課題”も見えてきた。
居住歴19年の仮屋さんは「都市高速を通るバスは、どうしても時間帯が決まっているので、昼間ちょっと博多駅に出ようと思ったら、千早駅までバスで行って、そこから乗り換える。ちょっと便利が悪いなっていうのは感じています」と話す。

アイランドシティには鉄道が通っていないため交通手段はバスが中心。2025年3月のダイヤ改正で、西鉄は70便のバスを増便をした。しかし住民は「もう昭葉を出る頃には、バスが超満員になっている」(男性)や「飲みに行ったりすると、帰って来るのがタクシーしかないので、できたら夜遅くまで交通機関が欲しい」と話す。

そうしたなか、民間企業が始めた取り組みが、11月9日から始まった自動運転バスの実証実験だ。

1日7便の自動運転バスが島内を走行。従来、路線バスが通らないルートを補完する。
次の20年に向けて進化する街
交通オペレーションを提供する『BRJ』の梶原貴仁さんは「街の構造上、住居から病院や商業施設まで、施設へのアクセスが徒歩15分ぐらいの距離がある。こういった自動運転バスとかがあれば、島内の移動がより円滑に行くのかな」と期待を寄せる。今回は島内のみの実証実験だが、梶原さんは、将来的にはルートを島外にまで広げられたら理想的だと話す。

実際に利用した住民は「なんか普通な感じ。別に怖いっていう感じはないですね」(女性)や「交通手段としては、さまざまな選択肢があった方がいいんではないか。とても期待してます」(男性)と概ね好評だ。

また九州経済調査協会の情報研究部長、片山礼二郎さんも「アイランドシティとか、千早駅の辺りまでは、非常に道路が広くて、自動運転車も比較的、走りやすいんじゃないか。実証実験の結果を踏まえて、交通アクセスの問題も徐々に解決に向かうんじゃないか」とこの取り組みを評価している。。

20年の時を経て、住みたい街へと成長したアイランドシティ。次の20年に向けて街の進化は続いていく。
(テレビ西日本)
