信号機のない横断歩道で歩行者に気づき、一時停止する車はどのくらいあるのか。最新調査では広島県が前年より改善した一方、約4割の車は止まれていない。安全を左右する“一瞬”について街で話を聞いた。
広島の一時停止率アップ!その実感は?
JAF・日本自動車連盟が行った調査によると、信号機のない横断歩道で一時停止した車の割合は、広島県で61.6%。前年より改善し、全国平均の56.7%も上回った。しかし、裏を返せば4割近い車が依然として止まれていない。街の人々の感覚はどうなのか。広島市中心部で聞いてみた。

高校3年生は、周囲の状況をこう感じている。
「自分の地域は止まってくれることが多いです。学校が近いのもあるかもしれない」
大学生は「立っていても止まってくれないことがあります。車が先に行けば、歩行者は後で渡れると思われているのかもしれない。事故にあったら困るので止まってほしい」と経験を話した。

その話を聞いていた別の大学生が“効果的な合図”を紹介した。
「横断歩道を渡るときは目で訴える。止まって!って。そうすれば止まってくれますよ」
横断歩道で“一時停止しなければ違反”
30代の男性は「一時停止するドライバーが増えてきたのはいいと思います。100%は難しくても、ある程度は達成してほしい」と、さらなる改善に期待する。
どうすれば100%に近づくか尋ねると、「罰則強化など」と提案した。

20代の女性は、状況によって“止まらない運転”の怖さを感じている。
「信号がないところでは止まってくれる車も多いが、左折や右折する車は見えづらくて突っ込んでくることがあって怖い」
歩行者が気づいてもらうためにできることを聞くと、「子どもみたいに手を上げて“渡ります”とするのが一番かもしれないけど、大人になると恥ずかしい」と照れ笑い。

彼女自身は免許を持ちながらペーパードライバーだという。
「運転するときは“ちゃんと見なきゃ”って。見えにくい夜間は母と一緒に乗り、お互いに“そこに人がいるよ”と声を掛け合っています」
道路交通法では、横断歩道を渡ろうとする歩行者がいる場合、一時停止しなければ違反である。これは自転車も同じ。
なお、信号機のない横断歩道の前には「ひし形マーク」の標示がある。この先に横断歩道または自転車横断帯があることを予告するため、約50m手前と30m手前の道路上に白いペイントで描かれている。ドライバーは、このマークを見たらいつでも停止できるよう注意が必要だ。
歩行者がいれば横断歩道の前で一時停止を心がけているという40代の女性も、「ひし形のマークを気にしたことがなかった」と話す。標示が十分に認知されていない実態もうかがえる。
都道府県でこんなに差が…広島は21位
一時停止率が最も高かった都道府県は長野県(88.2%)。10年連続の1位である。続いて岐阜、福岡が上位に入り、広島県は全国21位だった。最下位は、隣の山口県で34.3%にとどまる。
広島大学大学院で社会情報メディア論が専門の匹田篤准教授はこう語る。
「広島県で一時停止率が高まったのは良い傾向です。一方で、私たちドライバーは都合の良い解釈をしがちです。スマホを見て立っている歩行者を“渡らないだろう”と判断するなど…。大学生が言っていたように“目で訴える”ことも大事。歩行者とドライバー、双方の気持ちの良いコミュニケーションが大切だと思います」
街の声に耳を傾けると、“止まる車”が増えてきた手応えと同時に安心しきれない思いも横たわっていた。信号機のない横断歩道での一時停止率は、その街の“思いやりの心”を映し出している。
(テレビ新広島)
