今年の富山県内におけるクマの出没状況について、立山町猟友会の栃山正雄会長は「普通だと思わない。今年は特に猟友会のみんなもびっくりしている」と異例の事態であることを語った。

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異常な出没数、過去最多に迫るペース

富山県内でのクマの出没件数は10日までに843件を記録している。これは過去10年で最多だった2019年の919件に迫るペースだ。猟師歴42年という豊富な経験をもつ栃山会長は、今年の大量出没を「異常」と表現し、背景には深刻な"エサ不足"があると指摘する。

「クマの胃袋まで見ていないが、カワラグミの種、カキの種が出てきたことがあると聞いた。あまり食べ物が入っていない。完全にエサがない。山に食べ物がないと思う」と栃山会長は分析している。

平野部への侵入が過去に例のないレベルに

立山カルデラ砂防博物館の白石俊明学芸員は今年の特徴について「かつてないほど平野の中心まで熊が侵入している。これが今年の特徴。これまで大量出没が何度も生じていて、その度に熊の侵入してくる前線が拡大している」と説明する。

クマの目撃情報を示した地図クマっぷによると、今年は特に富山市の平野部で目撃や痕跡が多くなっていることが確認できる。去年と比較しても、平野部への侵入が進んでいることが明らかだ。

「人馴れ」が進む悪循環の危険性

白石学芸員はクマのエサとなるドングリが凶作・不作であることに加え、「人馴れ」したクマが増えているという懸念を示す。

「市街地に出没した個体は、人を見ても自分が死ぬことがなかった、怪我をしなかったということで、また人馴れが加速するという悪い循環が進んでいる。今年、市街地出没に成功したクマは、数年以内に起きる不作の年に出没を重ね、より市街地の深いところまで進出し、軋轢を起こす個体になってしまう」

警戒は12月中旬まで継続を

一般的にクマの出没は11月末までがピークで、12月に入ると冬眠するとされているが、白石学芸員は注意が必要な期間についてこう述べている。

「12月の上旬ないし中旬ぐらいまでは警戒を維持してほしい。クマの冬眠は食べ物を取りづらくなることが引き金になる。集落内に柿が大量に残ると、少しぐらい雪が降ってもまだ食べることが簡単にできる。クマの冬眠が遅れてしまう可能性がある。人里に侵入しやすい状況が続いているということは意識し続けほしい」

白石学芸員は住民には12月中旬まで引き続きクマを寄せ付けない対策を続けることが重要だと呼びかけている。

(富山テレビ放送)

富山テレビ
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