福岡県田川市の保育園で複数の保育士が園児に虐待を繰り返していた問題で、警察は19日、この園で保育士として働いていた女を傷害などの疑いで逮捕しました。
19日午後、園児の保護者が見せてくれたのは、誕生日に贈られたメッセージカードです。
「これからもたくさんいっしょにあそうぼうね」
そう書き込んでいたのは、19日に傷害と暴行の疑いで逮捕された中村麗奈容疑者(25)です。
事件が起きたのは田川市の社会福祉法人松原福祉会が運営する「松原保育園」。
警察によりますと、中村容疑者は今年7月から8月にかけて、園児に対し髪の毛をつかんで引っ張るなどの暴行を加えたほか、頭や顔を手や紙箱で何度も殴って顔面を打撲するケガをさせた疑いです。
事件発覚のきっかけは園が設置した防犯カメラの映像でした。
《第一回保護者説明会 8月20日 音声:保護者提供》
◆松原保育園の園長
「たまたま防犯カメラの映像を見たときに『〇×組』の担任(中村容疑者)が園児を叩いているような姿が確認された。『えっ!』とびっくりして、事務の先生と防犯カメラ映像を巻き戻したところ、複数回叩いている姿が確認された。往復ビンタ、物でもたたく、引っ張る。とにかく大きな声で叱責している姿も確認できた」
防犯カメラが捉えていた犯行の一部始終。
園長は中村容疑者を呼んで問いただしたといいます。
《第一回保護者説明会 8月20日 音声:保護者提供》
◆松原保育園の園長
「『これはどういうことなんだ?これは保育ですか?暴力だよね』と聞いた。中村容疑者は『手が出てしまいました』と。被害園児が給食を食べている時間だったんですが、給食が遅いのと、『口にパンパン入れたままお皿を下げない』という約束事を破ったからたたいたと聞いています。多くの職員は今回の暴行というか、たたいたことに関して非常にショックを受けている」
事件の2日後、中村容疑者は園を懲戒解雇されました。
中村容疑者はどのような人物だったのでしょうか?
◆園児の保護者
「頑張り屋。自分でしないと気が済まない。『息抜きしないと』と(中村容疑者に)言っていたら事件が発覚した」
◆園児の保護者
「まさかそういうことをする先生には見えなかったので驚きがすごい。今回の件は度が過ぎている」
中村容疑者は警察の調べに対し「私がしたことに間違いありません」と容疑を認めているということです。
事件が起きた松原保育園では、県などによる調査の結果、他にも悪質な保育の実態が明らかになっています。
《福岡県の会見 10月20日》
「各保育室にカメラがあったので、過去さかのぼれるだけ全部確認して、期間内に虐待・不適切保育が行われた事案がないか確認したところ10人の保育士が…」
県が、松原保育園の防犯カメラ映像を確認したところ、全部で14人の保育士のうち中村容疑者を含む10人が、園児に対して身体的な虐待行為などを行っていたことが認定されたのです。
松原保育園で確認された10人の保育士による不適切な行為は2カ月間で132件ー。
園側の弁護士の説明では、開園日で換算すると毎日1.5回保育士による不適切な行為が行われていた計算になるということです。
事態を把握した園は、中村容疑者のほか20代の女性保育士1人を懲戒解雇しています。
《第二回保護者説明会 10月24日 音声:保護者提供》
◆松原保育園の園長
「2番目の事例につきまして(田川市から)園児がされたことが生命に関わる問題だと指摘を受けた」
◆保護者
「生命に関わる事案が発生したとは詳しくどういう内容だった?」
◆理事長
「『食べ物を少し無理やり食べさせて』という事案」
園の説明によると、2カ月間で確認された132件の不適切な行為のうち、98件が中村容疑者と、解雇されたもう一人の女性保育士によるものだったということです。
警察は防犯カメラの映像を確認するなど、他の保育士についても調べを進め事件の全容解明を目指す方針です。