今が旬の落花生。千葉県の名産として知られるが、なんとか「福岡の名物にしたい」と落花生栽培に挑戦する若き農家を取材した。

“花が落ちて実が生まれる”

福岡市西区。福岡市全体の耕地面積の半分以上を占めている自然豊かなエリアだ。この地で4年前から落花生を作っている『にこっと落花生』の吉積元樹さん(35)。

『にこっと落花生』吉積元樹さん(35)
『にこっと落花生』吉積元樹さん(35)
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農薬や除草剤を使っていない国産の落花生を産地直送で消費者に届けている。

漢字で〝落ちる花の生〟と書く落花生。花が咲いた後、ツルが地面に向かって伸びていく。ジャガイモやサツマイモは根っこが実になるが、落花生は7月頃に花が枯れて、土の中で実をつける。

花が落ちて実が生まれるという一連の過程がそのまま名前となっている落花生。国内生産量の8割を占める千葉県は、水はけの良い火山灰土壌を生かし、明治初期から栽培を始めたことがきっかけで、地域に根付いたという。

茹でて食べる“ジャンボ落花生”栽培

福岡では数少ない落花生農家の吉積さんは、この地域の土壌に合わせた落花生作りに励んでいる。吉積さんが栽培しているのは、千葉県で開発された『おおまさりネオ』という品種だ。

一般的な落花生の2倍ほどの大きさがあるため、ジャンボ落花生とも呼ばれている。

見た目だけでなく、食べ方も一般のものと違う。炒るのではなく、塩茹でして食べるのだ。食感は枝豆に近い。「完全に熟しきってないので、ピンク色の薄皮で、本来、全体がもっとピンク色になってくるが、これぐらいで食べるのが一番美味しい。塩茹でして食べた時に一番甘さが出るように改良している」と吉積さんは笑顔で語る。

福岡に留まりたくて農家へ転身

大学卒業後、アパレル関係の会社に勤めていた吉積さん。農家への転身を決めた理由は、福岡に住み続けたいから。転勤がないことが大きな要因だったという。

福岡市西区出身で、元々、実家が農家だった吉積さん。最初は、様々な野菜を作っていたが、4年前に知人の紹介で出会ったのが、落花生だった。「落花生は、収穫して加工品まで回って、農業の枠から出るような広がりがあるんじゃないかなと思って…。だから落花生と言われた時は、ワクワクした」と吉積さんは、当時を思い返す。

落花生の可能性に魅了され、本格的に栽培を始めた吉積さんだが、最初は苦難の連続だった。1年目は、味は美味しいと思ったが、獲れる量が少な過ぎ、どうしたものかと頭を抱えたという。

初年度は思うように収穫できなかった吉積さんは、千葉県の農家に相談するなどして情報を収集。土の柔らかさや肥料の量などを変えながら毎年少しずつ生産量を増やし、4年目の2025年は、初年度の10倍以上となる豊作だったと胸を張る。

「落花生は、特殊な野菜だと思うので、掘ってみる楽しさと、福岡の人は特に、食べてみる楽しさもあると思う」と吉積さんは、落花生の魅力を語る。

“甘じょっぱい”落花生のスイーツも

生の落花生は、時間が経つと味が落ちやすく短期間しか流通しない。そのため吉積さんの会社では、採れたての美味しさを届けるため、茹で上げた落花生をすぐに冷凍し、消費者に直送している。『冷凍塩ゆで落花生』は、レンジで温めて食べると塩味を感じやすく、おつまみにピッタリで、流水解凍し冷たい状態で食べても甘さが引き立って美味しいという。

落花生の可能性を更に広げようと、吉積さんは、新商品の開発にも熱心だ。塩ゆでした落花生を粗いペースト状にして、バニラアイスに混ぜ合わせた甘じょっぱいスイーツだ。「塩茹で落花生の甘みそのものがよく出ているし、塩気もあってアイスに合います。塩茹で落花生は、10月しか食べられないので、それが加工品として年中食べられる状態になれば、もっと落花生の可能性が広がる」と語る吉積さん。

「福岡の名物になれれば」と2026年夏の商品化に向け夢を膨らませている。

(テレビ西日本)

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