物価高の波が飲食店を直撃し、帝国データバンクの調査によると、ことし上半期の飲食店の倒産件数は458件と過去最多を更新。

厳しい時代に突入しています。しかし、そんな逆境の中でも、客足が途絶えないお店があるというではありませんか。

関西テレビの秦令欧奈アナウンサーが、物価高の打撃を受ける大阪の“夜の街”を徹底調査しました。

■厳しい物価高の中、値下げ作戦で生き残る飲み屋街

スナックでカラオケを楽しむ秦アナ。

【ディレクター】「ご機嫌なところすいません。夜の街の調査に行くので」

【秦令欧奈アナウンサー】「それでスナック集合ってことですか?」

大阪・ミナミの繁華街で街の人の“飲み会事情”を調査。

(Q.大体1回の飲みの予算は?)
【会社員(40代)】「3000円から5000円。家で飲むと1000円いかないですね。5、600円。安ければ安いほどいい」

【会社員(40代)】「できるだけ安いところ。ビールの安いとことか、焼酎の安いとことか、一生懸命探して」

【会社員(30代)】「もう500円以上のビールとか飲めないです」
【会社員】「ハッピーアワーとかやったら、200円とか」
【会社員(30代)】「レモンサワー50円ですよ、ここ」
【秦令欧奈アナウンサー】「本当じゃん!」
【会社員(30代)】「そういうとこしか、行けなくなりました」

■昭和の雰囲気漂うキャバレーの苦悩

まず訪れたのは「ミス大阪」。キラキラ輝くド派手な電飾とミラーボールがある、昭和レトロな雰囲気を味わえる老舗キャバレーです。

【「ミス大阪」 岡田徹さん】「材料とか飲み物もそうですけど、ことごとく仕入れ値が上がっている。正直言って周り(のお店)もそうですけど、やっぱりしんどいですね。

『2次会まで上司と一緒に飲まなあかんねん』とか。1軒目でお金使って、2軒目でお金使うのがしんどいという方もいらっしゃる」

厳しい時代を生き抜くため、70分飲み放題パックを提供したり、映画やドラマの撮影場所として貸し出したり、ブライダル用途など昼間の営業も始めるなど、様々な工夫で乗り切ろうとしています。

■81歳のママが客を呼び込む驚きの戦略

街の小さなスナックなどはどうしているのでしょうか。

千日前にある「蟻(あり)」というスナック。”蟻のようにぞろぞろとお客さんが来てくれるように”と名付けられたというこの店では、81歳のママ・上野静子さんが55年もの長きにわたって営業を続けています。

【「蟻」ママ 上野静子さん】「この8月で81歳です。26歳の時から(お店をしている)。来年3月で55周年。もうそろそろね、引退せんといけませんねんけど、お客さんが遠いところから来てくれますねん」

驚くことに、この「蟻」では、物価高の中でも逆に料金を値下げするという大胆な戦略に出ました。

【「蟻」ママ 上野静子さん】「2000円から1500円に1時間の料金を下げたんです。さらに『20分500円』という書き方にしました。500円やったらちょっと入ってみようか、自分もそう思うんじゃないかと思って。これがまた正解でしたね」

■一品料理がすべて100円!

さらに、一品料理がすべて100円というリーズナブルな価格設定も人気の秘密です。

秦アナは大好きなコロッケと山芋をチョイス!

【秦令欧奈アナウンサー】「おいしい!昔ながらの総菜店で食べる、安心するコロッケっていう味です。すごいタレが染み込んでて」

そして山芋は…

【秦令欧奈アナウンサー】「分厚いよ、これ!ん~ほくほく!おいしい!食べ応えもあるんですけど、サクサク食べられる。おつまみとして最高だ」

■33年続く「南国」 物価高の影響は「1週間に1回の客が、2カ月に1回」

さらに秦アナが向かったのは、33年営業を続ける「ナイトラウンジ南国」。高知出身の坂本澄子ママ(70代)が切り盛りするお店です。

【秦令欧奈アナウンサー】「ママ様は?」

【ナイトラウンジ南国ママ 坂本澄子さん】「ママで、ババでございます」

高知出身ということで、店内には坂本龍馬グッズがずらり。

【秦令欧奈アナウンサー】「お店、何年ぐらいやられているんですか?」

【ナイトラウンジ南国ママ 坂本澄子さん】「たったの33年でございます。あと20ウン年で100歳になります」

店は大盛り上がりですが、物価高の影響はあるのでしょうか。

【ナイトラウンジ南国ママ 坂本澄子さん】「今まで1週間に1回来ていたお客さまが、1カ月に1回とか、2カ月に1回とか。薄利多売という言葉ありますよね。

利潤は薄くてもたくさんのお客さまに来ていただくことを心がけないと、この世の中、生き残っていけない。

私が大阪に来たときは、バブルがすごいとき。チップが飛び交ったり、もう二度とあの時代は帰ってこない」

【秦令欧奈アナウンサー】「それはちょっと、想像つかない…」

■おっかね~ママのサービス精神 生き残り戦略

厳しい時代でも客が途絶えない理由。それは、びっくりするほどのママのサービス精神でした。

【秦令欧奈アナウンサー】「何ですかこれ?」

【ナイトラウンジ南国ママ 坂本澄子さん】「龍馬グッズでございまして、お客さまに毎回差し上げております」

【秦令欧奈アナウンサー】「待って待って、差し上げてるんですか?」

【ナイトラウンジ南国ママ 坂本澄子さん】「そう、プレゼントです。なんならカゴごと持って帰ってもいいですよ」

実はママの実家は高知県の土産店。「龍馬の分まで長生きして」という願いが込められた箸や、龍馬・桂浜ステッカー、四万十川ののりの佃煮などを毎回プレゼントするという太っ腹ぶり。

【ナイトクラブ南国ママ 坂本澄子さん】「『いらっしゃいませ』『ありがとうございました』だけでは、他のお店と一緒。お客さまに『また行きたい』という気持ちを起こさせないと、世知辛い世の中、生き残っていけない」

■常連客が語る南国ママの魅力

ママの人柄に魅了され、多くの人がこの「南国」に集まります。

【常連客】「(客への)心配りもすばらしい。ああいう方は、おられませんね」

【常連客】「ママと仲良くしてます。サバサバして優しく」

【常連客】「愛情がすごいです。お客さんに対する」

【常連客】「ここに遊びに来るのは、ママに会いに来てるますよ」

さらに驚くのが、飲み放題の料金設定。通常1時間4000円のところを…

【ナイトラウンジ南国ママ 坂本澄子さん】「1時間4000円飲み放題ですけど、大阪のお客さんシビアなので『3000円にまけて』とか、『2000円にまけて』とかおっしゃりますけど、すべてOK、受け入れます」

【秦令欧奈アナウンサー】「例えば、きょう僕が1000円でいいですかって言ったら?」

【ナイトラウンジ南国ママ 坂本澄子さん】「オッケーです。男前割引が利きますので」

かつてのバブル時代と違い、厳しい時代だからこそ、お客さんに喜んでもらうことを第一に考える坂本ママの経営哲学。

物価高という荒波の中でも、人と人とのつながりを大切にする温かいおもてなしが、33年もの長きにわたって愛され続ける理由なのかもしれません。

厳しい経営環境でも「おもてなし」の心を忘れない難波の夜の名物ママたち。

あなたも大阪を訪れた際には、こうした地元に愛される隠れた名店を訪ねてみてはいかがでしょうか?

(関西テレビ「newsランナー」2025年11月14日放送)

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