街で見かける野良猫に不妊化手術を行い、住民が世話をして管理する動きが広がっています。長野県南木曽町では、猫の殺処分に心を痛める高校生が、取り組みに注目しました。小さな命を地域で守ろうと町にも支援を呼びかけました。
「おはよう、みぃちゃん」
JR南木曽駅前にあるバスの営業所で、猫の「みぃちゃん」が出社してきた職員を迎えます。
おんたけ交通 南木曽営業所・清水銑郎さん:
「運転手さんたちもそうですけど『みぃちゃんはおるか?』って。いないと『いないね、どうしたんだ?』って。家族と一緒です。ね、みぃちゃん」
みぃちゃんは特定の飼い主ではなく複数の住民が世話をする「地域猫」です。営業所に現れたのは2024年の夏でした。
清水さん:
「恐る恐る入ってきた。何か遠慮しながら。毎日来るようになって餌をあげたら居つくようになりました」
事務所にはベッドやトイレが置かれ、餌代は職員で出し合い貯金箱に貯めています。
みぃちゃんは営業所に寝泊まりしたりしなかったり。この日も気ままに過ごしていました。
そんな「地域猫」に地元の高校生も注目しています。
蘇南高校の3年生2人は、殺処分の減少につながると、探究学習に取り組んでいます。
蘇南高校 3年・石垣綾音さん:
「生まれた時から猫が家にいて、殺処分される苦しい猫が少しでも少なくなってほしいという思い」
蘇南高校 3年・丸山祐人さん:
「残飯荒らしなど、住民の苦情が少なくなるということ(メリット)があると思う」
街で見かける野良猫はかわいい姿の一方、ごみ荒らしや排泄など問題も引き起こします。
殺処分の問題も―。
譲渡などの動きが広がる中、減ってはいるものの、県の保健所では2024年度も107匹の保護猫が殺処分されました。
そんな中、高校生が参加したのがボランティアによる「TNR活動」です。
Tは「トラップ」。野良猫を捕獲。
Nは「ニューター」。繁殖を抑えるため不妊・去勢手術を行います。
Rは「リターン」。手術の翌日、元いた場所に戻します。
保護団体の一つ「木曽ネコ会」では4年前に活動を始め、木曽地域で「TNR」を行った猫は885匹になりました。
活動に参加して―。
蘇南高校 3年・石垣綾音さん:
「自分も何かできることがあったら、やりたいという思いを強く抱きました」
南木曽駅の周辺では今、5匹の「地域猫」がいます。基本、外で暮らしながら住民たちが餌をあげ、トイレも設置。いつしか、悩まされていた野良猫の姿はなくなったそうです。
地域住民:
「かわいいです、懐っこくって」
「すごく野良がいた、野良猫。(今は)だいぶ少なくなりました。(地域猫を見て)皆さんニコニコして幸せな気分になるねと」
蘇南高校 3年・丸山祐人さん:
「地域の力で命を守る大きな一歩になると信じています」
この日、訪れたのは南木曽町役場。行政の支援も広がっていますが、南木曽町にはまだ補助金などの仕組みはありません。不妊化手術にかかる費用の相場は1匹あたり1万円から3万円台とされ、寄付金などボランティアが集める資金だけでは限界があります。
木曽ネコ会・唐澤陽子代表:
「時間もお金も人手も要るけど全部ない。増やしていくにはどうすればいいのか根本を考えると、関心を持っていただくのが一番」
南木曽町・向井庄司副町長:
「全然知らなかったです。そういう猫(地域猫)がいることを。“地域みんなで猫を見ていく”思いや考え方が広がれば(行政も)支援という形がつくれると思う」
さて、バスの営業所のみぃちゃん。すっかり名物猫として愛される存在です。
外国人観光客も―。
おんたけ交通 南木曽営業所・原直美さん:
「猫は好きですか?」
外国人観光客:
「大好きなの」
おんたけ交通 南木曽営業所・原直美さん:
「ツアーコンダクターが(外国人観光客を)6、7人連れてみえたかな。『みぃちゃんに会えたらラッキーです』という話を事前にして連れてきてくれて、すごくみんな喜んでくれています」
原さん:
「行きたいの? 外もう行きたい?」
街で暮らす小さな命を地域で見守る。理解を広めるため、高校生も取り組み続けます。
蘇南高校 3年・石垣綾音さん:
「自分たちが発表することによって、少しでも周りの人の考え方が変わってくれたら」
蘇南高校 3年・丸山祐人さん:
「人間と猫が仲良く過ごせる世の中になってほしい」