話題のアーティスト「キューライス」をご存じだろうか?その独特の世界観に触れられる作品展「キューライス万博」が27日から金沢市内で始まる。その作品展を前にその魅力を探った。
失敗も残念なこともシニカルな笑いに

タッチはシンプルだが、見ただけでそれぞれの性格や何かが起こりそうなワクワク感が伝わるキャラクター達。どれもキューライスさんが生み出したものだ。例えばラップの切れ目を見失ったり、納豆のパックに穴が開いたり、それでも、けなげに生きる残念な猫「ネコノヒー」

チーズが大好きな「スキネズミ」は、あの手この手でネズミ捕りのチーズを食べようとチャレンジ。何度失敗しても、めげない。

独身漫画家と同居する「スキウサギ」はいつも漫画家の邪魔をするのだが、その煩わしさもなんだかかわいく見えてくる。

日常の失敗や残念な出来事をシニカルな笑いに変えて描くキューライスさんの作品にはまる人が増えている。その魅力を「キューライスの沼」と表現する雑誌もあった。

その沼にはまる著名人も増えていて、俳優の吉岡里帆さんは「キューさんの漫画やイラストは毎日だって見たい、定点観測したい、自分のもののように愛でていたい」とラブコール。

シンガーソングライターの槇原敬之さんは「自分の心の薄暗い場所に『ポッ』と灯がともる感じが僕にとっての魅力です」と語った。

その話題のキューライスさんがこちらの男性だ。本名は坂元友介さん。

大学を卒業後、CMディレクターとして働いて、その時に「撮影用の絵コンテが書けるなら漫画も描けるのでは」とブログにアップ。そこから人気に火が付き、次々と作品が書籍化された。ブログは現在も、土曜日以外はアップし続けているそうだ。そのキューライスさんに作品を書く上で大切にしていることを聞いた。

キューライスさん:
共感できる日常のちょっとした失敗とか、残念な感じっていうのをすくい取って、それを絵にして笑っていただくっていうことは絶えず意識してるので。だから自分の実際の失敗談とかを入れ込むこともあるし、納豆の発泡スチロールの容器を力強めに混ぜているとバリってこう割れちゃうことがあるんですけど、そういう残念さを発見した時に「あ!じゃあ、これを漫画にしよう」と思って。それを漫画にする場合、どのキャラクターがいいかって考えた時に、残念な猫のネコノヒーがやるのがいいんじゃないかなって考えて、漫画に落とし込むっていうことは常々やってることですね。

書店員も私物のキューライスグッズで激推し!
誰の身にもおきそうな失敗を笑いに変えた物語は、読み手へのエールにもなっている。作品は本のプロも注目していて、金沢ビーンズではコミックや絵本が並ぶ3階に特設コーナーを設置。

金沢ビーンズの宮本愛美さん:
私自身がキューライス先生の大ファンで、3階スタッフの押しもあって、コーナーを今回大きく作らせていただきました。これからのクリスマスの時期って置くものがいっぱいあるんですけど、「キューライス先生を置きたい」ってわがままを言って、すごく大きいコーナーを作らせていただきました。

実はスタッフの宮本さんが抱えているのは、私物のキューライスグッズ。コーナーが目立つようにと、書店の同僚が手作りしてくれたキャラクターを飾るなど力が入っている。そんな宮本さんには漫画以外にもおススメが…
金沢ビーンズの宮本愛美さん:
特に絵本はリズムがすごくよくて、読み聞かせにもすごい最適。例えば『ニンジンジン』って本があるんですけど、5・7・5ですごくリズム感がよく、最後、落ちも素晴らしくて、子供も大人も楽しめる作品です。

初代「みんなのよみきかせ絵本大賞」
その絵本「ニンジンジン」は全国の約2000の保育施設が投票し選ぶ「みんなのよみきかせ絵本大賞」の初代大賞作品だ。二本脚で歩く人参のニンジンジンと、人参が大好きなウサギたちの攻防を描いた作品。

この絵本の読み聞かせ会が開かれると聞いて、白山市の「ちよの幼稚園」に伺った。この幼稚園には、約4800冊もの絵本があり、いつでも子供たちが物語に触れられる。この日「ニンジンジン」の読み聞かせ会に参加したのは年長さんたち…。

絵本『ニンジンジン』から:
おや ニンジンジンが やってきた
なにもしらない ニンジンジン
ドサッ やった かかった せいこうだ!

絵本『ニンジンジン』から:
ところがすごいぞ ニンジンジン
ふさふさヘアーを ふりまわし
ちゅうにういてる ニンジンジン
ジンジン ブルブル ジンブルジン
教室に子どもたちの笑い声が響いた。

ちよの幼稚園田中園長:
お話に引き込まれてるなって思いました。私も読ませてもらったんですけど、次こうなるんじゃないかっていうワクワク感と期待感がありますし、自分たちがこうなるんじゃないかなって思った以上にニンジンジンが力を発揮して。例えば、頭の葉っぱをヘリコプターのようにして困難な状態を逃れたりとか、子供たちの期待と、いい意味での裏切りが連続して起こるのですごくこの世界に入りやすいのかなと感じます。子供たちが絵本のファンタジーの世界に入って、そのファンタジーの世界で創造性であったり表現力であったり、コミュニケーションする力を養って、また現実の世界に戻って、それを生かしていけるかなと思うのでいろんな力が身につくかなと感じます。

絵本の細部にもこだわり!作品に込めた思いとは?
子供たちに絵本が大好評だったとキューライスさんに伝えた。すると…
キューライスさん:
本当ですか?それは嬉しいですね。子供に喜んでもらえるのが一番うれしいです。

キューライスさん:
文章のリズムは最近大切にしていて、お母さんが読み聞かせているときに、お母さんも読んでいてリズムが楽しくなってくる。お母さんが楽しくないと子供も楽しんでくれないなって、最近思い始めていて。あと、絵本を開いた画面の小さなところに、ふとしたところに遊び心があるとか。そこを子供が発見して、お母さんに教えるシーンを想像して、そこでコミュニケーションが生まれたら素敵だなって思いながら、描いてることが多いですね。

27日木曜日から金沢市の香林坊大和でキューライスさんの世界に触れられる作品展「キューライス万博」が始まる。そこで、来場者へのメッセージをお願いした。

キューライスさん:
このキューライス万博は本当に私の半生というか、ほぼ私の人生が詰まった展示になっておりますので、是非、ご来場いただいて見ていただいたら、見て、見ていただいて、くれ、くださったら嬉しいかなと思います。宜しくお願いします。こんな感じで大丈夫ですか?

スタッフ:
最後、かんだところをもう一回
キューライスさん:
はい!
キューライスさん自身も自身のキャラクターに負けないくらい愛すべき人だった。
キューライスさん:
今回のキューライス万博は、本当に私の人生の全てが詰まっているような展示になっておりますので是非、ご来場いただけたら嬉しいと思っております。宜しくお願いします。

是非「キューライス万博」で話題のアーティストの魅力に触れて欲しい。
(石川テレビ)
