任期満了にともなう鹿児島県霧島市長選挙が2025年11月9日に告示され、現職の中重真一氏(48)と、新人で元市議会議員の山田龍治氏(50)、同じく新人で元市議会議員の今吉直樹氏(45)による無所属の三つどもえの選挙戦となっている。各陣営はSNSを活用した選挙活動も展開しており、その動きが注目されている。
候補者たちの主張
届け出順に、まず新人の山田龍治氏は国会議員秘書などを経て霧島市議会議員を1期務め、今回が3回目の市長選挙挑戦となる。山田氏は「自主財源があってこそ、市民の皆さんに還元ができる。それが今の霧島市にありますかと問いたい。今、16億6200万円のふるさと納税です。都城市は176億円です。都城市ができて霧島市ができないはずがありません」と述べ、固定資産税の減税や水道料金の値下げなど市民負担の軽減と、ふるさと納税の拡充による地域活性化策を訴えている。

次に、新人の今吉直樹氏は霧島市元職員で市議会議員を1期務め、市長選挙は初挑戦となる。今吉氏は「大きな危機に直面している。地域の衰退です。人口が減って生まれてくる子どもたちが減っている。今20年前と比べて子どもが生まれる数は43%も減少した。このまま現状維持が続くと、ふるさとなくなります」と危機感を訴え、少子化対策や観光客の回復、市の中心部と周辺部の地域間格差解消に向け、市長と市民の対話を基本に据えた政策を進めると呼びかけている。

現職の中重真一氏は市議会議員と県議会議員を経て市長に就任し、今回は3期目を目指す。中重氏は「1次産業 2次産業 3次産業、すべてがそろっているのが霧島市。このすべてをバランス良く発展させていかなければいけない。すべてつながることによって、霧島市はより大きな発展をしていくのではないか。安定した市政運営を行いながら霧島市を発展させていきたい」と述べ、これまでの2期8年で達成した超高速ブロードバンドの市内全域整備や市立病院の開設などの実績を強調している。

防災行政のあり方も争点に
霧島市では8月に大雨による浸水被害や土砂災害が発生したことから、今後の防災行政のあり方も争点の一つとなっている。山田氏は、雨量に応じた対応を明確にしたマニュアル化や、市が人材(ソフト面)を育てたうえでハード整備を進める重要性を訴える。今吉氏は食料や資材の備蓄だけでなく、地域のつながりや防災知識を持つ人材育成、市民団体や民間団体との連携強化が必要だと指摘する。中重氏は国土交通省と協議を進め、雨水管理総合計画や下水道事業以外の施策導入を検討するなど、災害に強いまちづくりをスピード感を持って進める考えを示している。

各陣営、SNS活用で情報発信
今回の選挙で注目されているのが各陣営のSNS活用だ。山田陣営は選挙前からYouTubeなどで市が抱える課題ごとに動画を配信し公約を説明している。今吉陣営も複数の動画を公開して知名度向上を図り、中重陣営も選挙戦スタート後にSNSを積極活用して情報発信に努めている。こうした取り組みに対し、市民からは「YouTubeで見かけたので見やすい」「新聞をとっていないのでネットの方が情報に触れやすい」といった肯定的な声がある一方で、「ポスターやチラシで情報を得たい」「ネットはあまり得意ではない」といった意見も聞かれる。

市政の継続か刷新か、合併20年目を迎えた市政を託されるのは誰かが問われる選挙となっており、投票は11月16日に行われる。
(動画で見る:災害後の霧島市長選 防災対策が最大の争点に)
