人材不足が深刻になる中、週休3日制や企業内保育園など企業も官公庁もあの手、この手で優秀な人材の獲得やつなぎ留めを図っています。
元気いっぱいに遊びまわる子どもたち。
ここは公園…?ではなく、実はトヨタ自動車東日本の宮城大和工場の敷地内にある企業内保育園です。
従業員の子育てを支援するため会社が2017年に設置。
工場の稼働時間に合わせ、通常の認可保育園よりも長い時間で対応するなど従業員にとって『心強い存在』となっています。
生産部アクスル製造課 高橋唯さん
「どうしても通勤が45分以上かかってしまいますので、自宅付近の保育園に預けてしまうと出勤時間に間に合わないですとかお迎えが間に合わなかったり…」
4歳の娘を育てる高橋さん。工業団地という特性上、近くに子どもを預ける施設は他に無く、ここが無ければ退職も考えていたと言います。
敷地内に保育所があることで子どもたちの存在が同僚などの目にも止まり、職場の理解にもつながっていると感じています。
生産部アクスル製造課 高橋唯さん
「保育園から急な呼び出しがあったときに(上司・同僚から)『すぐに迎えに行ってあげて』と優しい言葉をかけてくれたり、次の日に『娘ちゃん大丈夫だった?』っていう風に声をかけてもらえているというのは私にとっては心の支え、とてもありがたい」
売り手市場が続く中、今年、過去最多の219人の新入社員を迎え、来年度も同規模の採用を予定しているトヨタ自動車東日本。
企業内保育園の設置のほか、本業の車づくりでも、『機械化』や『AI技術の導入』で、従業員の負担軽減を図るなど人材を確保するため最大限の投資を行っています。
トヨタ自動車東日本・人事課企画・労務グループ 楠本高弘グループ長
「コストがかからないと言えばそんなことはないんですけども、育児やそれ以外にも介護とかいろいろあると思うんですけども、両立するために、一人でも多くの従業員が安心できる環境をつくることに意義があると思っています」
職場の働きやすさは学生の企業選びにも大きく影響します。
大手人材サービス会社の「マイナビ」が来年卒業する大学生に行った調査では、「企業に安定性を感じるポイント」として60%近い学生が「福利厚生の充実」を挙げています。
また、求める福利厚生の制度として在宅ワーク・リモートワークが通勤交通費や住宅手当に次いで40%を超えています。
週休3日制度を挙げる学生も25%以上いました。
こうした社会の意識の変化を受けて進む働き方改革は官公庁も例外ではありません。
県庁3階に一室を構えるこちらの部署は、その名も行政経営企画課・『働き方改革推進班』。
デジタル化やオフィス改革など様々な角度で職員の働き方改革の改善に取り組んでいます。
県職員の新卒者の採用倍率は年々、低くなっていて、今年度は3.4倍と10年前と比べ3分の1程度まで下がっています。
県は民間企業の待遇改善や公務員=仕事が多忙というイメージから応募者が減っていると見ています。
一方、自己都合退職者は年々増えていて、昨年度退職した74人のうち3割ほどが20代と、若い人材をつなぎ留められる職場づくりが大きな課題となっています。
県は、子育てや介護などに伴う時短勤務など働きやすい職場環境の整備を進めています。
その中で特に力を入れているのが在宅勤務、いわゆるテレワークの本格導入です。
記者リポート「県は働き方改革の一環として、来年度から職員のパソコンをこうしたノートパソコンに切り替えます」
約50億円の予算をかけて、すべての職員のパソコンを持ち運び可能なノートパソコンに変更。
電子決済システムを整備し、システム上で書類の決済を可能としたことで、「出勤する必要性がなければテレワークで良い」という環境を作り上げました。
県総務部行政経営企画課働き方改革推進班 吉田寛課長補佐
「私は平成18年入庁なんですけれども、その時はそういった考えはあまりなかったと思いますし、民間もその当時はそこまでなかったと思いますし、新型コロナがきっかけではあるんですけれども、働き方が変わってきているんだなと実感しています」
気になるのはセキュリティ対策ですが…
県企画部デジタルみやぎ推進課 伊藤暁之主査
「モバイル化には盗難や紛失のリスクが生じますので、そういった点については遠隔でのデータ削除など、ツールを活用して万全の対策をとってまいりたい」
今年度中には官公庁としては全国でも珍しい「選択式週休3日制」の導入も予定するなど、県庁での職場環境改善は官公庁だからこそという側面もあります。
県総務部行政経営企画課働き方改革推進班 吉田寛課長補佐
「働き方改革を進めていかないと県庁の仕事がこれまで通りやっていけない。ひいては県民サービスの維持ができないと考えていますので、これからも働き方改革、働き方の向上は続けていきたいと考えています」
人口減少や少子高齢化で、若い働き手の人材不足が深刻になるなか、官民、それぞれ人材の確保に向けた改革が進んでいます。