日本一起業しやすい『スタートアップ都市』として全国の注目を集める福岡市。自分と同じ悩みを抱える子供達を自らが起業することで解決し、社会を変えたいと願う少年に密着した。

小学生も参加“スタートアップ”ゼミ

2025年8月から開催された福岡市が主催する『フクオカ起業ゼミ』。参加者は、小学生から高校生までの学生約90人。講師として招かれた経営者や起業家から『会社の作り方』はもちろん、自分が考えたアデアを実際にどうやって形にしていくか。『商品化』までのプロセスなどを実践的に学べる内容になっている。

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「私は将来、自分のブランドを作りたい」「今、地球は地球最大の大量絶滅を迎えているんですけど、それを知ってもらうための会社を作りたい」など、参加している学生達の夢は具体的で、強い気持ちで溢れている。

肌の弱い自分の経験から着想

福岡市内に住む中学1年生の時吉虎太郎さんもその1人だ。時吉さんが取り組もうとしているのは、『空調のついた制服』を作ること。

この日は、実際に販売されている空調付きの商品を確認するため、福岡市内の量販店にリサーチに赴いた。「ファンの音が気になるというか。30人位がこれを一気に教室で使ったら、虫が鳴いているみたいにうるさくなりそう」と商品を前にした時吉さん。ファンの回る音をいかに小さく抑えるか。時吉さんは、解決すべき課題をしっかり認識したようだ。

更に調査を重ね、遂に時吉さんが作り上げた試作品。学生の夏の制服にフアンを取り付けた空調制服だ。

洗濯しやすいようにフアンは取り外せるようになっていて、スイッチを入れると、風が制服の中に流れ込む。更に、保冷剤を取り付ければ、冷たい風を送ることもできるスグレモノだ。

着想のきっかけは、肌が弱い自身の経験だという。時吉さんは、中学生になった時、制服を着て登校するのが、辛かった。

「暑いし、蒸れるから着たくないと思ったことがしばしばで、ポリエステルの服などを直で着ると、痒くなったり、汗をかくと特にそれが酷くなる」という。自分と同じように肌にトラブルを抱える子供達の悩みをなんとか解決したいと思った。それがきっかけだった。

『SDGsを考えた制服を導入』へ

この試作品をゼミ参加の集大成として、コンテストで発表することにした時吉さん。アイデアをビジネスに繋げるには、どうすればいいのか。ゼミでは、積極的に指導陣からアドバイスをもらう。

「制服をリサイクルコットンとかオーガニックコットンと『SDGSを考えた制服を導入』みたいな、学校のプラスポイントにもなるような気がする」。試作品を着た友人は、「涼しい。冷たいくらい。ただ、もうちょい前に風が欲しい」とユーザーとしての感想。大切な“現場からの声”だ。

迎えた発表の日。高評価を得ることができれば、ビジネスの可能性も拓けるとあって参加者たちの発表にも熱が入る。そして、いよいよ時吉さんの出番。

「私は、作業服に使われている空調フアンを使い、制服が快適に着れるようにしました。冬には温風も空調フアンで送れます」と試作品を示しながら時吉さんはプレゼンをしていく。

「身体に実際に着けて作ってくれている点が素晴らしい」と審査員の感想に手応えを感じたが、一方で「様々な種類の制服にどう対応していくのか?」などの意見も出され、今回は残念ながら入賞は果たせなかった。

アレルギー発生しにくい素材で制服

数日後、時吉さんを訪ねると、落ち込んでいるかと思いきや「ゼミを受けて起業する気持ちが固まった。子供達のアトピーとかを無くしたい気持ちがあって、アレルギーとかが発生しにくい素材を使った空調制服を作りたいと思っています」と起業への思いを更に強くしていた。

想定する将来の売上げは、特許を取得して、海外の小学校などに販売した場合、年間12億円。経費を引いた利益は、1年間で約4億円と時吉さんは算出している。専門家によると「決して夢ではない金額」だという。

時吉さんは、「起業の仕方はもとより、挑戦することの意味、そして、人前で時間を決めて話すのがどれだけ難しいかを学んだ」と今回『フクオカ企業ゼミ』で過ごした時間を語る。

尚、今回のプレゼンで受賞したアイデアは、『地球にやさしい行動をすることでポイントを貯め、地球環境を守るアプリ』と『唾液を採取することで、健康状態を可視化。その人が食べたほうがいい料理を教えてくれるアプリ』。そして、『自分磨きをすることで自s信をつける、マッチングアプリ』で、3つともアプリを活用したものだった。

自らの夢や思いを実社会でいかに実現させていくか。日本一起業しやすい街・福岡市から、将来、時代を変えるベンチャー企業が誕生するかもしれない。

(テレビ西日本)

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