力士がお肉を抱えるパッケージ。ご飯がどんどん進んでしまう万能調味料が誕生した。この商品を手がけたのは、150年以上続く老舗の味噌醸造所の若き五代目。その背景には?

有形指定文化財のレンガ造りの蔵

水郷として知られる福岡・柳川市。掘割沿いに3棟のレンガ造りの蔵が佇むこの場所は、通称『並倉』と呼ばれ、蔵はいまも現役で使われている。

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この日、訪ねたのは、柳川市で150年以上前から味噌の製造と販売を行っている『鶴味噌醸造所』だ。

五代目の吉開雄治さんによると川沿いのレンガ造りの蔵は、鶴味噌醸造所の倉庫で、国の有形指定文化財にも認定されているという。映画の撮影や、柳川の観光名所としても人気のある柳川の観光名所だ。

五代目の吉開さんが蔵の裏側を案内してくれた。味噌造りに大切な麹菌が155年に渡って息づいている。

「壁もすごく汚れて見えるんですけど、ここに菌が棲みついていて、無暗に清掃しちゃいけないと言われていて…。棲みついている菌たちが、最終的な味噌の味を決めてくれている。大切な存在です」と愛おしそうに蔵の壁や天井の黒っぽい染みを眺める五代目。この蔵だからこそできる味噌の味。この麹菌のおかげで鶴味噌の味が受け継がれてきたのだ。

その麹菌で作られた鶴味噌の定番商品は、米麹の甘みと麦麹の旨味を併せ持つ『合わせ味噌』。

「柳川のご家庭には、どこにもうちの商品があるんじゃないかなと思っています」と五代目は笑う。

深刻な“味噌離れ” 新たな挑戦を

年間1200トン以上の味噌を製造し、柳川で親しまれている鶴味噌だが、いま大きな問題に直面している。

「食の多様化などで、味噌の消費量が減っているんですよね」と話す五代目が懸念しているのは、日本人の味噌離れ。鶴味噌では全盛期と比べて味噌の売り上げが3割減少。そのため、危機感を募らせているのだ。

「これから年々、減少していくのではないかという危機感もあるんですよ。味噌の魅力を次世代の若い方たちに伝えていくのが、我々の使命と考えています」と話す五代目。

吉開さんは、東京の大学を卒業後、五代目として鶴味噌醸造所の後を継いだ。

新商品として開発した『相撲肉味噌』

「最近、力を入れている商品です」と五代目が味噌離れを食い止めるべく新商品として開発したのが『相撲肉味噌』だ。

熟成させた麦味噌がメインのブレンド味噌にニンニクと唐辛子を混ぜ込み、さらに福岡のブランド牛『博多和牛』を使用し、和牛の旨味と味噌のコクが絡み合う。ご飯のお供にピッタリな万能調味料だ。

試食した記者は「ピリ辛さもアクセントになって、また肉がゴロっと入っているんですね。そこに味噌の香ばしさとコクがめちゃくちゃ合います」と舌鼓を打つ。さらに、たっぷりの相撲肉味噌と卵黄を纏わせた『台湾風まぜそば』も絶品だということだ。

新商品の開発には地元の精肉店にも協力してもらい、肉の品種やミンチの厚さにも拘り、約1年かけて完成させた。10月に開催された全国の調味料選手権では、味噌部門で最優秀を受賞した。

五代目は「こういった味噌加工品を通じて生味噌にも興味持って頂けたら一番、嬉しいかなとメーカーとしては思っています」と新商品に期待を寄せている。

ちなみにネーミングのなかの『相撲』というのも地元出身の元大関、琴奨菊関に肖っているそうだ。

(テレビ西日本)

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