一枚の写真から街を再発見する「兵動大樹の今昔さんぽ」。
今回の舞台は、大阪市淀川区。阪急十三駅前からスタートです。
【兵動大樹さん】「ほぼ地元でございます。塚本っていうところに住んでたので、十三は隣で準地元。そんなところに何があるかワクワクしております」
そんな兵動さんに、渡された1枚の古い写真は、1981年(昭和56年)頃に撮影されたものです。
写真には消防署のようなところで訓練のようなことをしている女性たちが写っています。
【兵動大樹さん】「なんかすぐわかるんちゃう?普通に見たら消防署があって隊員さんには見えへんなあ。でも何かを運んでる。すごい臨場感あるよね」
写真の風景の場所は見つかるのでしょうか?
※この記事では都合により写真を掲載しておりません。YouTubeで公開している動画には写真がありますので、ぜひご覧ください※
■商店街で見つけた“賞味期限10分どーなつ”
早速、十三駅周辺で聞き込みをスタート!
ですが、地元の人々も消防署の場所については記憶が曖昧なようです。
皆さん知らないので、十三に消防署がない疑惑が出てきました。
悩みながらも、十三フレンドリー商店街に足を運ぶと気になるお店を発見!
「どーなつてるの?」という店名のドーナツ店です。「賞味期限10分どーなつ」という珍しいメニューを提供しています。
【兵動大樹さん】「これが賞味期限10分どーなつやって。5秒でもなきゃ3時間でもないねん。近所だったら、走ったら家持って帰れるかぐらいのあれや」
お店の人によると、発酵させずに揚げることで「とろける食感」を楽しめるとのこと。
【兵動大樹さん】「あつっ!うまい、おいしい!ふわって膨らむ。西宮に帰らなあかんから10分では帰られへん」
■田中角栄とゆかり?の串カツ店「角栄」
続いて訪れたのは、十三サカエマチ商店街にある串カツ店「角栄」。56年もの間、十三で営業を続けている老舗です。
店名の由来を聞くと、繋がりはないものの、元内閣総理大臣だった田中角栄さんの後援会が店名を気に入って”自筆の額”をプレゼントしたという逸話が。
【兵動大樹さん】「これ自筆?」
【角栄 オーナー】「もちろん。自筆です」
また、十三は「アルサロ」発祥の地だったという話も出てきました。
【兵動大樹さん】「アルサロって言うてました?」
【角栄 オーナー】「キャバレーとは言わなかったんですよ、みんな。アルサロと言ってましたよ」
「アルサロ」とは「アルバイトサロン」の略で、キャバレーの一種のことを指すそうです。
■写真の謎を解く鍵はホステスさん
「角栄」のオーナーが写真を見ると、すぐになにかに気づきました。
【角栄 オーナー】「消防訓練でしょうね。見た途端、ホステスさんだと分かりました」
【兵動大樹さん】「なんでパッと分かるんですか?」
【角栄 オーナー】「アルサロさんが消防訓練していたことを知ってる」
オーナーによると、十三に消防署はあるようですが、写真の場所と今の消防署が一緒かはわからないそうです。
【兵動大樹さん】「しんどいな今日」
■「国宝」の撮影にも使われた十三に現存する唯一のキャバレー
さらに詳しい話を聞くために、十三に唯一残っているキャバレー「グランドサロン十三」を訪問。
1969年に創業し、現在も火曜から土曜までキャバレーとして営業し、日曜や祝日は貸会場として使用されている老舗です。
実は、映画「国宝」の撮影も「グランドサロン十三」で行わたそうです。
【兵動大樹さん】「プライベートで来たいなあ!ルート決まったわ!」
■女子消防隊パレードのきっかけは戦後最大のビル火災
ここで、オーナー・宮田さんに写真について聞いてみると、同時期に撮影された「女子消防隊パレード」という古い写真たちを見せてくれました。
【兵動大樹さん】「“十三ホステス消防隊”って書いてある」
キャバレーを取りまとめる団体があり、消防とキャンペーン的に連携を取っていたそうです。
こうした取り組みのきっかけは、戦後最大の火災「千日デパートビル火災」でした。
■千日デパートビル火災の悲劇
【オーナー・宮田さん】「千日デパートの火災というのが、日本で1番ひどい火災ですよね。それで亡くなられた方のほとんどが、ホステスの従業員とお客様だったということもあって、火災防止。2度と繰り返さないという想いでされたんじゃないかなと思います」
1972年、大阪難波の千日前「千日デパートビル火災」は死者118人、負傷者81人という日本における戦後最大の火災惨事となりました。
この火災を機にビル防災対策が見直されました。この写真は、ホステスさんによる消防訓練だったのです。
■ビル火災の教訓からホステスが立ち上がった
最後に、写真が撮影されたとされる「淀川消防署」を訪問。
消防署で資料を見せてもらうと、千日デパートビル火災から10年目にあたる1981年に、100名のホステスによる「自衛消防隊」が発足したことが分かりました。
現在は建物ごとに「防火管理者」の設置が義務付けられ、阪神淡路大震災をきっかけに「地域防災リーダー」という組織もつくられています。
■ 地域と消防の絆
同じ場所で記念撮影をした兵動さんは、こう締めくくりました。
【兵動大樹さん】「これから年末に向けて火の元に気をつけてくださいね」
十三の街を歩く中で発見された「十三ホステス消防隊」の歴史。
地域と消防署が協力して防災意識を高める取り組みは、現代にも受け継がれています。
(関西テレビ「newsランナー 兵動大樹の今昔さんぽ」2025年11月7日放送)